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2014年1月号

不動産市況や業界動向などの旬な情報を記載したコラムです。

マンションPBRとマンションPERの微妙な関係

~マンション購入する際に、資産性を重視するか、それとも収益性を重視するのか~

首都圏平均:
 マンションPBR/0.91  マンションPER/23.98


①マンションPBR(資産性)、マンションPER(収益性)ともに良好な駅

沿線名
駅名
マンション
PBR 
直近10年の
新築価格
対象マンション
から発生した
中古価格
マンション
PER 
新築
価格
月額賃料
(円)
JR山手線 品川
1.31
4,637
6,082
20.73
6,086
244,632
JR山手線 秋葉原
1.20
5,557
6,703
21.64
6,308
242,967
都営地下鉄
大江戸線
勝どき
1.18
4,856
5,750
20.88
5,714
228,087
JR京浜東北線 横浜
1.17
4,589
5,394
21.26
4,841
189,788
JR山手線 日暮里
1.16
4,543
5,312
19.25
4,538
196,443
東京メトロ
有楽町線
月島
1.14
5,474
6,241
20.74
5,710
229,438
東京メトロ
有楽町線
辰巳
1.14
4,052
4,629
18.41
4,005
181,318
京王井の頭線 三鷹台
1.09
4,815
5,258
16.71
3,914
195,212
東京メトロ
有楽町線
豊洲
1.08
5,099
5,542
19.04
4,824
211,121
東京メトロ
有楽町線
東池袋
1.08
5,881
6,355
20.09
5,825
241,578

②マンションPBR(資産性)は良好だが、マンションPER(収益性)が平均以下の駅

沿線名
駅名
マンション
PBR 
直近10年の
新築価格
対象マンション
から発生した
中古価格
マンション
PER 
新築
価格
月額賃料
(円)
東京メトロ
半蔵門線
半蔵門
1.12
9,188
10,370
32.72
10,177
259,238
みなとみらい線 元町・中華街
1.10
4,440
4,905
25.34
5,915
194,536
東京メトロ
東西線
門前仲町
1.05
5,036
5,311
25.26
5,673
187,140
東京メトロ
千代田線
根津
1.03
6,302
6,539
25.90
6,730
216,586
東京メトロ
千代田線
赤坂
1.03
9,693
10,006
28.01
10,309
306,705
東京メトロ
有楽町線
新富町
1.01
5,266
5,340
25.55
6,977
227,543
東急
田園都市線
溝の口
1.01
3,933
4,008
26.25
4,588
145,637
JR総武線 市ヶ谷
1.01
7,474
7,569
29.69
9,171
257,424
東京メトロ
南北線
麻布十番
1.00
8,665
8,720
28.31
9,552
281,185
JR総武線 市川
1.00
4,788
4,826
30.92
5,393
145,368

③マンションPBR(資産性)は平均以下だが、マンションPER(収益性)は良好な駅

沿線名
駅名
マンション
PBR 
直近10年の
新築価格
対象マンション
から発生した
中古価格
マンション
PER 
新築
価格
月額賃料
(円)
京成本線 実籾
0.73
2,605 1,922
21.05
2,353 93,159
JR山手線 新橋
0.75
7,148 5,378
19.09
6,502 283,836
東葉高速鉄道 村上
0.78
2,663 2,080
19.98
2,411 100,562
つくば
エクスプレス
柏の葉
キャンパス
0.78
3,370 2,660
21.64
3,488 134,326
東急東横線 日吉
0.79
3,978 3,180
20.72
3,461 139,196
JR京浜東北線 赤羽
0.79
5,112 4,066
21.49
4,540 176,045
つくば
エクスプレス
八潮
0.81
2,927 2,389
19.01
2,829 124,028
京成本線 青砥
0.81
3,653 2,989
20.06
3,295 136,877
東京メトロ
銀座線
田原町
0.83
5,190 4,348
20.92
5,241 208,742
JR南武線 矢川
0.83
3,765 3,149
21.64
3,603 138,745

④マンションPBR(資産性)、マンションPER(収益性)ともに平均を下回る駅

沿線名
駅名
マンション
PBR 
直近10年の
新築価格
対象マンション
から発生した
中古価格
マンション
PER 
新築
価格
月額賃料
(円)
JR埼京線 北戸田
0.72
3,533 2,547
26.57
3,324 104,265
JR総武線 津田沼
0.72
3,581 2,609
28.97
4,003 115,143
京成本線 ユーカリが丘
0.75
2,782 2,095
28.44
3,152 92,346
JR京葉線 検見川浜
0.76
3,354 2,572
30.08
3,274 90,711
JR武蔵野線 府中本町
0.77
4,716 3,663
27.60
4,344 131,134
JR横浜線 淵野辺
0.79
3,112 2,484
25.48
3,097 101,293
JR常磐線 松戸
0.80
2,907 2,351
25.58
3,620 117,933
JR埼京線 戸田公園
0.80
3,269 2,641
26.60
3,819 119,634
JR高崎線 上尾
0.80
3,339 2,698
34.04
4,020 98,413
北総鉄道 千葉
ニュータウン中央
0.81
2,524 2,058
25.69
2,298 74,543

