相続についての法律制度の中には、民法と相続税法の相続財産を巡る取扱に違いがある等、理解するのは難しいものとなっていますが、基本的な知識を手軽に得ることができるように解りやすく解説しています。
相続に関する民法その他の法律の改正
相続に関する民法その他の法律については、近年、2度の大きな改正がありました。
まず1つは、平成30年に成立した民法等を改正する法律(平成30年法律第72号)と法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成30年法律第73号)です。
このQ&Aでは、平成30年に成立した民法を改正する法律(平成30年法律第72号)を、「平成30年改正法」と呼び、また、法務局における遺言書の保管等に関する法律(平成30年法律第73号)を、「遺言書保管法」と呼ぶこととします。
平成30年改正法の主な内容は、次のとおりです。
1 配偶者居住権及び配偶者短期居住権の創設(令和2年4月1日)
2 配偶者に対する居住用不動産の贈与又は遺贈についての持戻し免除の意思表示の推定規定の創設
3 遺産分割前における預貯金の払戻し制度の創設等
4 遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合の取扱いについての改正
5 自筆証書遺言の方式の緩和についての改正(平成31年1月13日施行)
6 遺言執行者の権限の明確化等に関する改正
7 遺留分の制度を見直す改正
8 相続による権利及び義務の承継に関する規律についての改正
9 遺言執行者がある場合の相続人の行為の効力等
10 特別寄与料制度の創設
上記の改正は、原則として令和元年7月1日に施行されましたが、10の自筆証書遺言の方式の緩和についての改正は、平成31年1月13日に施行され、1の配偶者居住権及び配偶者短期居住権の創設は、令和2年4月1日に施行されました。
また、遺言書保管法は、令和2年7月10日に施行されました。
2つめの改正は、令和3年に成立した民法等を改正する法律(令和3年法律第24号)と相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号)です。
このQ&Aでは、令和3年に成立した民法を改正する法律(令和3年法律第24号)を、「令和3年改正法」と呼び、また、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号)を、「相続土地国庫帰属法」と呼ぶこととします。
平成30年改正法の主な内容は、次のとおりです。
1 登記されるようにするための不動産登記の見直しに関する改正
(1) 相続登記の申請の義務化
(2) 住所等の変更登記の申請の義務化
2 土地・建物等の利用に関する民法の見直しに関する改正
(1) 財産管理制度の見直し
(2) 共有制度の見直し
(3) 相隣関係規定の見直し
(4) 相続制度の見直し
上記の改正のうち、2の土地・建物等の利用に関する民法の見直しに関する改正は、令和5年4月1日に施行され、1の登記されるようにするための不動産登記の見直しに関する改正は、令和6年4月1日に施行されました。
また、相続土地国庫帰属法は、令和5年4月27日に施行されました。
なお、上記の改正については、法務省のホームページに分かり易くまとめたページがありますので、参照してください(相続土地国庫帰属法の概要)。