相続の法律制度(民法と相続税法の相続財産を巡る取扱の違い等)について、弁護士が解説したアドバイスです。
この預金は、遺産か?亡くなった妻が作った認知症の夫名義の預金の遺産性
先日、3回目のワクチンを接種しました。1回目と2回目は、ファイザー製のワクチンでしたが、熱が出るなどの副反応はありませんでした。
ところが、3回目のワクチンは、病院の都合で(というか、病院も、配布されたワクチンを使うしかないので、自治体あるいは国の都合で)モデルナ製でした。
朝10時に接種したのですが、その日の夜11時ごろから熱が出始め、夜中には、39度近くまでいきました。全身がだるく、接種した上腕部はもちろん、節々が痛くなりました。
この状態は、翌日の夜まで続きましたが、1回目と2回目にほとんど副反応がなく、3回目もファイザーの予定だったので、副反応はないものと思い込み、3回目接種の翌日には、裁判期日を3件入れていました。
幸い全てWEBでの裁判期日だったので、事務所から資料をネットで送ってもらい、朦朧としながらも、なんとか乗り切ることができました。
ちょっと大変でしたが、1回目と2回目がファイザーで、3回目にモデルナを接種すると、効果が一番高くなるということなので、何となく納得しています。
さて、今日は、遺産の範囲をめぐる調停の手続きのお話です。
2年前に、私の依頼者であるXさんのお姉さんAが亡くなりました。Aには夫Bがいましたが、2人の間に子供はなく、Bも、Aが亡くなってから1年くらいして亡くなりました。
Aが亡くなった時点で、Aの相続人は、Aの兄弟のXさんと夫のBでしたが、Bが亡くなったため、Bの遺産は、Bの兄弟Yが相続することになりました。
現在、XさんとYの間で、遺産分割調停が行われていますが、最大の争点となっているのが、B名義の預金口座にあった預金が、Aの遺産なのではないかという点です。
AとBの夫婦は、2人とも高齢であり、また、Bは、もう何年も前から認知症のために施設に入居して生活していました。Aは、自分の預金からBの施設利用料などを支払っていましたが、A自身も持病があり、自分もいつまで生きられるか不安に思っていました。
このため、Aは、もし自分がBより先に亡くなってしまうと、その後Bの施設利用料などの支払いができなくなり、Bが施設から追い出されてしまうのではないかと心配になりました。
そこで、Aは、B名義の預金口座を作り、この預金口座に、自分の預金から約1000万円の預金を入れました。この預金口座の通帳や印鑑は、Aが亡くなる前に施設に預けられており、Aが亡くなった後も、この預金口座からBの施設利用料などが引き落とされていました。
Aが亡くなった時点で、この預金口座には、まだ約800万円残っていましたが、1年後にBが亡くなったときの残高は約600万円となっており、B名義の預金口座ですから、Bの死亡により、Bの相続人であるYが、Bの遺産として相続しました。
Aが、B名義の預金口座を作り、自分の預金口座から約1000万円を引き出して、B名義の預金口座に入れたこと、そして、Aが元気なうちは、Aがこの預金口座の通帳や印鑑をもっており、この預金口座からお金を出し入れしていたことなどは、証拠上明らかであり、この点に争いはありません。
そこで、Xさんは、B名義の預金口座の預金は、Aの預金から出たお金であり、Aが亡くなるまでは、Aがこの預金口座を管理していたのであるから、この預金口座のA死亡時の残高は、Aの遺産であると主張しています。
一方、Yは、Aが、B名義の預金口座を作り、自分の預金口座から約1000万円を引き出して、B名義の預金口座に入れたのは、自分の死後のBの施設利用料などの支払いのためだから、Aは、この預金口座に1000万円を入れた時点で、この1000万円をBに贈与したのであり、この預金口座のA死亡時の残高はBのものであり、Aの遺産ではないと主張しています。
こういう場合、家庭裁判所の遺産分割調停では、どのように対応するのでしょうか。
家庭裁判所での遺産分割調停では、まず、相続人の範囲と、相続財産の範囲の確定が行われます。分かり易く言えば、誰が相続人か、遺産は何かという2点をまず確定させるのです。
家庭裁判所での遺産分割調停は、遺産の分け方の話し合いですから、誰が相続人かという点と、遺産は何かという点が決まらなければ、肝心の分け方の話に進むことができないです。
このため、Xさんの事件のように、ある財産が、被相続人の遺産かどうか争われたときは、相続人間に遺産の範囲について争いがあるので、遺産の分け方の話に進むことができません。
では、ある財産が、被相続人の遺産かどうかについての争いがある場合、家庭裁判所で決着をつけることができるのでしょうか。
実は、ある財産が、被相続人の遺産かどうかを最終的に決定する権限をもっているのは、地方裁判所であり、家庭裁判所ではありません。
従って、被相続人の遺産かどうかについての争いがあり、この争いについて相続人間の話し合いがまとまらない場合は、調停委員から、「いったん調停を取り下げて、地方裁判所の訴訟手続きで遺産の範囲を確定してから、もう一度、遺産分割調停を起こされてはいかがですか。」と勧められます。
家庭裁判所としては、相続人間に遺産の範囲について争いがある場合には、遺産の分け方の話に進むことができないので、こうした対応をするほかないのです。
今のところ、Xさんの事件では、B名義の預金口座の残金が、Aの遺産かどうかについて、XさんとYがお互い譲歩して話をまとめる余地(たとえば、半分をAの遺産とし、残りの半分をBの遺産とするなど)が残っているので、調停委員を通じて、この点の話し合いが行われています。
話し合いが決裂すれば、B名義の預金口座の残金が、Aの遺産かどうかについて、地方裁判所の訴訟手続きで決めてもらうことになりますが、時間や敗訴のリスクを考えると、あまり気の進まない訴訟です。
大谷 郁夫Ikuo Otani・鷲尾 誠Makoto Washio弁護士
銀座第一法律事務所 http://www.ginza-1-lo.jp/
平成3年弁護士登録 東京弁護士会所属
趣味は読書と野球です。週末は、少年野球チームのコーチをしています。 仕事では、依頼者の言葉にきちんと耳を傾けること、依頼者にわかりやすく説明すること、弁護士費用を明確にすること、依頼者に適切に報告することを心がけています。
鷲尾 誠
平成4年弁護士登録 第二東京弁護士会所属
昨年から休日の時間がとれたときに自転車に乗っています。行動範囲が広がり、自然や店などいろいろな発見があります。仕事のうえでもますます視野を広げ、皆さまのお役に立つよう心がけたいと思っています。