

相続の法律制度(民法と相続税法の相続財産を巡る取扱の違い等)について、弁護士が解説したアドバイスです。
被相続人の預金を調べる
相続財産をどうやって調査したらいいの?とか、相続財産の調査をしてもらえるのか?といったご相談をよくいただきます。
被相続人が所有する財産には、不動産、自動車、株式など有価証券、預貯金などさまざまなものがあります。最近では、デジタル形式で保管していたデジタル資産など、被相続人本人でなければ簡単にはわからない財産もあります。
エンディングノートのようなものも普及してきており、被相続人がこうしたものを用意して、葬儀についての希望や相続財産の所在とその連絡先などを書いておいてくれると、残された家族はとてもたすかります。
ですが、もちろんそうしたケースだけではなく、むしろ相続発生後に、なんできちんと言っておいてくれなかったのだろうと家族が戸惑うことの方が多いかもしれません。
相続財産の中でも預貯金はかなりの割合を占めることが珍しくないので、被相続人がどの金融機関にどれくらいの預金を持っていたかを正確に把握することは、相続財産全体を確定する上で不可欠な作業です。また、預金口座の調査は、後を絶たない相続人による被相続人の預金の使い込みについて調査するためにも必須の作業となります。
では、被相続人の預貯金の調査は実際にどのように進めていけばよいのでしょうか。
預貯金には、不動産調査に有用な名寄帳や生命保険契約の照会制度といったような、一括でその所在を調査する方法がありません。
2024年4月1日からは、「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」(長いですね)によって、マイナンバーと紐づけられた銀行口座に関しては一括で調査することが可能となっています。
これにより、被相続人が生前に預貯金口座への付番(預金者が金融機関にマイナンバーを届け出ることで、預貯金口座とマイナンバーを紐づけること)を行っていれば、相続人が任意の金融機関に申し込むことで、すべての金融機関を対象に(といっても一部対象とならない金融機関があるのでデジタル庁のホームページ等で確認してください)、被相続人のマイナンバーが付番された預貯金口座の所在を確認することができます。
ただし、現時点でこの法律はマイナンバーと口座への紐づけを義務づけているわけではありませんし、制度がはじまってからまだ日も浅いので、預貯金口座とマイナンバーを紐づけている人は少ないはずです。
したがって、現状ではやはり取引銀行や預貯金口座はこれまでどおり自力で調べるしかないのが実状です。
そこで、次のような地道な作業が必要となります。
まずは、手がかりを探します。
被相続人の遺品の中から預金口座の手がかりとなるものを探します。通帳やキャッシュカード、銀行から届く郵便物、過去の確定申告書(還付金の振込先として口座情報が記載されていることがあります)、給与明細など、様々なところから手がかりが見つかることがあります。
とくに手がかりが見つからなくても、被相続人が生前勤務していた職場や自宅の近くの銀行・信用金庫等に口座を開設していることはよくあるので、そうした金融機関についても検討すべきです。
次に、金融機関に照会をします。
その際、すべての金融機関が対応しているわけではありませんが、全店照会といって、同じ金融機関の異なる支店の口座についても調査をしてもらうことができますので、全店照会ができる場合にはこれをお願いしましょう。
照会を行うには、被相続人の除籍謄本と調査している相続人の戸籍謄本が必要となります。
多数の金融機関にその都度、戸籍謄本を提出して確認してもらったうえで返してもらい、また次の金融機関でこれを繰り返すといったことをするのは大変ですし時間もかかりますので、法務局に申請して法定相続情報(被相続人の相続関係を一覧に表した図)を複数もらっておくと便利です。
その他の必要書類については、前もってそれぞれの金融機関に確認しておきましょう。手数料もかかるので、その額も確認しておくとよいです。
金融機関からは、預金の残高証明書や過去の入出金記録(取引履歴などともいいます)を取り寄せることができます。取引履歴の開示を求めることのできる期間は、一般的には10年以内のものですが、場合によってそれ以上前の履歴が出てくる場合もあります。
取引履歴をみれば、入出金の状況や口座引落しの内容などを確認することができ、これによって新たな口座が判明することもあります。相続人による被相続人の預金の使い込みが明らかとなることもあります。
もちろん、こうした預金の調査から照会までの手続をすべて弁護士に任せることもできます。
なお、金融機関に被相続人の口座について問合せ等を行うと、金融機関は口座名義人が死亡したことを把握するため被相続人の預貯金口座は凍結されます。そのため、場合によっては他の相続人等からクレームが出ることもありますので注意が必要です。
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