中古マンションのリセールバリュー 2018【首都圏・近畿圏】 2019年6月
首都圏や近畿圏におけるマンション価格は、新築・中古ともに2008年のミニバブル期のピークを既に超え、都市中心部などでは90年代バブル期の水準にも迫るケースが見られ始めています。このように、高額化した分譲マンションをこれから購入しようと検討している方々の間では、“生活の場”としての住環境の良し悪しに加えて資産性や収益性を重要視することで、いざ手放す際にも出口戦略が取りやすいエリアや物件を厳選する動きが以前にも増して強まってきており、そのような傾向は販売現場からの声や各種アンケートの調査結果などからも窺えるようになってきています。
分譲マンションに関するエリアや物件による資産性の違いを推し測る代表的な指標としては、「リセールバリュー」というものがあります。これは、新築時の分譲価格に対して築10年時の中古流通価格がどのくらい維持されているのかを示したものであり、同じ市況の下で新規分譲や中古流通した物件を対象に比較しているために、純粋にどういった要素によってリセールバリューに差が生じるのかということを知る上で非常に役立つデータであると言えます。リセールバリューは東京カンテイが定期的に公表していますが、今回はその最新データを基にエリアによる傾向やその特徴、どういった駅で高い値を示しているのかについて具体的に見ていきましょう。
同じ市況の下でもマンションが所在する立地によってリセールバリューには大きな差
こちらは各駅でのリセールバリューを色分けした路線図で、首都圏では630駅、近畿圏では283駅が集計対象となっています。まずは首都圏の路線図を詳しく見てみますと、青色で示されたリセールバリューが100%以上の駅(=新築分譲時の価格以上で中古流通している駅)は、東京都心部や川崎・横浜エリアにかけて多く分布し、近郊~郊外エリアに位置する駅ほどリセールバリューの数値も低くなる傾向がはっきりと出ています。不動産の価値は「立地」に依拠する所が大きいと言われますが、分譲マンションもその例外ではないことがわかると思います。また、近郊~郊外エリアであっても隣接する駅に比べて高いリセールバリューを示している駅は存在しており、その多くはターミナル駅や急行・快速列車の停車駅などの「交通利便性」が良好な駅に該当しています。
一方、近畿圏では京阪神エリアの中心部でリセールバリューが100%以上の駅が目立っていますし、それぞれのエリア間に位置する駅でも資産価値の目減りが割と抑えられています。それに対して、兵庫県・和歌山県・奈良県の多くの駅は郊外エリアに位置しているために、大阪市中心部をはじめとする事業集積地まで相応の時間がかかったり、数回の乗り換えが必要であったりなどアクセス性が相対的に劣っていることから、リセールバリューの数値も総じて低く、前述の首都圏と概ね同様な特徴となっていることが確認できます。
各駅における分譲マンションの賃料水準は、駅の立地や多くの人の通勤先である都市中心部までの交通利便性の良し悪し、住宅地としての人気の高さなどによって違ってくるわけですが、この賃料水準とリセールバリューとの間には上のグラフに示す通り明確な正の相関関係があります。また、賃料水準が同程度であっても表面利回りが高かった駅(=新築価格が相場賃料に対して割安であった)の方が概ねリセールバリューも高くなる傾向となっています。そのため、マンション購入に際して資産性を重要視する場合には、これらの客観的なデータから導き出される「候補の中から賃料水準が高く表面利回りも良好なエリアや物件を極力選ぶこと」というポイントを覚えておくといいでしょう。
高価格帯以外の駅でリセールバリューが100%超えるケースも“狙い目”の特徴とは?
次に、新築分譲時の価格帯によってリセールバリューの数値が高い駅をそれぞれランキングにしてみますと、首都圏・近畿圏ともに①の高価格帯以外の駅であってもリセールバリューが100%を超えるケースが確認できます。高価格帯でのランキング上位駅を詳しく見てみますと、その多くは首都圏ではJR山手線の南側エリア、近畿圏では京阪神エリアの中心部といった好立地に位置しており、ランキングトップの「原宿」や「大阪」では築後10年を経た現在でも新築分譲時に比べて7割以上もマンション価格が高まっている状況となっています。一方、②や③といった高価格帯以外のランキング上位駅でも軒並みリセールバリューが100%を超えています。立地優位性の観点から、①に比べると価格水準や賃料水準は下回るケースが多いですが、上位にランクインする駅にはいくつか共通する特徴が見られます。例えば、オフィスエリアや事業集積地の周辺に位置していたり、近郊~郊外エリアのターミナル駅といった交通利便性に優れた駅が多く登場していますが、これらはDINKsを中心に住環境よりも職住近接や機能的なライフスタイルを重要視する実需層、資産性や収益性のバランスの良さを好感する投資家などから支持を集めています。他にも、大規模再開発によって街のポテンシャルが向上して日常生活の利便性が高まったり、新線開業や相互乗り入れで交通利便性が一段と向上するなど、新築分譲時から現在にかけて発展性を有していた駅も確認することができます。
今回示しましたリセールバリューは過去から現在にかけてのデータを基に算出したものであり、将来に渡っても同じ数値を保証するものではありませんが、どのようなエリアや物件でマンション価格が上昇しているのかといった特徴、その背景にある価値観やトレンドの変化などを読み解くことは、「資産価値が目減りしにくいマンション選び」をする方が多くなってきている昨今においては、非常に重要な視点であると言えます。
(データ提供:東京カンテイ)