中古マンション価格はこの3年間でどのくらい上昇したのか?【三大都市編】2016年7月
~東京23区・大阪市・名古屋市の中古マンション価格を築年別に調査~
新築マンションの販売価格は、増大した地価や建築コストの転嫁に加えて都市中心部への立地偏在や高額物件の割合が増えたことを受けて、非常に高い水準での推移が続いています。
中古マンションについては、新築物件に比べて割安感が強いことやストック戸数が多いことなどを背景に購入ニーズの受け皿となり、流通価格は直近にかけて連れ高の様相を呈しています。
その一方で、中古マンション市場では2015年の秋頃を境に正味の在庫数である流通戸数の増加が目立ち始め、また価格水準が高い都市中心部立地の物件や築年数が浅い物件からの売り事例が増えつつあり、平均的な流通価格を一層押し上げるようになってきています。
今回は築年帯別での正味のトレンドを把握するとともに、中古マンション価格が上昇に転じ始めた2013年からこの3年間でどのくらい高まったのか、また直近ではどのような値動きとなっているのかについて見ていきましょう。
(1)東京23区
東京23区における中古マンションの価格推移を見ると、各築年帯ともに2013年を境にはっきりと上昇トレンドに転じている様子がわかります。
上昇度合いはいずれも年々強まっており、特に「築5年以内」では2013年(1月~12月)で+5.3%、2014年で+9.3%、2015年で+20.1%と、その高騰ぶりは非常に顕著であると言えるでしょう。
2016年1月時点の価格を2013年1月当時と比べてみると、「築5年以内」で+38.0%(+2,038万円)、「築10年以内」で+29.4%(+1,423万円)、「築20年以内」で+37.2%(+1,463万円)、「築30年以内」で+28.2%(+859万円)、「築30年超」で+34.2%(+1,018万円)と、この3年間で軒並み3割~4割程度も上昇し、概ね築年数が浅い物件ほど上昇幅が大きい傾向を示しています。
また、中古マンション価格が底打ちした2013年以前に比べて各築年帯での価格差は拡大していることも確認できます。
2016年に入ってからは前年に比べて上昇度合いが鈍くなりつつあるものの、反転下落には至っておらず、依然として堅調な推移を維持しているようです。
(2)大阪市
大阪市では中古マンション価格が反転上昇するタイミングは各築年帯でまちまちとなっており、揃って上昇トレンドを示したのは2015年に入ってからです。
2013年以降で上昇度合いが最も強いのは2015年で、直近にかけて価格高騰しているという特徴は前述の東京23区と同様であると言えるでしょう。
2015年(1月~12月)での上昇率を見ると、「築5年以内」で+16.4%、「築10年以内」で+9.6%、「築20年以内」で+16.6%、「築30年以内」で+18.1%、「築30年超」で+11.0%と、概ね2ケタ上昇を記録しています。この3年間での上昇率はいずれの築年帯でも2割~3割程度で、なかでも「築5年以内」が+34.3%(+1,127万円)と突出しています。
築浅物件ほど上昇幅が大きく、各築年帯での価格差が拡大しつつある点も東京23区と似通っています。2016年以降では、築年帯によっては上値が重い推移を示しておりますが、弱含みが続くまでには至っておらず、非常に高い価格水準を保っています。
(3)名古屋市
名古屋市における中古マンションの価格推移を見ると、2013年を境に築20年以内の各築年帯で反転上昇となり、翌2014年には築20年超の物件でも上昇基調で推移し始めている様子がわかります。
直近にかけて価格高騰が顕著となっている状況は東京23区や大阪市と同じであり、2015年(1月~12月)での上昇率は「築10年以内」を除いて軒並み10%以上となっていました。
2016年1月時点の価格を2013年1月当時と比べてみると、「築5年以内」で+23.3%(+721万円)、「築10年以内」で+15.1%(+365万円)、「築20年以内」で+24.6%(+463万円)、「築30年以内」で+17.1%(+227万円)、「築30年超」で+20.8%(+208万円)と、この3年間で軒並み2割前後上昇しています。
ただ、上昇幅自体は小さく、最も価格上昇した「築5年以内」でも東京23区(+2,038万円)や大阪市(+1,127万円)に対して名古屋市は+721万円に留まっています。
2016年に入ってからは依然として前年同月を上回り続けており、またその推移からも上昇基調にあることに変わりはないです。
今回は東京23区、大阪市および名古屋市での中古マンション価格推移を見てきましたが、いずれの都市においても①2013年以降に上昇トレンドへシフトし、②2015年に上昇度合いが強まり、③2016年に入ってからも天井感が強まる中で堅調な価格推移を維持しているといった共通点が確認できました。
中古マンション市場では売出価格の高騰に伴って購入希望価格との乖離が著しくなってきており、一部では成約までに期間を要したり最終的に成約に至らずに在庫として中古市場に滞留するケースも生じているようです。これら動向は流通戸数の増加や価格改定(値下げ)シェアの拡大といった形で数値としても現れ始めています。
マーケットを取り巻く環境に目を向けてみると、一次取得者向けの販売価格で分譲されている新築マンションが数少なくなる中で、比較的割安感が強い中古マンションは購入者のニーズの受け皿となっている状況に変わりなく、また過去最低水準を更新し続ける住宅ローン金利は間違いなく購入に対して追い風となっていますが、2016年において購入促進要素の一つであった消費税増税が2019年10月に延期されたことで、折からの価格高騰と相俟って購入マインドが今後冷え込んでしまう可能性も出てきています。
このように、マンション市場を取り巻く環境において好材料しか見当たらなかった数年前までとはだいぶ様変わりしています。
今後のトレンドを読み解くことは一層難しくなっており、エリア平均の価格動向のみならず、それらを構成している事例の立地や築年シェア、在庫数や成約率などの動向にも注視したいところです。また、消費税増税に伴って実施される予定であった住宅取得支援制度(贈与税非課税枠、すまい給付金などの拡充)ですが、現時点ではどのように変更されるのか正式に公表されていませんので、こういったニュースに対してもアンテナを張っておくことが必要と考えます。
※【地方中枢都市編】は次回解説予定です。
※データ提供:東京カンテイ