安心・安全な不動産売買契約を締結するために不動産売買のトラブルが、どのような局面から生じているか、そのトラブルを防ぐには何を注意すれば良いのかを解りやすく解説しています。
土地と建物の法令上の制限
土地上に建築する建物は、土地に課せられる法令上の制限(都市計画法や建築基準法の他、各条例等)によって、建物の高さ・容積率・建蔽率、建物の構造・外観等について制限を受けます。5階建ての事務所兼住居を建築する目的で土地を購入するのであれば、その土地に課されられた法令上の制限を調査し、建築計画が実現可能か否かを事前に確認する必要があります。なお、この法令上の制限は、宅地建物取引業者が事前の調査確認を行い、重要事項説明書に記載して説明すべき事項ですので、宅地建物取引業者に調査確認をしてもらい建築計画の実現性について説明を受けることが必要です。
土地に課される法令上の制限はたくさんあるとのことですが、その中の「用途地域」「用途制限」とはどのような制限でしょうか。
1 法令上の制限
土地には、都市計画法や建築基準法をはじめとする様々な法令上の規制が存在しますが、これらの規制によって、整備された街並みや安全で快適な生活環境が形成されています。
2 「用途地域」「用途制限」
特に都市計画区域の土地には下記の様な「用途地域」が定められ、各「用途地域」には、土地上に建築できる建物の用途・規模・高さ等に関する様々な規制(「用途制限」)が存在します。
(1)
「用途地域」
都市計画法では、都市計画区域内の土地に下記の13種類の「用途地域」を定めています。これらの「用途地域」は、下記のとおり「住居系(住環境を保護するための地域)」「商業系(商業の利便を増進するための地域)」「工業系(工業の利便を増進する地域)」と大きく3つに分類できます。
「住居系」:①第一種低層住居専用地域、②第二種低層住居専用地域、③第一種中高層住居専用地域、④第二種中高層住居専用地域、⑤第一種住居地域、⑥第二種住居地域、⑦田園住居地域、⑧準住居地域
「商業系」:⑨近隣商業地域、⑩商業地域
「工業系」:⑪準工業地域、⑫工業地域、⑬工業専用地域
(2)
「用途規制」
建築基準法は、前記「用途地域」に応じて建築できる建物の用途に規制を行っています(用途規制)。
例えば、最も規制の厳しい①第一種低層住居専用地域では、住居・小中高等学校・保育所・図書館、寺院等は建築できますが、大学、病院等の公益施設や店舗、飲食店、ホテル、劇場等の商業施設、工場等の工業用施設は建築できません。③第一種中高層住居専用地域、④第二種中高層住居専用地域、⑤第一種住居地域、⑥第二種住居地域、⑧準住居地域では、住居・小中高等学校・保育所・図書館、寺院、大学、病院等は建築できますが、商業施設や工場については制限があります。
一方、⑨近隣商業地域や⑩商業地域では、キャバレー等の一部商業施設や危険性の高い工場を除き、住宅・商業施設・工場を建設することができます。
また、⑪工業専用地域では、住居や老人ホーム、大学等の公益施設や店舗・飲食店等の商業施設は建築できませんが、全ての工業施設を建築することが出来ます。
従って、購入予定の土地の「用途地域」及び「用途規制」を調査確認し、その土地に5階建ての事務所兼住居の建築が可能かを事前に確認した上で売買契約を行う必要があります。
建物の建築に際し、建蔽率・容積率・高さ制限という用語を耳にしますが、どのような規制なのでしょうか。
建築基準法では、建物の防災性・日照・通風・採光・インフラ等を確保し良好な環境を形成するため、その土地の「用途地域」や「前面道路の幅員」等に応じて、建物の建蔽率・容積率・高さ制限、建築の形態等を制限しています。
1 建蔽率
建蔽率とは、建物の建築面積の敷地面積に対する割合のことをいいます。
建物の建築に際し建蔽率による規制により、敷地上に一定の空地を確保し、防災性・日照・通風・採光を確保することを目的としています。建蔽率は、防火地域内の耐火建築物・角地等の建築物について緩和される場合もあります。
2 容積率
容積率とは、建物の延べ面積(各階の床面積の合計)の敷地面積に対する割合をいいます。建物の建築に際し容積率による規制により、当該建物の利用人口を制限し、道路や下水道等のインフラを適切に管理し、採光・日照・通風等を確保することを目的としています。容積率は、「用途地域」に応じて定められるもの、「前面道路の幅員」によって定められるものがあり、その小さい方が適用されます。容積率も一定の要件のもとで緩和される場合があります。
3 高さ制限
建物の高さ制限は、前面道路や隣接地の日当たりや通風を確保することを目的としています。建築基準法の規定する建物の高さ制限には、「用途地域」、「前面道路の幅員」、「隣地からの距離」等に応じて、「絶対高さ制限」「道路斜線制限」「隣地斜線制限」「北側斜線制限」「日影規制」があります。
購入予定の土地に関するこれらの規制を調査確認しながら建築プランを検討する必要があります。
この土地は「接道義務を満たしていないため、建物が建築できない」との説明を受けました。「接道義務」とはどのような義務でしょうか。
(1)
都市計画区域または準都市計画区域内における建築物の敷地は、建築基準法上の道路に2m以上接していなければならないとの義務があります(建築基準法43条1項)。この義務を「接道義務」といい、建物を利用する上での通行や避難等の安全面を確保するために規定されています。
(2)
「接道義務」に求められる建築基準法上の道路とは、原則、道路法による道路等の一定の要件に該当する幅員4m以上(特定行政庁が指定する区域内においては幅員6m以上)のものをいいます。
(3)
接道義務を満たしていない土地には、原則建物を建築することが出来ません。建物を建築する目的で土地を購入する場合には、当該土地が「接道義務」を満たしているかどうかを先ず確認する必要があります。
この土地は「前面道路が2項道路のため、建物建築の際には、セットバックが必要です」と説明を受けました。「2項道路」とはどのような道路でしょうか。
建築基準法の「接道義務」等の規定が適用される以前から建築物が並んでいる幅員4m未満の道で、特定行政庁が指定したものは、建築基準法上の道路とみなされ、これを「2項道路」と呼びます(建築基準法42条2項)。「2項道路」では、原則、道の中心線から水平距離2mの線をその道路と敷地との境界線とみなされます。そのため、建物の建て替えの際には、その境界線までセットバックして建物を建築する必要があります。その結果、その土地の建築可能な敷地面積が縮小されますので再築建物のプランに影響が生じます。
この様に「2項道路」によるセットバックは、建築計画に大きな影響を与えるため、どこが道路との境界線となるのかを確認の上、建築計画を立てる必要があります。
建物の建築には建築確認が必要とのことですが、建築確認とはなんでしょうか。
建築物を建てる際には、行政庁の建築主事または民間の指定確認検査機関に建築確認の申請をし、その建築計画が建築基準法および関係規定に適合している旨の確認済証(建築確認)の交付を受ける必要があります。この確認済証を受けるまでは建築工事に着手することができません。又、建築工事が完了した際には建築確認に従った建築工事が行われたかの検査(建物の規模によっては建築途中の中間検査もあります)が行われ検査済証の交付がされます。