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2013年6月号

不動産市況や業界動向などの旬な情報を記載したコラムです。

分譲マンション 属性別施工実績ランキング

~分譲マンションを建設するゼネコンでタワー&大規模マンションに強いのはどこか~

 消費増税を間近に控えてマンションの分譲も目に見えて増えてきました。アベノミクスで円安が進み、建築用の資材価格が上昇していますが、現在分譲中のマンションはその影響も受けず、エリアごとに目立った価格上昇は発生していません。ただし、今後は景気拡大感が強まっていることや物価上昇目標が設定されたこと、それに地価や資材価格の高騰の可能性を含めてマンションの販売価格は徐々に上がっていくことが予想されています。また特に東京の都心部では高額物件が相次いで分譲されており、これがマーケット全体の価格を引き上げるので、平均価格は上昇する傾向にあります。

 このような状況で、建設を請け負う大手建設会社などはコスト圧縮に向けて様々な企業努力を実施していますが、実際に分譲マンションの施工を手掛ける上で、得手・不得手や実績の違いなどがあるものなのでしょうか。マンションは分譲する会社(=デベロッパー)が主体となって販売するものですから、これまでマンションのブランド名やシリーズごとに供給実績を調査したデベロッパーのランキングは公表されていましたが、マンションを作るゼネコンのランキングは公表されたことがありません。いつものように東京カンテイのデータ協力を得て、施工会社の実績(※)を調べてみることにします。

※調査地域は東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、京都府、愛知県、福岡県、調査期間は2000年~2012年(竣工年ベース) 施工会社が複数(JV)で請け負っている場合は、そのJVを固有の企業体として集計

総合一位は長谷工コーポレーション 二位以下に大差をつける圧倒的な施工実績

順位 施工会社 物件数 総戸数 順位 施工会社 物件数 総戸数
1  長谷工コーポレーション 1,220 196,058 16  西松建設 279 22,336
2  大末建設 472 33,557 17  山田建設 278 10,128
3  東急建設 452 28,222 18  南海辰村建設 276 13,508
4  安藤建設 400 33,059 19  三平建設 272 14,315
5  淺沼組 369 30,022 20  三井住友建設(※) 271 36,011
6  多田建設 362 15,697 21  大林組 266 28,602
7  前田建設工業 360 34,132 22  鴻池組 258 23,686
8  大豊建設 328 20,340 23  鹿島建設 249 33,557
9  竹中工務店 321 32,794 24  東海興業 246 18,548
10  合田工務店 317 12,536 25  フジタ 240 23,591
11  木内建設 312 17,858 26  新井組 240 13,871
12  熊谷組 310 26,111 27  三井建設(※) 237 19,737
13  新日本建設 300 13,308 28  志多組 231 7,668
14  清水建設 288 30,947 29  栗本建設工業 230 9,652
15  松井建設 282 12,972 30  飛島建設 224 11,710

※施工請負時点での社名をそのまま集計しランキングに反映

 表は2000年以降に竣工した分譲マンションを請け負った施工会社のランキングです。一位は長谷工コーポレーションで請け負った物件数は1220件、戸数では196,058戸と約20万戸に迫ります。二位の大末建設が472物件、33,557戸ですから、物件数で約2.5倍、総戸数では5.8倍の大差をつけての圧倒的な施工実績です。

 長谷工コーポレーションは、特に近年では分譲マンションの施工にほぼ特化していること、事業規模が比較的大きく全国的に受注できる体制を整えているという点で、これほどの数を請け負うことができたのだと考えられます。またマンション開発に適した土地をデベロッパーに紹介することで施工を請け負うという独自の業務展開も、施工実績を伸ばすことに貢献していると言えるでしょう。長谷工コーポレーションは分譲マンションの施工を手掛けるだけでなく、自ら売主となって分譲マンション事業も行なうので、分譲マンション開発業務全体についてノウハウを保有し、そのための人材育成を進めていることも、ゼネコン大手でも容易に真似できない大きなアドバンテージとなっているようです。

タワーマンション&免震・制震マンションは竹中工務店ほかスーパーゼネコンが寡占

超高層マンション(20階以上)の施工物件数ランキング(2000年~2012年竣工物件)

順位 施工会社 物件数 物件数 20階未満
20~29階 30~39階 40~49階 50~59階
1  竹中工務店 46 21 13 8 4 275
2  鹿島建設 41 17 13 10 1 208
2  大林組 41 20 12 7 2 225
4  清水建設 38 18 17 3   250
5  長谷工コーポレーション 36 33 3     1184
6  前田建設工業 34 23 11     326
7  大成建設 32 18 7 6 1 173
8  三井住友建設 30 17 12 1   241
9  フジタ 22 15 7     218
10  戸田建設 21 17 3   1 191
11  熊谷組 19 12 6 1   291
11  鴻池組 19 16 3     239
13  奥村組 16 8 8     184
13  淺沼組  16 13 2   1 353
15  五洋建設 13 8 4 1   126
15  錢高組 13 7 3 3   172
17  西松建設 9 6 3     270
17  東急建設 9 7 2     443
19  三井建設 8 6 2     229
20  佐藤工業 6 5 1     105

