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相続の法律Q&A

相続の法律Q&A

相続の法律
Q&A

弁護士
銀座第一法律事務所
大谷 郁夫 鷲尾 誠

相続についての法律制度の中には、民法と相続税法の相続財産を巡る取扱に違いがある等、理解するのは難しいものとなっていますが、基本的な知識を手軽に得ることができるように解りやすく解説しています。

相続の法律についてQ&A形式で解説しています。

相続財産の範囲と取扱い

Q
次の財産のうち、相続財産ではないものはどれですか?

・墓

・位牌

・遺骨

・香典

・死亡退職金

・死亡生命保険金

A

 民法は、相続財産について、「被相続人の財産に属する一切の権利義務」としています。

 しかし、墓、位牌、遺骨などの財産は、祖先の祭祀の主宰者に帰属し、相続財産から除外されます。香典は、そもそも被相続人の死亡後に喪主や遺族に贈与されたものですから、相続財産ではありません。

 また、死亡退職金や死亡保険金は被相続人の死亡によって発生する権利であり、被相続人に属する権利ではありませんので相続財産ではありません。

Q
被相続人の借入金債務の相続

 Aには、妻と2人の息子がいます。Aが亡くなりましたが、Aには自動車購入のための銀行からの借入金が500万円残っています。この借入金は、どうなりますか。

A

 相続債務の債権者は、法定相続人に対し、法定相続分に応じて権利を行使することができます。

 設問のケースでは、銀行は、法定相続分に応じて、妻に対して250万円、長男と二男のそれぞれに対して125万円の返済を請求することができます。

 この権利は、妻、長男及び二男の間の遺産分割により左右することはできません。言い換えると、銀行は、妻、長男及び二男がどのような遺産分割をしたかにかかわらず、各相続人に対し上記の金額を請求できます。

 同様に、Aが遺言書を書いており、遺言書に妻が500万円全額の返済義務を負うと記載されていても、銀行は、各相続人に対し上記の金額を請求できます。

 ただし、平成30年改正法では、銀行が妻が500万円全額の返済義務を負うというAの遺言書の記載を承認したときは、銀行はAに対して500万円全額を請求することができ、長男及び二男に請求することはできなくなります。

 なお、相続人間内部では、遺言や遺産分割の定めより、銀行に対する返済を誰がどれだけ負担するかが決まります。

Q
被相続人の保証債務の相続

 Aには、妻と2人の息子がいます。Aが亡くなりましたが、Aは生前に友人の借金1,000万円を保証するために銀行と保証契約を締結していました。この保証契約は、どうなりますか。

A

 連帯保証債務などの通常の保証債務は、借入金債務と同様に、法定相続人が相続分に応じて返済義務を負います。

 このケースでは、もしAの友人が借金1,000万円を銀行に返済しないときは、妻が500万円、長男と二男がそれぞれ250万円の保証債務を負います。

 この保証債務の負担についても、上記と異なる負担を定める相続人間の合意や遺言があっても、債権者の権利は左右されないこと、また、債権者がその合意や遺言を承認することができることは、Q 被相続人の借入金債務の相続と同様です。

 なお、身元保証(雇用関係における従業員の雇主に対する債務の保証)や信用保証(継続的取引に基づいて発生する債務の包括的な保証)などの特殊な保証は、原則として被相続人の死亡時までに発生している債務を除き、相続されません。

Q
自宅で息子夫婦と同居していた父親が亡くなった場合の息子夫婦の地位

 Aは、妻に先立たれ、Aが所有する建物に長男夫婦と一緒に住んでいました。Aには、長男以外に、二男と三男の2人の息子がいます。Aが死亡すると、長男夫婦は、この建物を使用することができなくなりますか。また、使用できるとして、他の相続人に家賃を支払う必要がありますか。

A

 子供の中の1人が、親の所有する実家で親と同居しているというケースは、よく見受けられます。

 このような場合に親が亡くなると、実家の建物は相続財産ですから、同居していなかった子供から見れば、同居していた子供が親の相続財産である実家を無償で使い続けていることになります。場合によっては、同居していなかった子供が、同居していた子供に、実家から退去するように求めることもあります。

