首都圏 地域別の中古マンション流通物件数シェアランキング発表
~都県ごとに流通件数の多い地域の変遷を見ると・・・
最近、新築マンションの地域偏在=新規供給エリア都心やその周辺の事業集積地に限られているという現象が中古マンションの流通にも影響しているのではないかという指摘があります。実際に中古マンション市場で流通している件数に地域的な偏りがあるのかを、いつものように東京カンテイのデータ協力を得て、中古マンションの流通事例数を地域ごとにシェア比較しました。2001年、2006年、2011年と2012年のランキングがどのような顔ぶれになっているのかを調査して、マンション流通の地域的な変化が見られるか確かめてみましょう。
東京都:都下が消滅、都心寄りの地域に事例が集中する傾向
2001年には八王子市が4.46%で5位に入っていましたが、2006年には東京23区以外の行政区が姿を消しました。同市を含め都下の行政区は2006年以降姿を見せなくなっています。また2006年の時点では首位だった世田谷区が5年後の2011年には2位に後退し、徐々に順位を上げていた港区が1位となっています。2006年以降新宿区や渋谷区など都心部の区が上位に定着していることから、東京都では2006年頃にはすでに中古マンション流通が都心部に集中する傾向となっていたことがわかります。しかし、2011年と2012年のベスト10の顔ぶれにはほとんど変化がないことから、都心集中傾向が継続しているようです。
東京都 中古マンション流通事例数シェアランキング (単位:%)
2001年 | 2006年 | 2011年 | 2012年 | ||||||||
1 | 世田谷区 | 7.76 | 1 | 世田谷区 | 7.64 | 1 | 港区 | 8.29 | 1 | 港区 | 7.47 |
2 | 大田区 | 5.53 | 2 | 港区 | 6.37 | 2 | 世田谷区 | 6.91 | 2 | 世田谷区 | 7.32 |
3 | 港区 | 5.47 | 3 | 新宿区 | 5.33 | 3 | 新宿区 | 5.99 | 3 | 新宿区 | 5.63 |
4 | 江東区 | 4.87 | 4 | 大田区 | 4.94 | 4 | 大田区 | 4.95 | 4 | 江東区 | 5.55 |
5 | 八王子市 | 4.46 | 5 | 板橋区 | 4.88 | 5 | 江東区 | 4.90 | 5 | 大田区 | 5.39 |
6 | 新宿区 | 4.44 | 6 | 渋谷区 | 4.80 | 6 | 渋谷区 | 4.85 | 6 | 渋谷区 | 4.60 |
7 | 品川区 | 4.26 | 7 | 杉並区 | 4.60 | 7 | 板橋区 | 4.27 | 7 | 板橋区 | 4.37 |
8 | 板橋区 | 4.09 | 8 | 練馬区 | 4.28 | 8 | 品川区 | 4.08 | 8 | 品川区 | 4.17 |
9 | 練馬区 | 3.94 | 9 | 江東区 | 3.99 | 9 | 足立区 | 3.81 | 9 | 足立区 | 3.93 |
10 | 渋谷区 | 3.89 | 10 | 足立区 | 3.97 | 10 | 中央区 | 3.73 | 10 | 杉並区 | 3.61 |
神奈川県:川崎市宮前区、横浜市青葉区の件数減少
神奈川県には順位を大きく下げている行政区があります。2001年と2006年に1位だった川崎市宮前区は2011年と2012年は7位に後退し、シェアも5%台から3%台半ばまで縮小しています。同様に横浜市青葉区も2001年には2位でシェアも4.92%でしたが、2006年には5位にダウンし、シェアも3.79%まで低下して2011年と2012年には8位となっています。
一方で順位を上げているのが横浜市の港北区と中区です。港北区は港北ニュータウンから豊富な中古マンション事例が発生しており、住環境の良さも評価され2011年(5.42%)と2012年(5.56%)には1位をキープしシェアも上昇しています。また、中区は横浜駅がある西区に隣接し、県庁と市役所がある県行政の中心であると同時に、中華街や山下公園など、横浜を代表する人気スポットがあるエリアです。中区は2001年にはベスト10圏外でしたが、2006年には7位(3.50%)、2011年2位(4.99%)、2012年も2位(4.96%)を維持しました。中区のシェア拡大には、みなとみらい線の開業によって元町周辺にマンション開発が多数行われていることも影響しています。
