マンションの駅徒歩時間別の価格差ってどれぐらいあるの?
「××駅徒歩○分」という交通条件は、マンション広告では価格と並んで最も大きく掲載されています。購入者にとってはそれだけ関心の高い項目であり、実際に重要な決め手になるものでもあります。当然のことですが一般に駅から近い物件の人気が高いので、駅近物件ほど価格水準が高くなるのが普通ですが、実際に徒歩時間別に価格差(坪単価差)というのはどの程度あって、地域によっても違いがあるのかについて、不動産データベースの東京カンテイの協力を得て検証してみます。
※2000年以降に竣工した駅徒歩15分以内の分譲マンションを対象として、2009年1月~2010年9月の中古売事例を集計
首都圏では1分遠くになるごとに明らかに坪単価が下落
三大都市圏の圏域ごとに駅徒歩時間別の中古マンション流通坪単価を見たのがグラフ-1です。
三圏域とも駅から近いほど坪単価の水準は高くなり、駅から遠くなるほど坪単価が下落する傾向となっていることが分かりますが、特に坪単価水準が高い首都圏では、1分遠ざかるごとに坪単価が明らかに下がって行き、近畿圏と中部圏では首都圏ほど大きな「1分の差」が表れていません。
近畿圏と中部圏で駅徒歩時間の坪単価への影響が大きくない主な理由は、首都圏に比べると価格のレンジが狭く、駅から近い物件と遠い物件の価格の差がもともとつきにくくなっていることが考えられます。駅徒歩時間の違いによる利便性が価格に表れにくいので、交通条件をさほど気にせずに購入することができます。首都圏は反対に「1分の価値」を重視して購入する必要があるでしょう。
徒歩1分の平均坪単価差は首都圏では4.0万円、近畿圏1.2万円、中部圏0.6万円
グラフ-2は、グラフ-1の価格の違いを徒歩1分と比較して示したものです。このグラフから、首都圏では徒歩15分になると徒歩1分の平均坪単価と比較して60.3万円もの開きが生じていることがわかります。70m²
換算で1300万円弱の違いですから大きな差です。近畿圏は17.5万円、中部圏は9.7万円です。差は首都圏と比較して小さいですが、やはり駅近物件との価格差が見えてきます。この数値から「1分の価値=1分ごとに下落する価格」を計算すると、首都圏が4.0万円、近畿圏1.2万円、中部圏0.6万円となります。
またこのグラフ-2からは、興味深いことがわかります。
①首都圏では徒歩2分より、徒歩3分~4分の坪単価が高い水準にある
②首都圏では徒歩9分と徒歩10分の間に12.7万円もの価格の断層が生じている
③近畿圏では徒歩1分より徒歩3分や4分の坪単価が高い
④中部圏では徒歩1分より徒歩1分~7分の坪単価が高い
三大都市圏に共通していえますが、駅周辺エリアは騒音が大きかったり、深夜まで営業している店が多く人通りが絶えないなど、住宅地としてあまり好まれないケースも数多く、むしろ駅から少し離れたところの方が高い価格がつく場合も少なくないようです。近畿圏や中部圏ではその傾向がデータに表れていると言えるでしょう。
また、首都圏で徒歩9分と10分の間に大きな坪単価差を生じているのは、徒歩10分から「駅から遠い」という暗黙の評価が、売手と買手の双方に生じていることの表れかもしれません。近畿圏でも首都圏と同様に徒歩9分と10分の間に5.0万円と比較的大きな差があります。中部圏では徒歩11分と12分の間に6.3万円と比較的大きな差が生じています。
新築マンションではどうなっているか
参考までに新築マンションではどのような価格差がついているのか、グラフ -3 で見てみましょう。
※新築マンションの坪単価は 2000年~ 2010年9月に竣工したマンションの平均値を採用
1分の平均坪単価差は新築マンションの方が小さくなっています。首都圏では中古マンションが平均 4.0 万円であったのに対し、新築マンションでは 2.8 万円となっています。近畿圏と中部圏も同様に差が小さくなっています。
また首都圏では、徒歩1分から 6分まではほとんど坪単価の差がついていないことがわかります。これは供給側が、徒歩6分までが「駅近物件」であるという認識を持っていることを示していると言えるでしょう。近畿圏では、徒歩7分までが徒歩1分とほぼ同水準であり、徒歩8分からはっきりとした価格差がついています。中部圏は徒歩12分から価格差がついていると見ることができます。
このように、新築マンションでも「駅近という付加価値」が徒歩何分までなのかに地域差が表れています。これが中古マンションの価格差にも少なからず影響を与えていることを考えれば「1分の価値」は決して疎かにできないと言えるでしょう。
※データ提供:東京カンテイ