 しかし、最高裁判所は、子供の中の1人が、親の所有する実家で親と同居しているというケースについて、特別な事情がない限り、亡くなった親と同居していた子供の間には、親が亡くなっても、遺産分割が済むまでは実家を無償で使用してよいという合意があったと考えられるという判断をしています。

 従って、特別な事情がない限り、長男は、遺産分割協議が成立して、相続財産であるA所有の建物の取得者が確定するまでは、この建物に無償で住み続けることができます。

Q
相続財産である預金の取引履歴の調査

 相続財産である預金が被相続人の死亡前後に引き出され、ほとんど残金がない場合、相続人は、相続財産である預金の取引履歴を調べることができますか。

A

 被相続人の預金が、被相続人の死亡前後に同居の親族によって払い戻されるというケースは、よく見受けられます。

 このような場合、相続人は、被相続人の預金の取引履歴の開示を金融機関に求めることができます。最高裁判所の判例で認められています。

 これに対して、預金契約が解約されている場合は、金融機関の負担を考慮し、解約に際して従前の取引経過及び解約の結果を報告したのであれば、その報告後も、過去の預金契約について、預金契約の継続中と同様の取引経過開示義務を負うものではないとする高等裁判所の裁判例もあります。しかし、実際には、金融機関は、既に解約された過去の預金契約であっても、取引記録の開示に応じています。

Q
被相続人が契約していた貸金庫の開披

 被相続人が銀行の貸金庫を使用していた場合、相続人等がその貸金庫の開披を求めるには、どのような手続が必要ですか。

A

 一般的に、銀行等の貸金庫は、貸金庫を使用する人と銀行との間の貸金庫スペースの賃貸借契約と考えられています。

 貸金庫を借りている人が亡くなると、この賃貸借契約の契約上の地位は相続人全員に引き継がれますので、相続人は貸金庫を開けることができます。ただ、相続人が複数いる場合、その中の一部の人だけで貸金庫を開けることができるかどうかは、契約内容によって決まります。契約に定めがない場合は、相続人全員で契約上の地位を引き継いでいますので、貸金庫の開披という重要な行為は、相続人の中の一部の人だけではできないと考えられます。実際にも、相続人の中の一部の人だけで貸金庫を開披すると、貸金庫の中にあったものについて、開披に立ち会った相続人と立ち会わなかった相続人間で争いとなる恐れが大きいので、適切ではありません。

 実務では、金融機関は、戸籍謄本による相続人の確認、相続人全員の印鑑登録証明書による本人確認、相続人全員の同意ないしは立会いという手続きにより、貸金庫の開披に応じています。

 なお、貸金庫を開披し、貸金庫の中にあったものを公的な文書に記録する方法として、公証人に事実実験公正証書を作ってもらうことが考えられます。これは、相続人全員で公証人に貸金庫の開披を嘱託し、公証人が貸金庫を開披して、その結果を公正証書に記載し、相続人全員がこの記載内容を確認して署名捺印することによって作成される公正証書です。

Q
収益物件の管理と賃料の帰属

 Aは、妻に先立たれ、Aが所有する建物に1人暮らしをしていますが、3棟のアパートを所有しており、毎月家賃収入を得ています。Aには、長男、二男、三男の3人の息子がいます。Aが亡くなりましたが、A所有のアパートは、誰が、どのように管理すればよいですか。

A

 Aの死亡により、Aが所有していたアパートは、原則として相続人の3人が法定相続分で相続します。それと同時に、アパートの借主との間の賃貸借契約の貸主の地位も、相続人3人が相続します。

 これにより、3人が共同してアパートを借主に貸していることになりますので、3人で共同してアパートを管理することになります。もちろん、その中の1人に任せてもいいですし、3人で管理会社と管理委託契約を締結し、管理会社に管理を任せても構いません。

