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相続の法律制度(民法と相続税法の相続財産を巡る取扱の違い等)について、弁護士が解説したアドバイスです。
田舎のじいちゃんの土地をどうする?所有者不明土地問題への施策~その2
私は62歳ですが、特に基礎疾患もないため、いつ頃ワクチン接種の順番が回ってくるのかと思っていましたが、意外と早く接種券が送られてきましたので、早速かかりつけの医院に電話をして予約し、7月6日に第1回の接種を済ませました。
かかりつけの医院といっても、最後にいつ行ったのかもわからず、診察券も紛失していたのですが、電話で名前と生年月日を話したところ、カルテが残っていたので、無事予約できました。
接種は、ちょっとチクリとするだけで何事もなく終わり、1回目なので、副反応も接種した左腕が痛む程度でした。
2回目は、きっちり3週間後の7月27日ですが、2回目の副反応は、かなりきつかったという人もいるので、その週は、できるだけ裁判を入れないようにしています。
さて、今回は、所有者不明土地問題の続編です。
今年の3月のコラムで、次のような相談があったことを書きました。
Aさん(男性60歳)は、母親が20年前に祖父から相続した地方の土地とその上の建物の対応について、相談にきました。「母親が相続した」と言っても、あくまで母親と母親の兄弟3人の合計4人で共同相続したもので、未だに遺産分割が終わっておらず、登記もAさんの祖父名義のままです。もちろん、この家には誰も住んでおらず、廃屋となっています。
この20年の間に、Aさんの母親の兄弟のうち2人は亡くなり、さらに、その子供も亡くなっている家もあるそうです。
Aさんとしては、自分が元気なうちに、この問題を片づけたいということでした。
Aさんの母親から委任状をもらい、戸籍を取り寄せて相続人を確定したところ、相続人は、全部で10人となりました。この10人の方の住所を調べ、Aさんの意向を説明して協力をお願いする手紙を差し上げたところ、ほとんどの方から協力していただけるとのお返事をいただきました。
しかし、残念なことに、相続人の中の1人は、外国に移住していて行方が分からず、また、2人の方が認知症で施設に入られていて、その方たちのお子様からお返事をいただきました。
今年の3月のコラムで、「相続人が確定できたとしても、全員の行方が把握できるのか、認知症等によって遺産分割協議ができない人がいるのではないか等、協議を開始する前に、越えなければならないハードルは、たくさんあります。」と書きましたが、そのとおりになってしまいました。
外国に移住していて行方が分からない方については、弁護士照会という制度を利用して、外務省に所在の確認をし、それでも、所在がつかめないときは、家庭裁判所に、不在者の財産管理人の選任を申し立てるという方法で対処することができます。
また、認知症で施設に入られている方については、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てるという方法で対処することができます。
しかし、不在者の財産管理人を選任してもらうには、高額の予納金を納付しなければなりません。私が、何年か前にこの申し立てをしたときは、予納金100万円を納めるように言われました。
不在者の財産管理人は、通常は弁護士が選任されるのですが、この弁護士に払う報酬を裁判所のお金で払うわけにはいきませんので、選任の申立をした人が、予め裁判所に一定額を預けることになっており、これが予納金です。
また、成年後見人の選任の申立は、認知症の方の配偶者や子供でなくても、4親等以内の親族であればできますので、Aさんの母親は、相続人である兄弟又は兄弟の子供が認知症の場合、成年後見人の選任を申し立てることができます。
また、申立に当たって、高額の予納金を納める必要はなく、認知症の方の子供を成年後見人に選んでもらうこともできます。
しかし、認知症の方の配偶者や子供が、特に成年後見人の選任を望んでいないのに、たとえ遺産分割のためとはいえ、Aさんの母親が成年後見人の選任を申し立てるのは、かなり心理的な抵抗があります。
また、認知症の方の子供が成年後見人になった場合でも、本人の財産と成年後見人の財産をきちんと分け、収支を記録して、1年に1回家庭裁判所に報告しなければなりません。
こういうことに慣れていない人にとっては、かなり面倒くさい作業ですので、「今のままで不自由してないから、成年後見人の選任申立など止めてくれ。」と言われるかもしれません。
Aさんとの打ち合わせでは、とりあえず、弁護士照会という制度を利用して、外務省に行方不明者の所在の確認をすることになりました。
照会の結果、行方不明の方の行方が判明した場合、行方不明ではありませんので、不在者の財産管理人の選任申立はできません。
この場合、その方が生きていれば、連絡を取ることになりますが、外国で亡くなっていたときは、その方の相続人を探すことになります。
しかし、外国で亡くなった方が、もし外国の国籍を取得して、日本国籍を喪失していた場合には、その方の相続は、その外国の法律に従って処理されることになりますので、その国の法律を調べた上で、その法律に従って相続人を確定しなければなりません。
外国の法律を調べるのは簡単ではありませんし、さらに外国で生活している相続人を探すのも、大変です。
こんなことを書くと不謹慎ですが、行方が判明しなければ、不在者の財産管理人の選任申立をできますので、前に進むことができます。
もっとも、不在者の財産管理人の選任の申立をできたとしても、次は、成年後見人の選任申立が残っています。申立について認知症で施設に入居されている方のご家族に相談することになりますが、申立に反対されたときは、ご家族の意見を無視することはできませんので、その時点で、万事休すとなります。
Aさんとは、新しくできた「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が施行されるのを待って、国に引き取ってもらうことも検討しましたが、この法律による相続土地国庫帰属制度は、いろいろと条件が厳しく、あまり使い勝手がよくないようです。
今回は、長くなってしまいましたので、この法律の内容については、別の機会に詳しくお話ししたいと思います。
大谷 郁夫Ikuo Otani・鷲尾 誠Makoto Washio弁護士
銀座第一法律事務所 http://www.ginza-1-lo.jp/
平成3年弁護士登録 東京弁護士会所属
趣味は読書と野球です。週末は、少年野球チームのコーチをしています。 仕事では、依頼者の言葉にきちんと耳を傾けること、依頼者にわかりやすく説明すること、弁護士費用を明確にすること、依頼者に適切に報告することを心がけています。
鷲尾 誠
平成4年弁護士登録 第二東京弁護士会所属
昨年から休日の時間がとれたときに自転車に乗っています。行動範囲が広がり、自然や店などいろいろな発見があります。仕事のうえでもますます視野を広げ、皆さまのお役に立つよう心がけたいと思っています。