地方都市 県庁所在地とその他の都市の価格動向の違い 2017年9月
今回は最近価格が上昇傾向にあると言われる地方都市、とりわけ再開発や大規模マンション開発などが行われている県庁所在地とその他の都市で、中古マンション価格がどのような変化が生じているのかを、東京カンテイのマンションデータを基に検証していきます。
三大都市圏(首都圏・近畿圏・中部圏)においては2013年以降価格上昇が大きかったものの、2016年以降は価格調整局面入りしたとみられるサインが出ています。地方都市でもこのようなトレンドとなっているのか、また、県庁所在地とその他の都市では価格の動きに違いが出ているのかを詳しく見ていきたいと思います。
北海道、東北地方、北関東地方
北海道は札幌市の中古マンション価格(坪単価)の著しい上昇が2012年以降見られ、特に2014年には前年比+12.9%の上昇を記録していますが、北海道の他の都市では2012年に前年比+9.0%上昇している以外は大きな伸びは見られません。特に2013年、2016年はいずれも前年比マイナスとなっており、2012年以降一本調子で上昇が継続している札幌市とは対照的な動きとなっています。
東北地方(青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県)6県の県庁所在地(青森市、盛岡市、仙台市、秋田市、山形市、福島市)では一部東日本大震災の影響から中古マンションの平均坪単価は2011年から大幅な上昇を示しています。2011年から2015年には5年連続で年率5%を超える上昇率を継続して記録するなど大都市圏と変わらない価格動向となっています。ただ2016年以降伸びの鈍化が見え始め、2017年(1~7月)には+0.9%と明らかに上昇から横ばいへとトレンドの変化が確認できます。また、東北地方のその他の都市では県庁所在地と同様に上昇傾向が見られます。特に2016年にも前年比+7.6%上昇するなど、県庁所在地とそれ以外の都市の価格動向には大きな差は見られません。
北関東地方(茨城県、栃木県、群馬県)3県では県庁所在地(水戸市、宇都宮市、前橋市)の価格の上昇が北海道や東北地方のように連続して起こる状況になかったことがわかります。三大都市圏で価格が高騰していた2013年以降で見ても、2013年、2015年と前年比マイナスになっています。ただし価格の上昇傾向は明確で、2014年には+7.2%、2016年には+7.9%と大きく上昇しています。一方その他の都市では2013年と2016年に前年比下落しているほか、上昇した年も上昇率は高くなく、ここ数年の価格はほぼ変化がない状況と、県庁所在地の価格の動きと明らかな差異が認められます。
中部・北陸地方、中国地方、四国地方
中部・北陸地方(山梨県、長野県、新潟県、富山県、石川県、福井県)6県の県庁所在地(甲府市、長野市、新潟市、富山市、金沢市、福井市)の中古マンション価格は、2013年以降連続して価格の上昇が起こっています。特に2014年~2016年の3年間には年率5%を超える大きな上昇が続きました。この間には北陸新幹線の開通(2015年3月)という大きな経済的イベントがあり、北陸地方の中古マンション価格を押し上げる要因になったと見られます。しかしながら同地方のその他の都市においては価格の上昇は起きていません。2016年は+6.4%上昇と大きな上昇が起こっていますが、2017年には+0.3%とほぼ横ばいとなっていることからも一時的な上昇と見られます。
中国地方(鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県)5県の県庁所在地(鳥取市、松江市、岡山市、広島市、山口市)では中古マンションの平均坪単価は、実に調査を行った2007年以降一度も下落することなく上昇を続けています。この間に大きな上昇を示したのは2013年の+5.3%、2016年の+6.2%で、それ以外の年は1~3%程度の上昇に留まっているものの、確実に上昇を続けています。このような地域は他にはありません。また、中国地方のその他の都市においても2010年以降堅調な上昇が続いています。中国地方では県庁所在地だけでなくその他の都市も継続的な上昇が起こっており、広島県や岡山県など政令指定都市を有する県の動向の影響が色濃く出ていると見られます。
四国地方(徳島県、香川県、愛媛県、高知県)4県では県庁所在地(徳島市、高松市、松山市、高知市)では2013年以降連続して価格の上昇が起こっています。しかし上昇率では1~3%程度の範囲内に収まっており、他の地域で見られる急激な上昇は起こっていません。一方、その他の都市では2013年~2016年まで4年連続で上昇したものの、2017年には-4.2%とやや大きな下落となっており、今年に入って県庁所在地の価格の動きと明らかな差異が生じています。
九州地方、沖縄県
九州地方(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県)7県の県庁所在地(福岡市、佐賀市、長崎市、熊本市、大分市、宮崎市、鹿児島市)の中古マンション価格は、2010年以降連続して価格が上昇しています。特に2016年以降上昇が顕著となり、2016年には+11.7%、2017年には+9.1%と年率10%前後の急上昇が起こっています。これは福岡市の価格上昇が顕著であることの影響と見られますが、2016年以降は熊本市、大分市などでも価格の上昇が見られ、九州全体の価格が強含んでいると考えられます。また、その他の都市においても県庁所在地と同様に2010年以降連続して上昇しており、九州地方においては県庁所在地とその他の都市の垣根がなく、全体的な価格上昇が起こっていると見るべきでしょう。
沖縄県の那覇市では中古マンションの平均坪単価は、2009年以降上昇を続けています。この間に2009年に+11.0%、2016年に+27.1%、2017年に+9.9%の3度の大きな上昇が起こっています。那覇市では「沖縄都市モノレール線(ゆいレール)」が2003年に開通して以来、那覇市を中心にマンション開発が顕著となっていて、近年では高級マンションの供給もあります。比較的グレードの高いマンションからの中古事例が2016年頃から急激に発生するようになり、従来80万円台程度であった坪単価水準が120万円を超える水準まで引き上がったと見られます。また、沖縄県のその他の都市においても2010年以降堅調な上昇が続いています。沖縄県ではリゾート開発が顕著な都市、米軍基地の施設跡地に急速にマンション開発が進んだ都市、人口流入が顕著な離島都市など那覇市以外の都市においても増える人口にマンション供給が追いつかない状態となっていて、価格が自ずと強含みに振れる市場となっていると見られます。
※専有面積30㎡未満の住戸、事務所・店舗用ユニットは集計から除外。
(データ提供:東京カンテイ)