赤字は各属性最多であることを示す

 特に東日本大震災が発生して以降、地震などの自然災害に強い住まいが求められる傾向が顕著になっており、安心・安全の象徴として、大規模な“防災マンション”が人気を集めています。各階に食料品や応急救命セット、工具などを備えた倉庫を作ったり、公開空地を避難所として活用できるようにしたり、非常用発電機や太陽光発電装置の設置によって非常時の電源を確保しているマンションは、特に「安心・安全」を具体的にアピールできるものとして、各デベロッパーも開発に力を入れています。

 当然、市街地の大規模マンションと言えばタワー型の物件になるので、その施工実績をランキングで示すと、一位は竹中工務店の46物件、二位は鹿島建設と大林組の41物件、四位が清水建設の38物件と、スーパーゼネコンが上位を独占しています。いずれも施工請負件数が200物件を上回る程度ですが、そのうち20%弱がタワーマンションで、やはり高い技術を必要とするタワーマンション開発にはスーパーゼネコンの力が頼りにされていることが一目瞭然です。総合実績で一位の長谷工コーポレーションは、タワーマンションも36物件で五位に入っていますが、全施工実績のうち3%程度で、請け負う割合は少ないと言えるでしょう。

 また、特に40階以上の「超・超高層マンション」になると、上記のスーパーゼネコンのほか、大成建設、戸田建設など僅か11社しか請負実績がありません。これも技術力と開発力が高いレベルで融合している企業が選ばれているという証しです。

免震・制震マンションの施工物件数ランキング(2000年~2012年竣工物件)

順位 施工会社 物件数 物件数 免震・制震率(%) 免震・制震
なし
免震物件 制震物件
1  竹中工務店 38 32 6 11.8 283
2  鹿島建設 35 21 14 14.1 214
3  大林組 25 17 8 9.4 241
4  清水建設 23 8 15 8.0 265
5  前田建設工業 22 20 2 6.1 338
6  大成建設 21 7 14 10.2 184
7  フジタ 20 20   8.3 220
8  三井住友建設 19 6 13 7.0 252
8  長谷工コーポレーション 19 17 2 1.6 1201
10  奥村組 16 14 2 8.0 184
11  熊谷組 13 13   4.2 297
11  戸田建設 13 5 8 6.1 199
13  東急建設 10 9 1 2.2 442
13  淺沼組 10 8 2 2.7 359
13  錢高組 10 5 5 5.4 175
16  三井建設 9 6 3 3.8 228
17  徳倉建設 7 7   9.6 66
18  鴻池組 6 4 2 2.3 252
19  ピーエス三菱 5 5   4.7 101
19  佐藤工業 5 4 1 4.5 106

赤字は各属性最多であることを示す

 免震・制震マンションの開発・施工についてもタワーマンションの施工実績と全く同じことが当てはまります。一位は竹中工務店で38物件、二位は鹿島建設の35物件、三位は大林組の25物件・・・とタワーマンションの施工実績ランキングと顔ぶれも順位も全く同じです。五位以下も前田建設工業や大成建設、フジタなど大手、準大手のゼネコンが名前を連ねており、タワーマンションの開発にはほぼ欠かせなくなってきた免震・制震装置付きの施工においても、技術力と開発力を重視したゼネコン選定がなされているようです。 また、ランキングに登場するゼネコンのうち、竹中工務店、鹿島建設、大林組、前田建設工業、フジタ、長谷工コーポレーションなどは免震マンションの施工実績が多く、清水建設、大成建設、三井住友建設などは制震マンションの施工実績が免震マンション実績を上回っています。なかには免震マンションのみ請け負っているゼネコンもあり、施工会社の特色や受注傾向が浮き彫りになっています。

 なお、全施工物件の中で最も高い割合で免震・制震マンションを請け負っているのは鹿島建設(14.1%)で、7物件に1物件は免震・制震マンションとなっています。2位は竹中工務店の11.8%、3位は大成建設の10.2%で、免震・制震マンションを請け負っている割合が高い企業は、いずれもスーパーゼネコンや大手、準大手であり、高い技術力と実績との相関性が改めて確認できます。

 マンションを購入する際には、施工会社がどこであるかを考慮されるケースは決して多くはありませんが、実際に居住すれば建物のメンテナンスを含め、施工会社の役割と存在は大変大きくなります(維持・管理は管理会社の業務ですが、実際にメンテナンス工事を行なうのは、多くの場合マンション開発を請け負った施工会社です)。 マンションのシリーズ名だけでなく、立地条件や建物の形状を気にする方も増えてきていますから、施工会社がどこであるかということと実際の施工実績から、マンションのハードとしての信頼性を確かめることもできそうです。物件選びの参考に加えると、マンションの見方が違ってくるかもしれません。

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