不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報不動産売買のトラブルアドバイスどのような事柄について注意すれば良いのかを大きく見てみよう(2015年12月号)

不動産売買のトラブルアドバイス

専門家のアドバイス
瀬川徹

不動産売買のトラブルアドバイス

不動産売買のトラブル
アドバイス

弁護士
瀬川徹法律事務所
瀬川徹 瀬川百合子

2015年12月号

不動産売買のトラブルを防ぐために判例等を踏まえ弁護士が解説したアドバイスです。

どのような事柄について注意すれば良いのかを大きく見てみよう

 一般の方にとって不動産売買は、取引内容が専門的で複雑で、取引額も非常に多額であるため、万一、失敗したら大変なことになるのではと不安をお持ちの方がいると思います。そうした方に、そもそも、不動産売買のどのような事柄(重要な事項)に注意をして取引をすれば良いのかをQ&A方式の事例等を交えてわかりやすく解説します。

Q

 私は、仲介業者の広告に出ていた戸建の住宅を購入しました。仲介業者は、私を現地に案内し、いろいろな説明をし、その後、私に「重要事項説明書」と必要な資料を交付して、かなり丁寧な説明をしてくれました。しかし、正直なところ、「重要事項説明書」等の内容が専門的過ぎて、果たして良く理解できたのか多少心配でした。その後、仲介業者は、売買契約の際に、売主と私の前で、売買契約書の条項を読み上げて説明をしてくれましたので、一応、契約書に署名押印をしました。これで良かったのでしょうか?

A

1 回 答

 あなたが、これから説明する流れに沿って振り返ってみたときに、納得感があるのであれば、おそらく問題のない不動産売買契約をされたのではないかと思います。

2 不動産売買の一連の手順

 一般的な不動産売買は、購入住宅の「広告」、「現地案内」、「重要事項説明書の交付と説明」、「売買契約書の読み上げと説明」、「契約書への署名捺印」、「契約の履行」の手順で進みます。

3 手順に伴う重要な事項

 前記2の手順は、あなたがその戸建住居や取引条件を正しく理解できるようにするためのもので、仲介業者が不動産売買に関わる場合には、必ずこの手順に従います。そして、仲介業者は、その手順に従い、次のような義務を負担しています。ですから、あなたが安心して不動産売買を行うためには、まず、この手順に従った注意を払うことを心掛けてください。


(1)広告

「広告」は、あなたが物件に抱くイメージをつくるものですから、広告を行う仲介業者は、実在(建設予定)の物件の正しい情報を掲載し、虚偽や誤記がないように注意する義務があり、万一、虚偽や誤記があれば責任が生じます。


(2)現地案内

「現地案内」は、あなたが広告で抱いた物件のイメージを、現地において物件の現状や周囲の状況(境界・環境等)などについて確認するものです。仲介業者は、可能な範囲で、物件の現状を説明し、かつ、周囲の状況なども事前に調査把握しておく必要があります。あなたは、こうした現場の状況などを直接確認した上で、物件の購入の可否を決断して下さい。


(3)重要事項説明書の交付と説明

「重要事項説明書」は、不動産売買契約について、重要な事柄を広く集約してまとめた書面で、あなたにとって、最も大切な資料です。仲介業者は、あなたに対し、必ず、売買契約の締結前に、この書面や必要な資料を交付して、「宅地建物取引士」と呼ばれる不動産取引に必要な専門的な知識を有する有資格者に説明させなければなりません。また、「宅地建物取引士」がこの説明をする際には、必ず、「宅地建物取引士証」と呼ばれる身分証をあなたに示さなければなりません。仲介業者は、媒介契約上は勿論、宅地建物取引業法上もこうした義務を負担しているのです。

 この「重要事項説明書」の内容は、「対象となる物件に関する様々な大切な事項」と「売買の取引条件に関する大切な事項」に区分されます。詳細は、次回以降のこのアドバイスで触れたいと思います。

