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2012年8月号

不動産市況や業界動向などの旬な情報を記載したコラムです。

新築マンションの専有面積推移

~東京、大阪、名古屋の新築マンションは年々狭くなっている!?~

新築マンションの平均専有面積は頻繁に変動している

 1991年のバブル崩壊以降、東京23区、大阪市、名古屋市の平均専有面積は拡大し続け、それは2001年頃まで継続しています。この拡大の最大の理由は地価下落です。地価の下落でマンション立地は“都心回帰”し、都市の中心部にシフトしていきましたが、同時に下落していくマンション価格を維持するために専有面積を広くして一戸あたりの価格を大きく下げないという販売手法が採られました。
 2002年以降、地価が長期下落傾向から底ばいに転じ、地価の底入れが近いのではないかと言われるようになると、大阪市や名古屋市では専有面積の拡大傾向は頭打ちとなり、東京23区では投資用物件が数多く供給されるようになったこともあって、専有面積は縮小に転じます。その後、2007年前後に発生した“ミニバブル”による地価上昇期には専有面積が一気に縮小しています。現在、大阪市では70m² をやや下回る程度、名古屋市では80m² 前後で概ね安定し、東京23区では60m² を割り込んで縮小傾向にあります。
 このように新築マンションの専有面積は「70m² 台の3LDK」が供給の中心であることに変わりはないのですが、景気動向や地価の変動によって狭いマンションが増えたり、広いマンションが増えたり、かなり頻繁に変動していることがわかります。

東京23区は50m² 台以下の狭めの住戸が増加

 東京23区では広めの専有面積のマンションが減少し、相対的に狭めの住戸が増加する傾向にあります。特に80m² 台は10年前には12.4%のシェアがありましたが、現在では6.9%に減少、90m² 台も5.1%が1.9%に減少しています。専有面積が広い住戸は主として高級マンションに多いのですが、10年前の都心回帰の時期には湾岸エリアに供給されたタワー型物件に広い住戸が供給されており、価格もさほど高額ではありませんでした。現在、湾岸地域は再開発が進み、人気の高まりとともに価格がやや高くなる傾向にあるため、専有面積の広い住戸は供給しにくい環境にあるようです。
 一方、50m² 台より狭い専有面積帯はシェアが著しく拡大しているのがわかります。特に「コンパクトマンション」と呼ばれる30m² ~50m² 未満の面積帯を見ると、30m² 台では3.4%から6.6%へ、40m² 台は3.2%から8.9%へと約3倍に増加しています。

東京23区 新築マンションの専有面積帯別供給戸数とシェア
  10年前 現在
戸数 シェア(%) 戸数 シェア(%)
20m² 台 9,784 8.6 9,760 14.9
30m² 台 3,929 3.4 4,342 6.6
40m² 台 3,618 3.2 5,829 8.9
50m² 台 13,224 11.6 8,914 13.7
60m² 台 24,763 21.7 12,328 18.9
70m² 台 33,114 29.1 17,228 26.4
80m² 台 14,077 12.4 4,505 6.9
90m² 台 5,795 5.1 1,222 1.9
100m² ~120m² 4,444 3.9 691 1.1
その他 1,150 1.0 475 0.7
合計 113,898 100.0 65,294 100.0

大阪市、名古屋市でも50m² 未満が急増

 大阪市の専有面積帯別戸数シェアを10年前と比較すると、シェアが拡大している専有面積と縮小している専有面積が明確に分かれていることがわかります。まず首都圏同様に50m² 未満のシェアが拡大しており、特に20m² 台は10年前の2.3%から10.4%に4倍強のシェア増加をしているほか、30m² 台も0.5%から3.8%、40m² 台も0.7%から3.9%に拡大しています。一方シェアが縮小しているのが80m² 以上の大きな住戸です。この変化は東京23区と全く同じです。
 名古屋市の専有面積帯別戸数シェアの動きで目立つのは、70m² 台以上の専有面積帯でのシェア縮小で、70m² 台は10年前の39.6%から35.0%と5ポイント近く縮小しています。また、80m² 台でも34.9%から31.6%に、90m² 台も13.7%から11.2%にそれぞれ縮小しています。名古屋市の分譲マンションではこれまで当たり前と思われていた「ファミリータイプの専有面積は80m² 以上」という状況が明らかに変化しています。また、東京23区、大阪市と同様に専有面積50m² 未満の専有面積帯では軒並みシェアが拡大しています。10年前に名古屋市では50m² 未満の新築マンションはほとんどありませんでした。30m² 台で1戸、40m² 台で5戸供給があっただけで、他の面積には供給がゼロです。したがって名古屋市の場合は「50m² 未満の面積帯でも新規分譲が為されるようになった」という点が大きな変化であると言えるでしょう。

大阪市 新築マンションの専有面積帯別供給戸数とシェア
  10年前 現在
戸数 シェア(%) 戸数 シェア(%)
20m² 台 646 2.3 1,722 10.4
30m² 台 156 0.5 628 3.8
40m² 台 192 0.7 642 3.9
50m² 台 2,242 7.8 1,533 9.3
60m² 台 10,285 36.0 4,298 25.9
70m² 台 8,994 31.5 5,077 30.7
80m² 台 4,114 14.4 1,783 10.8
90m² 台 1,201 4.2 553 3.3
100m² ~120m² 567 2.0 221 1.3
その他 193 0.6 107 0.6
合計 28,590 100.0 16,564 100.0
名古屋市 新築マンションの専有面積帯別供給戸数とシェア
  10年前 現在
戸数 シェア(%) 戸数 シェア(%)
20m² 台 0 0.0 326 3.7
30m² 台 1 0.01 55 0.6
40m² 台 5 0.03 162 1.8
50m² 台 63 0.3 200 2.3
60m² 台 863 4.7 764 8.6
70m² 台 7,221 39.6 3,096 35.0
80m² 台 6,368 34.9 2,795 31.6
90m² 台 2,506 13.7 993 11.2
100m² ~120m² 1,077 5.9 374 4.3
その他 144 0.9 82 0.9
合計 18,248 100.0 8,847 100.0

 このような変化を生み出した背景には、「少子化・小世帯化」、「不況の長期化による所得の伸び悩み」が考えられます。特に、少子化は2つ以上の子ども部屋を不要とし、「80m² 台・4LDK」といった広い専有面積の住戸が「広いのは良いが価格が高くなる」という理由で敬遠される動きに繋がっています。さらに景気の低迷により、供給サイドに需要の高い70m² 前後の広さへ供給を集中させる動きが出ています。つまり、より売りやすい住戸の供給が主流となり、広さと間取りの「大胆な企画」が導入しにくい状況にあります。新築マンションに広さ(当然間取りにも影響します)というバリエーションが欠けてくると、これまで供給されてきた専有面積の広い中古マンションに需要が出てくる可能性もあります。
※「10年前」=1999年~2002年6月の3年半  「現在」=2009年~2012年6月の3年半

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