神奈川県 中古マンション流通事例数シェアランキング (単位:%)
2001年 | 2006年 | 2011年 | 2012年 | ||||||||
1 | 川崎市宮前区 | 5.77 | 1 | 川崎市宮前区 | 5.24 | 1 | 横浜市港北区 | 5.42 | 1 | 横浜市港北区 | 5.56 |
2 | 横浜市青葉区 | 4.92 | 2 | 横浜市港北区 | 4.78 | 2 | 横浜市中区 | 4.99 | 2 | 横浜市中区 | 4.96 |
3 | 横浜市港北区 | 4.82 | 3 | 横浜市鶴見区 | 4.25 | 3 | 横浜市鶴見区 | 4.36 | 3 | 横浜市鶴見区 | 4.76 |
4 | 藤沢市 | 4.14 | 4 | 横浜市南区 | 3.87 | 4 | 藤沢市 | 4.12 | 4 | 横浜市神奈川区 | 4.17 |
5 | 横浜市戸塚区 | 3.71 | 5 | 横浜市青葉区 | 3.79 | 5 | 横浜市神奈川区 | 4.00 | 5 | 横浜市南区 | 3.93 |
6 | 横浜市鶴見区 | 3.54 | 6 | 横浜市神奈川区 | 3.79 | 6 | 横浜市南区 | 3.83 | 6 | 藤沢市 | 3.91 |
7 | 横浜市港南区 | 3.33 | 7 | 横浜市中区 | 3.50 | 7 | 川崎市宮前区 | 3.68 | 7 | 川崎市宮前区 | 3.83 |
8 | 横浜市金沢区 | 3.19 | 8 | 横浜市戸塚区 | 3.49 | 8 | 横浜市青葉区 | 3.44 | 8 | 横浜市青葉区 | 3.48 |
9 | 横浜市都筑区 | 3.02 | 9 | 横浜市磯子区 | 3.46 | 9 | 横須賀市 | 3.34 | 9 | 横須賀市 | 3.43 |
10 | 横浜市神奈川区 | 2.99 | 10 | 藤沢市 | 3.33 | 10 | 川崎市高津区 | 3.15 | 10 | 川崎市川崎区 | 3.29 |
千葉県:上位6位は不動 最も動きの少ない県
千葉県のランキングを見ると変動が極めて小さいのがわかります。順位は変わっても、上位6位の顔ぶれは2001年から2012年まで全く変わりません。2001年にはリゾート物件の多い勝浦市や千葉ニュータウンのある白井市がランキングに登場していましたが、以降は姿を消し、やや硬直感すらあります。特筆すべきは船橋市のシェアの高さと安定感です。表出した4年ではいずれも1位で、シェアもコンスタントに15%前後を維持しており、2位を寄せ付けない強さを誇っています。千葉県は総じて東京への交通利便性の高い地域のシェアが高くなっており、千葉市ではなく東京寄りの都市への集中が顕著です。これは今も昔も変わらないようです。
千葉県 中古マンション流通事例数シェアランキング (単位:%)
2001年 | 2006年 | 2011年 | 2012年 | ||||||||
1 | 船橋市 | 12.92 | 1 | 船橋市 | 15.93 | 1 | 船橋市 | 14.73 | 1 | 船橋市 | 14.27 |
2 | 松戸市 | 11.35 | 2 | 市川市 | 10.66 | 2 | 松戸市 | 11.27 | 2 | 市川市 | 11.29 |
3 | 市川市 | 8.69 | 3 | 松戸市 | 10.59 | 3 | 市川市 | 9.75 | 3 | 松戸市 | 10.16 |
4 | 千葉市美浜区 | 7.46 | 4 | 千葉市美浜区 | 7.04 | 4 | 千葉市美浜区 | 9.32 | 4 | 千葉市美浜区 | 9.43 |
5 | 浦安市 | 5.55 | 5 | 柏市 | 5.55 | 5 | 柏市 | 6.56 | 5 | 柏市 | 6.33 |
