中古マンションのリセールバリュー 2018【中部圏・地方圏】 2019年9月
前回に引き続き、今回は中部圏や地方圏の主だった地域(北海道・宮城県・広島県・福岡県)における中古マンションのリセールバリュー(リセールバリューについては前回の説明をご参照下さい)を見ていきます。
首都圏や近畿圏の都市中心部などでは新築・中古マンション価格が90年代バブル期の水準にも迫るケースが見られ始めていることに触れましたが、これらの動きは中部圏も例外ではなく、特に2027年のリニア中央新幹線開業に向けてオフィスビルなどの再開発が推し進められているJR名古屋駅周辺では実需・投資の両ニーズを集める形でマンション価格も高騰してきています。
2016年以降、日銀によるマイナス金利の導入が追い風となって潤沢な資金を必要とする大規模再開発やインフラ整備に弾みがつき、一定以上の経済圏や人口規模を有する地方中枢4市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)でも大手デベロッパー主導の下でタワーマンションをはじめ新築マンションの供給が盛んに行われています。転入人口の増加による居住ニーズの高まりなども相俟って、これらの地域においてもマンション価格は上昇トレンドで推移しており、中には東京23区や大阪市の中心部と同等かそれ以上の価格上昇率を示しているケースも珍しくはないようですが、ここでは各駅でのリセールバリューを引き合いに、その分布状況やランキングなどを通してそれぞれの地域における傾向や特徴について具体的に見ていきましょう。
中部圏でマンションの資産価値が維持されやすいのは名駅周辺や東山エリア
こちらは中部圏における対象114駅のリセールバリューを色分けした路線図となっています。青色で示されたリセールバリューが100%以上の駅(=新築分譲時の価格以上で中古流通している駅)は9駅(シェア:7.9%)を数えるのみで、首都圏(同21.9%)や近畿圏(同23.0%)に比べても全体に占める割合が非常に限られていることがわかります。中部圏平均を総じて上回る緑色は23駅(同20.2%)で、これらの多くは地元住民から住宅地として人気が高い東山エリアに多く点在しています。
これまでは東山エリアの方が相対的にリセールバリューが高かったのですが、直近にかけてはJR名古屋駅前の再開発によって居住エリアとしてのポテンシャルが向上したこと、職住近接の生活スタイルを求める若い世代や転入者からのニーズの高まりなどを背景にマンション価格が押し上がる動きを見せており、リセールバリューの水準においては逆転し始めています。
一方、近郊~郊外エリアに位置する駅を見てみると、押し並べて資産価値が2割ほど目減りしています。名古屋市中心部から郊外に行くほど通勤時間が長くなったり、数回の乗り換えが必要になったりするなど、都心部のオフィスに通勤する際の「交通利便性」が劣っていることも一因に挙げられますが、中部圏においては競合相手で価格訴求力を有する一戸建て住宅の存在が大きく、分譲マンションが中古流通する際にはこれら住宅価格に強く影響される形で上値が抑えられ、結果的にリセールバリューが低下してしまっていると見る方が妥当であると言えます。
前回、各駅におけるリセールバリューと分譲マンションの賃料水準との関係性に触れた際には、首都圏や近畿圏では明確な“正の相関関係”にあることからマンション購入に際して資産性を重要視する場合には、「候補の中から賃料水準が高く表面利回りも良好なエリアや物件を極力選ぶこと」をポイントとして挙げました。同様に、中部圏でもこれらの関係性を見てみると、対象駅が少ないということもありますが首都圏などに比べて明確な正相関の傾向はなく、一部の駅を除けば賃料水準に関係なくリセールバリューは概ね80%~100%に収斂している傾向を示しています。このような特徴は一戸建て住宅に対する独自の志向性によるところが大きいわけですが、資産性を重要視したマンション購入を検討する場合、賃料水準の高さだけで判断することは極力避けた方がよさそうです。
リセールバリューが100%超えるケースは限定的 高価格帯の駅でも資産価値は目減り
新築分譲時の価格帯によってリセールバリューの数値が高い駅をそれぞれランキングにしてみますと、リセールバリューが100%を超える駅は①の高価格帯では5駅と、②や③に比べれば幾分か多いものの、いずれの価格帯でもごく限られたケースであることがわかります。
①にはJR名古屋駅に近いエリアの他にも、東山エリアに位置する駅が多く登場していますが、リセールバリューが100%を下回っている駅も見受けられます。これらは人気住宅地ということで新築マンション価格が強気に値付けされていたことに加えて、一戸建て住宅の相場価格との兼ね合いから中古流通時の価格が抑えられ、結果的に資産価値が目減りしたものと考えられます。
一方、②や③といった高価格帯以外のランキング上位駅を見てみると、概ね80%~100%に収まっており、価格帯によってリセールバリューに大きな差は生じていません。この特徴は中部圏特有のもので、一戸建て住宅が主体である住宅市場においては分譲マンションの販売価格もそれらの相場に追従せざるを得ず、元々の価格水準が低いために中古流通時の価格が下落する余地も小さくなっているとみられます。
地方圏でもターミナル駅や中心部に位置する駅のリセールバリューは都市圏並みに高水準
地方圏における主要な地域である北海道、宮城県、広島県ならびに福岡県でのリセールバリューランキングはこちらの通りですが、いずれもターミナル駅やその周辺、市内中心部や人気住宅地、再開発によって街のポテンシャルが向上した駅などが多く見受けられます
福岡県では上位20駅の全てでリセールバリューが100%を超えており、他の地域でも少なくとも上位10駅は100%以上を示しています(中部圏の9駅を上回る)。また、北海道のJR函館本線「札幌」では173.2%と突出しており、これは首都圏の「原宿」(173.4%)や近畿圏の「大阪」(173.7%)と遜色ない水準となっています。当該駅は北海道随一のターミナル駅であり、道内を観光する上での拠点性も非常に高いために、近年では地元住民による居住目的の購入のみならず国内外の富裕層がセカンドハウスとして購入する動きも見られます。
このようなニーズの高まりを受けて、最近では投資マネーも流入してきており、その結果が突出したリセールバリューという形で表れています。
(データ提供:東京カンテイ)