 また、例えば、Aが亡くなるまで長男がアパートを管理していたという場合、長男が管理を継続しても構いません。この場合、長男は、自己固有の財産と同一の注意、つまり自分の物と同じような注意を払ってアパートを管理すればよいとされています。

 ただし、Aが亡くなってから遺産分割協議が成立してアパートが誰のものになるかが決まるまでの間の賃料は、相続人が法定相続分により取得できます。仮に遺産分割によって長男がアパートを取得すると決まっても、これによって他の相続人がA死亡後の家賃を取得する権利は左右されません。

Q
相続財産である借地権の取扱い

 Aは、妻に先立たれ、Aが所有する建物に1人暮らしをしていますが、Aの所有する建物の敷地は、地主さんから借地しています。Aには、長男、二男、三男の3人の息子がいます。Aが亡くなると、この借地権はどうなりますか。

A

 借地権は、相続財産ですので、長男、二男及び三男が相続することになりますが、遺産分割協議により、誰が借地権者となるか決める必要があります。

 ちなみに、借地権は、対象となる土地の更地価格の4割から9割の価値があるとされています。

Q
遺産に含まれる預貯金の取り扱い

 被相続人Aには、妻と長男と二男の2人の息子がいます。Aが亡くなりましたが、Aには、甲銀行に300万円の普通預金と900万円の定期預金があったという場合は、この預金はどうなりますか。

A

 従来、預金のような金銭債権(金銭の支払いを請求する権利)は、遺産分割協議をしなくても、相続開始とともに当然に分割され、各相続人に法定相続分に応じて帰属するとされていました。

 これによれば、設例のケースでは、300万円の普通預金については、妻に150万円、長男と二男にそれぞれ75万円が帰属します。また、900万円の定期預金については、妻に450万円、長男と二男にそれぞれ225万円が帰属し、各相続人は、自分に帰属した金額の払い戻しを銀行に単独で請求することができました。

 ところが、平成28年12月19日の最高裁決定は、この取扱いを変更し、「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期預金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」としました。

 そのため、以後、相続人は、法定相続割合に応じた自己の持分であっても、遺産分割をしないで金融機関に単独で払い戻しを請求することはできなくなりました。

 しかし、そうなると、葬儀費用や相続債務の返済など、すぐに支払うことが必要な出費について、すみやかに対応することが困難になってしまいます。

 そこで平成30年改正法は、遺産に含まれる預貯金債権について、遺産分割協議の成立前に、各相続人が、一定の要件のもとで、単独で預貯金債権の払い戻しを受けることができることとしました。

 この払い戻し可能額には上限があり、相続開始時の預貯金債権の3分の1に対する相続分までとされています。この額は、預貯金債権ごとに判断されます。

 設例のケースでは、普通預金が300万円、定期預金が900万円ですから、妻Wは普通預金については50万円(300万円×1/3×1/2)、定期預金については150万円(900万円×1/3×1/2)の範囲で、また、長男と二男は、普通預金については25万円(300万円×1/3×1/4)、定期預金については75万円(900万円×1/3×1/4)ずつの範囲で、遺産分割前であっても単独で払い戻しを受けられることになります。

 ただし、一つの金融機関に対して権利行使できる額は、「法務省令で定める額」の範囲に限るとされており、法務省令は、この上限額を150万円と定めました。

 したがって、妻が単独で甲銀行に対して払い戻しを請求できるのは、普通預金50万円、定期預金150万円のうち、合計で150万円の範囲内となります。

Q
現金の取扱い

 Aには、妻と2人の息子がいます。Aが亡くなりましたが、妻は、相続財産である現金400万円を保管しています。この現金は、どうなりますか。

A

 現金も当然相続財産ですが、現金は、預金と異なり、遺産分割協議の対象となるとするのが最高裁判所の判例です。

 したがって、長男や二男は、遺産分割前に、妻に対し、自分の法定相続分に当たる現金の支払いを請求することはできません。

Q
損害賠償請求権の取扱い

 Aには、妻と2人の息子がいます。Aが交通事故で亡くなりましたが、裁判で加害者に対する8,000万円の損害賠償請求権が認められました。この損害賠償請求権は、どうなりますか。

