築浅の中古マンション価格が上昇してきた。2010年から価格上昇に?
最近中古マンションの価格が上昇していると思いませんか?もちろんすべての地域ではありませんが、立地の良い物件や価格に値頃感が出てきたエリアでの物件の売買が活発になり、なかには流通価格が上昇する物件も見られます。そこで今回は、
【1】築10年以内の築浅の中古マンションを調査対象に、
【2】1年前の価格と比べ10%以上上昇した物件、0~10%上昇した物件、下落した物件のシェアがどのように変化したのかを、
【3】2010年(1~5月)と2009年を比較してみました。
これによって、価格下落をした物件がどの程度減少したのか、上昇している物件がエリア別にどの程度増えているのかわかるはずです。これらのデータは、不動産データベースの東京カンテイの協力を得て掲載しています。
首都圏では10%超上昇した物件が昨年の3倍に、0~10%上昇した物件は2倍に
そのぶん価格が上昇した物件が増加したわけですが、うち、0~10%上昇した物件のシェアは2010年(1~5月)には31.2%と前年の17.3%から13.9ポイント増加しています。さらに10%超上昇した物件のシェアは、2010年(1~5月)は9.5%と、前年の3.3%から約3倍に増加したことがわかります。
エリア別に見ると東京都の都心部ほど“価格回復”ぶりが大きいことがわかります。都心6区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区)では下落物件のシェアが83.5%から57.6%と大きく減少していますし、10%超上昇した物件シェアも2.5%から10.4%と4倍に増加しています。また「苦戦」が伝えられている都下や千葉県、埼玉県でも順調に回復している結果となっています。このデータで気を付けなければいけない点は、下落した物件のシェアが50%を下回らなければ市場全体のトレンドは“上昇に転じた”とは言えないということです。価格が上昇している物件の数が下落している物件の数を上回ってこそ、本格的な回復ですし、客観的に「価格が上昇している」という状況になるのだということです。今後どのタイミングで下落物件のシェアが50%を下回るのか、大いに注目しましょう。
近畿圏は一部の地域で回復基調に、中部圏は変化なし
近畿圏平均を見ると、価格が下落した物件のシェアは2009年の76.6%から2010年(1~5月)は68.2%に8.4ポイント減少しています。首都圏平均の20.1ポイント減少と比較すると勢いは弱いですが、確実に価格の下落している物件の数は減少していると言えるでしょう。ただし、その内訳を見ると、大阪府、兵庫県、京都府の3府県では、その“回復”ぶりが明らかなのに対し、奈良県ではほぼ変化なし、滋賀県では依然下落物件のシェアが上昇し価格下落が続いている状況です。
価格下落物件のシェアが減少している傾向は、一部の地域に限定されていて、近畿圏全体に波及していません。これが全地域で下落物件のシェアが減少している首都圏とは異なる点です。なお和歌山県は、流通事例数が少なく厳密な比較ができないため割愛しました。
また、中部圏を見ると、中部圏平均で下落物件のシェアは2009年の72.0%から2010年(1~5月)の71.4%と、ほとんど変化が認められません。中部圏のうち愛知県は下落物件のシェアが減少する傾向にありますが(2009年:73.0%→2010年:69.9%)、わずか3.1ポイントの変化に留まっており、首都圏のような大きな改善は見られません。他の3県では三重県が変化なし、岐阜県と静岡県は下落物件のシェアが拡大しています。中部圏の価格下落傾向の改善は、愛知県に限定された動きであるといって良いでしょう。全圏域に波及するにはまだ時間がかかりそうです。
トレンドの転換期には、確かな目と確かな情報が必要
以上見てきたように、中古マンションはまだ価格が「上昇に転じた」とは言い切れない状況にあるようです。価格が上昇に転じるには少なくとも価格が下落した物件が50%を下回らなければならないからです。ただし市況はエリアによって比較的その違いが大きく、首都圏では2009年には約80%の物件が下落していた状況にあったのが、わずか1年で、つまり2010年(1~5月)では60%を切る水準まで減少しています。都心6区では83.5%が57.6%に減少しています。このことから、価格の回復トレンドが本格的なものであることがわかります。この傾向は前年比10%超上昇した物件シェアが、大都市の中心エリアで急増していることからもわかります。今後、中古マンション価格はさらに回復が進むものと見て良いでしょう。
その一方で、近畿圏では回復基調にあるのは大阪府、兵庫県、京都府の3府県のみです。中部圏は、愛知県にようやく僅かな回復の兆しが見えるといった状況です。このような地域の市況の違いはトレンドの変化の時期には常に見られる現象です。
今回のデータは上昇・下落物件の数をシェアで見たものです。上昇している物件、下落を続ける物件の個々の動向は、流通事例のデータを細かく見なければわかりませんから、実際に物件を購入する際には情報を多角的に見ることが不可欠になっています。トレンドの転換期こそ確かな目と確かな情報が必要です。
※東京都の地域区分
都心6区(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、渋谷区)
南西6区(品川区、大田区、目黒区、世田谷区、中野区、杉並区)
北東11区(台東区、墨田区、江東区、豊島区、北区、荒川区、足立区、板橋区、練馬区、葛飾区、江戸川区)
都下(東京都市町部、島嶼を除く)
※データ提供:東京カンテイ