徐々に拡大しているコンパクトマンション市場の現状は?
近年は少子化・晩婚化などの影響で、シングル、DINKSなどの少人数世帯が増加しています。マンション市場を見渡しても、これら少人数世帯の居住ニーズが拡大している状況を踏まえ、1DK~2LDKタイプで交通利便性の高いエリアに供給される物件に人気が出てきているようです。
最近のコンパクトマンションは、もともと広さが限られているため比較的安価に購入できることに加えて、分譲大手が多数参入していることで設備や仕様がグレードアップしており、交通利便性の良好なエリアに立地していることもあって、再び供給が拡大しています。
不動産調査会社 東京カンテイ のデータベースから、 専有面積が 30 平方メートル以上 50 平方メートル未満の住戸データを抽出して「コンパクトマンション」 の市場動向を調べてみました。
首都圏のコンパクトマンション市場は堅調に推移
首都圏の全新築マンション供給戸数はピークの2000年には103,811戸まで拡大しましたが、以降は徐々に減少し、特に2006年からは前年比20%以上の割合で急減し、2009年には38,049戸と4万戸割れの水準となりました。しかし、コンパクトマンションは市況の変化によっても大きな供給変動がありません。むしろ新築全体の供給が急減し始めた2006年以降に増加しており、マンション市場全体が冷え込んだ2009年でも前年比22.5%増の4342戸まで増加しています。2010年もこれまで2750戸の供給実績があり、年間ペースでは昨年を上回る4700戸前後の供給がある見通しです。
一方、新築コンパクトマンションの平均価格は、ミニバブル後の2009年は2,654万円(前年比-7.5%)に下落していますが、2010年に入ってから2,684万円とやや価格を戻しています。
中古コンパクトマンションの流通件数は2008年まで6年連続で増加しています。2009年は前年比20.4%減の33188件となりましたが、それでも2005年を上回る水準は維持されています。2010年にはこれまで23097件の事例が発生しており、年間ペースでは4万件に届く勢いで拡大しています。
一方の平均価格は2007年の1,235万円をピークに2009年は前年比-5.8%の1,161万円に下落しましたが、2010年は+3.6%の1,203万円と、新築と同じように上昇しています。
近畿圏のコンパクトマンションも、新築・中古流通ともに市場が拡大傾向
近畿圏のコンパクトマンションは大阪市、京都市、神戸市の市街地中心部に集中しており、首都圏ほどは市場規模は大きくありません。とはいえ、近畿圏でも首都圏同様に新築マンション供給戸数の減少傾向が続いているのに対し、コンパクトマンションは2006年以降順調に供給を拡大しています。2010年も既に直近のピークを超える947戸の供給実績があり、近畿圏でもコンパクトマンションの市場は着実に成長しているようです。
平均価格は2009年には前年比-7.0%の2,367万円に下落しましたが、2010年は首都圏の動きと同様で、+2.2%の2,419万円にやや上昇しています。
中古コンパクトマンションの流通件数は、2004年から6年連続で増加しており、特に2009年は前年比24.2%増の6633件と2008年を大きく上回りました。2010年も既に4352件の売事例が発生しており、年間では8000件弱まで増加する見込みです。
ただし、平均価格は2005年を底に2009年の845万円まで4年連続で上昇していましたが、2010年は747万円まで下落しています。流通件数は拡大していますが、景況感が思わしくない中で近畿圏のマンション市場では価格が軟調に推移していますから、コンパクトマンションも例外ではないようです。
データで考察する限り、コンパクトマンション市場は首都圏、近畿圏ともに拡大基調にあるようです。これは、ミニバブルを経て高額なマンションが売れなくなったことや、地価が下落して都心・準都心など交通利便性の良いエリアにコンパクトなマンションが販売しやすくなったことが影響しています。一方、購入者サイドも“永住志向”で郊外に広めのマンションを買って生活するよりは、現在のライフステージに合わせてマンションを購入し、結婚や出産などでライフステージが変わったら売却しても賃貸に出しても良い資産性の高い物件を求める傾向が強くなっていますから、このような志向に合うコンパクトマンションの供給や流通が拡大するのは当然のことと言えるでしょう。
マンショントレンドは、概ね10年くらいのスパンで徐々に変化していきます。“少子・高齢化”が進むなかで、どのようなマンションへの居住ニーズが拡大するのかが資産価値にも比較的大きな影響を与えます。マンションは購入より売却が難しいと言われますが、先々のビジョンを持つことで“出口戦略”が見えてくるのかも知れません。
※データ提供:東京カンテイ