A

 交通事故により死亡した被害書の加害者に対する損害賠償請求権は相続財産ですが、金銭債権(金銭の支払いを請求する権利)ですから、遺産分割協議をしなくても、相続開始とともに当然に分割され、各相続人に法定相続分に応じて帰属するとされています。

 設問のケースでは、妻に4,000万円、長男と二男にそれぞれ2,000万円が帰属します。

Q
生命保険の取扱い

 相続において、生命保険金や生命保険契約はどのように取り扱われますか。

A

 相続における生命保険金や生命保険契約の取り扱いは、少し複雑です。

 亡くなった被相続人を契約者とする生命保険契約には、次のようなパターンがあります。「契約者」とは、保険契約を締結し、保険料を支払っていた人、「被保険者」とは、保険事故の対象者、「受取人」とは、契約で保険金の受取人として指定されている人です。

 上記①は、受取人として指定された人が、保険契約に基づく権利として保険金請求権を取得しますので、この保険金請求権は相続財産ではなく、遺産分割の対象とはなりません(ただし、例外としてQ 保険金と特別受益)。

 上記②は、相続人を受取人と指定したこととなり、相続人は、保険契約の基づく権利として保険金請求権を取得しますので、この保険金請求権は相続財産とはなりません。

 上記③は、受取人の指定がありませんので、保険契約約款及び法律の規定により、受取人を決めることになります。通常は、保険契約約款に、受取人の指定がない場合の受取人についての定めがあります。この定めに、「被保険者の相続人に支払います。」と定められていれば、上記②と同様に、相続人は、保険契約の基づく権利として保険金請求権を取得しますので、この保険金請求権は相続財産とはなりません。

 上記④の場合も、被相続人は、自分が死んだ場合は相続人を受取人とする意思であったと考えられています。従って、上記②と同様の取り扱いとなります。

 上記⑤は、例えば、被相続人が息子を被保険者とし、自分を受取人とする死亡保険契約を締結しているような場合です。この場合、被相続人が先に亡くなると、まだ保険事故は発生していませんので、この保険契約自体が相続財産として相続の対象となります。従って、遺産分割をして、保険契約を承継する者を決めるなどしなければなりません。

〈税法との関係〉

 上記のとおり、死亡保険金は、ほとんどの場合相続財産ではないとされます。しかし、死亡保険金は、被相続人の死亡を原因として支払われた生命保険金であり、その生命保険金の保険料を被相続人が負担していた場合は、一定の範囲で相続財産とみなされ相続税の課税対象となります。

Q
株式会社の株式、持分会社の社員としての地位、社債及び国債の取扱い

 相続において、株式会社の株式、持分会社の社員としての地位、社債及び国債はどのように取り扱われますか。

A

 被相続人の所有していた株式会社の株式、持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)の社員としての地位、社債及び国債は、いずれも相続財産となります。

 また、預金とは異なり、いずれも相続発生と同時に当然に分割されるものではなく、共同相続人全員の準共有(共同相続人が共同して所有している状態)になります。

 従って、遺産分割により分け方を決めなければなりません。

Q
相続における投資信託の取扱い

 相続において、投資信託はどのように取り扱われますか。

A

 投資信託については、預金と同じように、遺産分割協議をしなくても、相続開始とともに当然に分割され、各相続人に法定相続分に応じて帰属するとする見解と、株式などと同じように、相続発生と同時に当然に分割されるものではなく、共同相続人全員の準共有(共同相続人が共同して所有している状態)になるという見解が対立しており、地方裁判所や高等裁判所の裁判例も分かれています。