6 | 柏市 | 4.72 | 6 | 浦安市 | 4.46 | 6 | 浦安市 | 4.32 | 6 | 浦安市 | 4.88 |
7 | 千葉市稲毛区 | 4.26 | 7 | 習志野市 | 4.42 | 7 | 千葉市中央区 | 4.17 | 7 | 千葉市中央区 | 4.26 |
8 | 勝浦市 | 3.85 | 8 | 千葉市中央区 | 4.40 | 8 | 千葉市稲毛区 | 3.74 | 8 | 千葉市稲毛区 | 3.66 |
9 | 白井市 | 3.53 | 9 | 千葉市花見川区 | 4.24 | 9 | 千葉市花見川区 | 3.58 | 9 | 千葉市花見川区 | 3.32 |
10 | 千葉市中央区 | 3.44 | 10 | 千葉市稲毛区 | 3.77 | 10 | 八千代市 | 3.21 | 10 | 習志野市 | 3.23 |
埼玉県:川口市が例年10%超のシェアを維持 変化はほとんどなし
埼玉県では川口市の流通シェアが群を抜いて高く、しかもシェアの上昇が顕著です。川口市は東京都隣接という立地条件の良さから、新築マンションの供給も多い地域です。埼玉県では最もマンション供給に適したところと言えるでしょう。毎年コンスタントに新規分譲が行われているため、中古マンションの流通件数も圧倒的です。また、川口市との差はあるものの、所沢市も2006年以降2位をキープしており、この両市が埼玉県の中古流通数の20%程度を占めている状況が続いています。さいたま市では南区が常に上位にランクされていますが、2011年と2012年には7位に浦和区がランクインし、近年流通件数が増加傾向にあることがわかります。両地域とも浦和駅周辺のマンション適地で、今後もランキングの常連になりそうです。
埼玉県 中古マンション流通事例数シェアランキング (単位:%)
2001年 | 2006年 | 2011年 | 2012年 | ||||||||
1 | 川口市 | 12.17 | 1 | 川口市 | 13.63 | 1 | 川口市 | 14.97 | 1 | 川口市 | 15.62 |
2 | さいたま市南区 | 6.31 | 2 | 所沢市 | 6.51 | 2 | 所沢市 | 6.93 | 2 | 所沢市 | 5.59 |
3 | 所沢市 | 5.34 | 3 | 川越市 | 4.95 | 3 | 越谷市 | 5.29 | 3 | さいたま市南区 | 4.65 |
4 | 三郷市 | 5.08 | 4 | 越谷市 | 4.64 | 4 | さいたま市南区 | 4.84 | 4 | 越谷市 | 4.61 |
5 | 越谷市 | 4.85 | 5 | さいたま市南区 | 4.34 | 5 | 川越市 | 4.77 | 5 | 川越市 | 4.55 |
6 | 川越市 | 4.15 | 6 | 草加市 | 3.77 | 6 | 草加市 | 4.29 | 6 | 草加市 | 4.49 |
7 | 春日部市 | 4.05 | 7 | 春日部市 | 3.54 | 7 | さいたま市浦和区 | 3.75 | 7 | さいたま市浦和区 | 4.34 |
8 | 入間市 | 4.00 | 8 | 入間市 | 3.34 | 8 | 戸田市 | 3.12 | 8 | 入間市 | 3.14 |
9 | 狭山市 | 3.87 | 9 | 狭山市 | 3.28 | 9 | 入間市 | 3.09 | 9 | 春日部市 | 3.08 |
10 | 草加市 | 3.62 | 10 | 朝霞市 | 3.13 | 10 | 春日部市 | 3.03 | 10 | 戸田市 | 3.04 |
地域ごとに中古マンション流通シェアの変遷を見ると、川口市に代表されるように新築マンションがコンスタントに供給され、市場が活性化しているエリアに中古物件の流通も集中し、マンション供給適地として固定化している状況が窺えます。新築マンションの供給動向に合わせて、東京都では都心とその周辺に、神奈川県では横浜市中心部に、千葉県、埼玉県では東京都心部へのアクセスが良好な都市に各々集中するといった違いも表れています。今後のランキングも新築マンションの供給次第で変化していくことになるでしょう。
※データ提供:東京カンテイ