マンション価格および月額賃料は全て70m² 換算
マンションPBRの集計対象期間:2003年~2012年の10年間
マンションPERの集計対象期間:2012年7月~2013年6月の1年間
専有面積30m² 未満の住戸は集計から除外

①マンションPBRもマンションPERも良好な駅

 資産性も収益性も良い駅は、購入後ライフステージの変化に応じて売却しても、また賃貸に出して安定して賃料収入を得ても、さらには一定期間賃貸で運用した後に売却しても良いという、まさに経済的には理想のエリアです。駅名を見ると、品川を始めとして都心やその周辺の交通利便性の良い駅が並んでいることがわかります。品川を例に挙げると、マンションの直近10年間の資産性は1.31=31%上昇していて、周辺の賃料相場で換算すると20.73=21年弱で購入できるということです。マンションPBRの首都圏平均値は0.91ですから0.40ポイント資産倍率が良好で、マンションPERも平均の23.98から3.25年資金回収が早いのです。
 これらの駅は、単に立地条件が良いということ以上に、もともと商業地などとして活用されており、もともと住宅地としてのイメージは強くなかったが、利便性のゆえに近年マンション分譲が進んでいるという共通点があります。首都圏湾岸エリアの駅も入っており、近年の人気を裏付けるものと言えます。

②マンションPBRは良好ながらマンションPERは平均以下の駅

 資産性は良好でも、収益力が平均を下回る(PERの数値は平均を上回る)駅は、同じ都心および近郊に位置していても、これまで主に住宅地として活用されていて、利便性よりも住環境が重視される傾向が強いという共通項があります。人気住宅地として知られるエリア=駅は、一般に分譲価格が強気であることが多いのですが、都心以外の住宅地では、交通利便性に応じて賃料が変わるため、価格に比較して賃料水準がやや低くなるというケースがあります(半蔵門や赤坂のように価格が極めて高額なので、賃料水準が高くてもPERが悪化するという都心に特有の駅もあります)。
 これらの駅では①の駅と分譲価格が同じ水準か、もしくはそれを超える価格であることもあるのですが、相対的に賃料相場は①よりやや低くなる傾向があります。つまり出口戦略としては、賃貸に出すよりは専ら売却を前提として検討するほうが良いエリアということになります。

③マンションPBRは平均以下でもマンションPERが良好な駅

 資産性にはやや劣るため売却差損は相応に発生するが、収益力があるので貸すには向いているという駅がこのパターンです。都心から一定の距離があって売却すると分譲時の価格からは下落するリスクがあるものの、ターミナル駅に近く周辺の事業集積地に近いため賃貸ニーズがあり、収益性は良好です。また新橋や田原町など主に商業地として活用されているエリアの資産性は、住宅地として見るとやや厳しいのですが、それを補うだけの収益性があることが明らかです。
 このパターンに分類される駅周辺の物件は、短期間で売却することで下落リスクが薄まりますから、出口戦略は賃貸をメインとして投下資金をある程度回収したら速やかに売却する、というシナリオがイメージできます。その意味では投資に向いたエリアと言えるかも知れません。

④マンションPBRもマンションPERも平均を下回る駅

 最後は、残念ながら資産性にも収益性にもリスクが高いと考えられる駅です。③と同様に郊外に位置する駅が多く、ターミナル性や事業集積地に近いという特性も見受けられないため、少なくとも経済合理性をある程度重視してマンションを購入しようと考える方は、購入候補リストの上位に記載しないほうが無難です。
 ただし、経済合理性を補って余りある居住性の高さがある場合や、地縁・血縁などの人的ネットワークがあり、勤務先や学校も含めてそのエリアに居住するべき人・世帯が、敢えて他のエリアを選択して居住することも考え難いでしょう。住宅・マンションを購入するきっかけは冒頭申し上げた通り千差万別です。経済合理性だけで判断できるものではないことが、マンション選びを奥の深いものにしていると言えるでしょう。

 このようにマンションの経済合理性をエリアの特性に応じて検証すると、結局、購入者ご自身が「どのように暮らし、生活の基盤を形成していくか」という、将来に向けたビジョンを持つことの必要性が見えてきます。マンションは今回解説したように“資産”ですが、家族が安全・幸せに生活する“住まい”でもあります。この“資産”と“住まい”としてのバランスの良い物件を選ぶこと=“住まい”として気に入ったマンションの“資産性”を「マンションPBR」と「マンションPER」を使ってチェックしてから購入すること、を覚えておくと、よりリスクが少なくなるマンション購入が可能になるはずです。

※本コンテンツの内容は、記事掲載時点の情報に基づき作成されております。