 このため、被相続人の投資信託を預かっている銀行や証券会社は、遺産分割前の各相続人の払戻し請求には応じませんので、遺産分割により分け方を決める必要があります。

Q
死亡退職金の取扱い

 Aには、妻と2人の息子がいます。

 Aは会社員ですが、仕事中に心筋梗塞で亡くなりました。Aの死亡退職金は、遺産分割の対象となりますか。また、社会保険から支給された弔慰金や葬祭料はどうですか。

A

 死亡退職金は、被相続人の勤務先に退職金支給規程があるかどうかによって、取扱いが異なります。

 退職金支給規程がある場合は、その規定の内容によって、死亡退職金が相続財産かどうか決まります。

 例えば国家公務員の場合は、国家公務員法の規程が死亡退職金の受給権者の範囲や順序を定めており、その内容が民法の定める相続人の範囲や順序と異なっています。このため、最高裁判所の判例では、受給権者たる遺族は、相続人としてではなく、国家公務員法の規程により直接死亡退職金を自己固有の権利として取得するとしています。

 このように、勤務先の退職金支給規程が定める受給権者の範囲や順序が、民法の定める相続人の範囲や順序と異なっているような場合は、受給権者はその規程により直接死亡退職金を自己固有の権利として取得することになりますので、死亡退職金は相続財産ではありません。

 これに対して、勤務先に退職金支給規程がない場合は、これまでの退職金の支給慣行や支給経緯によって、死亡退職金が相続財産かどうか決まることになります。

 例えば、従来、死亡退職金を相続人であるかどうかを問わず被相続人と同居していた親族に支給してきたような場合は、被相続人の同居の親族に支払われることになりますので、死亡退職金は相続財産ではないことになります。

 なお、社会保障関係の法律により被相続人と一定の関係にある者に支給される損失補償、遺族年金、弔慰金、葬祭料などは、それぞれの法律に定められている受給権者固有の権利であり、相続財産ではないと考えられています。

〈税法との関係〉

 上記のとおり、死亡退職金は、ほとんどの場合相続財産ではないとされます。しかし、死亡退職金等の退職手当金は、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものに限り、一定の範囲で相続財産とみなされ相続税の課税対象となります。

Q
葬儀費用と香典の取扱い

 葬儀費用は相続財産から支払われるべきものですか。また、香典は相続財産に含まれますか。

A

 相続財産から支払われるべき相続債務とは、あくまで被相続人が亡くなるまでに発生していた債務です。

 これに対して、葬儀費用は、被相続人が死亡した後に、葬儀主宰者が葬儀会社と葬儀契約を締結したことによって発生した債務ですから、被相続人の相続財産から支払われるべき相続債務ではありません。

 もちろん、遺言に相続財産の中から葬儀費用を支払うことが記載されている場合や遺産分割協議や遺産分割調停において相続財産の中から葬儀費用を支払うことを合意した場合は、相続財産から葬儀費用を支払うことは何ら問題ありません。

 しかし、遺言に葬儀費用について何の記載もなく、相続人間で合意できない場合は、葬儀費用を支払った相続人は、相続財産から葬儀費用を支払うことを当然には請求できません。葬儀費用を支払った相続人は、葬儀費用の負担に応じない他の相続人に対し、他の相続人が葬儀費用を負担する根拠(たとえば、共同で葬儀社に依頼したことなど)を明らかにして、葬儀費用の支払いを請求することになります。

 また、同様に、香典も、喪主や遺族への贈与とされ、相続財産には含まれません。

〈税法との関係〉

 このように、葬儀費用は、被相続人の遺産から支払われるべき相続債務ではありません。しかし、相続税の申告においては、葬儀費用は、一定の範囲で債務控除の対象となります。

Q
位牌やお墓の取扱い

 ご先祖様のご位牌やお墓は、遺産分割の対象となりますか。

A

 家系図、位牌、仏壇、お墓といった祭祀財産は、相続財産には含まれませんので、遺産分割の対象となりません。

 祭祀財産の承継者は、被相続人の指定により決まりますが、被相続人が指定していない場合は、その地方の慣習によって決めることになります。さらに、被相続人の指定及び慣習によって決まらない場合は、家庭裁判所の審判によることになります。

 なお、相続人全員の合意があれば、遺産分割調停の中で祭祀承継者の定め、祭祀財産を承継させることも可能です。

〈税法との関係〉

 このように、位牌やお墓は遺産分割の対象となりません。また、相続税の課税対象でもありません。