 あなたは、「宅地建物取引士」からこの説明を受ける際に、疑問点があれば遠慮なく質問をして下さい。もし、その場で返答ができない事項があれば、その後、調査・確認をして、あなたに報告してくれるはずです。


(4)売買契約書の読み上げと説明

「売買契約書の読み上げと説明」は、あなたが、これから、誰と・どのような物件について・どのような条件の売買を行うのかを確認するために行われます。「売買契約書」は法律用語を多く使用した専門的な文書なので、あまり馴染みがないかもしれません。仲介業者は、あなたに、取引内容を正しく理解させるために、必ず、売買契約書を作成し、その売買契約書の読み上げと説明を行う義務があるのです。ですから、あなたは、良く説明を聞き、不明な点や疑問点があれば、仲介業者に遠慮なく質問すべきです。


(5)契約書への署名捺印

「契約書への署名捺印」は、あなたが、売主との間で売買の約束をする契約行為です。あなたは、この契約行為により、売買代金の支払い義務を負うのと同時に、売主に物件の移転を求める権利を取得します。ですから署名捺印の際には、売買の当事者(売主・買主)に誤りがないか、売買の目的物(対象物件の戸建住宅)に間違いがないか、更に、契約内容(売買条件)があなたの考えた条件通りになっているかを再確認してから署名捺印をして下さい。

 仲介業者は、契約に立ち合い、これらの確認を助言してくれるはずですので、一緒に再確認をして下さい。


(6)契約の履行

「契約の履行」は、売主や買主であるあなたが、契約内容に従った約束事を実行することですが、売主は戸建住戸の所有権移転や引渡しを、あなたは売買代金の支払いをする必要があり、これらは、共に専門的な処理が必要になる事がありますので、必ず、仲介業者にサポートしてもらいながら、確実に履行しましょう。


4 売買契約に伴う重要な事項

(1)不動産売買契約の紛争

 あなたが、これらの手順について相当な注意を払っても、残念ながら不動産売買の紛争を完全に回避することは難しいかもしれません。契約当事者が全く想定しなかった事態が発生することもありますし、契約当事者がもう少し確認し合えばよかったのにと思われる紛争もあります。不動産売買の紛争は、多種多様で、どこから生じるか予測もつかないと考える方も多いと思います。しかし、実は、多種多様な紛争も大きく見れば「売買契約のしくみ」に従って次の3つに分類することができるのです。


(2)売買契約のしくみ

 不動産売買契約は、「売主と買主(当事者)」の間で、「不動産(目的物)」を「売り買いする合意(意思表示=契約内容)」ですので、この①「当事者」②「目的物」③「意思表示=契約内容」は、売買契約の三要素と呼ばれ、売買契約を構成する大切な要素となっています。これらの「売買契約のしくみ」の三要素に問題がなければ、基本的に大きな紛争には発展しないはずです。


 今回は、不動産売買契約の手順を中心とした一般的な説明が中心となりましたが、次回からは、この売買契約の三要素に沿って、不動産売買における具体的な紛争を交えて、各種の重要な事項を考えて行きましょう。

※本コンテンツの内容は、記事掲載時点の情報に基づき作成されております。

瀬川 徹tooru segawa・瀬川 百合子yuriko segawa弁護士
瀬川徹法律事務所東京都中央区銀座2-9-14 銀座ビル5階
※不動産関連をはじめとして、法人・個人の幅広い法律問題を取り扱っております。

瀬川 徹
不動産業界(含む建設)の公益社団・民間等の数社の顧問弁護士
不動産業界団体の講演会・研修会の講師
宅地建物取引士(旧・取引主任者)法定講習会の講師
東京地裁民事22部(建築紛争専門部)の調停委員
東京地裁民事22部(借地非訟事件)の鑑定委員
厚生労働省・社会保障審議会委員(年金記録訂正分科会・会長代理)
電力広域的運営推進機関・ADR(あっせん・調停)委員

瀬川 百合子
東京理科大学建築学科卒業
平成22年弁護士登録 東京弁護士会所属
建築紛争審査会運営委員会
神奈川県宅建協会法定講習講師