中古マンションのリセールバリューって何で決まるの?【近畿圏・中部圏編】
前回の首都圏編に続き、近畿圏と中部圏でもマンションのリセールバリューを検証しておきましょう。マンション居住に対するニーズの違いで、同じ属性でも地域特性が異なる場合があります。なお今回のリセールバリューも新築分譲時の価格を100として、中古流通時の価格の割合(価格維持率)を算出しています。また、データは2000年11月から2001年10月の1年間に新規分譲されたマンションの2010年11月から2011年10月に市場流通した中古価格を基にしています。データは全て東京カンテイ の協力を得ています。
まず築10年マンションの圏域平均リセールバリューを比較してみましょう。前回ご紹介した首都圏の平均値は91.9%でしたが、近畿圏平均はそれよりさらに約1割低い80.1%、中部圏平均は近畿圏より僅かに高い81.6%でした。首都圏の分譲マンションは築10年で新築分譲時価格から1割弱の価格下落が発生するのが一般的ということですが、近畿圏と中部圏では平均で2割程度下落しています。首都圏では、交通と生活の利便性がバランス良く整っている地域=都心とその周辺部ではほとんどマンション居住しか想定できないのに対して、近畿圏と中部圏では戸建住宅も選択余地があるので、首都圏と比較すると相対的にマンションのリセールバリューが低くなるという傾向があるようです。またマンションが毎年コンスタントに分譲される人気エリアが、吉祥寺、横浜、自由が丘、恵比寿など首都圏には数多くあるのに対して、近畿圏や中部圏では“マンションエリア”は一般の住宅地でもあり、マンションに特化しているような地域がほとんど見当たらない、という違いもありますから、こういった地域特性を踏まえた上でマンションの属性の違いによる資産価値をチェックする必要があります。では、首都圏と同じ属性について分析・検証していきます。
①マンションの狭域立地条件=最寄駅からの所要時間別リセールバリュー
最寄駅から近いか離れているかという属性は、近畿圏と中部圏でも、程度の違いこそあれ首都圏と似たような傾向が示されていて、全体的には駅に近い物件ほどリセールバリューが高いことが明確に表れています。ただし、近畿圏では徒歩6分以内の物件において価格優位性が高いのに対して、中部圏では徒歩15分くらいまでは平均値か平均値を上回る数値を示しています。これはまさしく地域性の違いで、近畿圏ではJR線を除く私鉄、地下鉄などの駅の駅間が短いため、駅近物件の割合が相対的に高いのです。したがって最寄駅から7分以上離れると“ちょっと遠い”という感覚のようです。近畿圏では徒歩21分以上の物件が今回の集計には表れないことも駅に近い物件が多いことを物語っています。反対に中部圏では名古屋市中心部を除けば駅間が近畿圏よりも長く“駅勢圏”も広くなりますから、最寄駅までのアクセスが徒歩10分超でもリセールバリューに大きな違いがないのです。しかし徒歩16分を超えるかバス便になると、いずれもリセールバリューは70%台前半まで低下します。
②マンションの広さ=専有面積帯別リセールバリュー
次は住戸の広さによる違いです。これは地域特性が比較的大きく表れていて、近畿圏はマンションの専有面積でファミリータイプといえば首都圏と同様70m² 前後の住戸ですが、中部圏では80~90m² 程度の住戸が一般的で100m² を超えるものも珍しくありませんから、これらの特性がはっきり示される結果となっています。近畿圏では首都圏とほぼ同様の傾向を示しており、やや狭い50m² 台の住戸とやや広い80m² 台の住戸のリセールバリューが良好ですが、90m² を超えるとグロスの価格が上昇するため数値が低下します。また、30m² 台も数値は70%程度です。さらに30m² 未満のワンルームタイプとなると、首都圏と同じく10年で約4割資産価値が低下するので注意が必要です。一方中部圏では、まず60m² 未満の住戸がサンプルとして集計できません。その中でリセールバリューが高いのは60m² 台の103.4%でした。これは中部圏では数が少ないにも関わらず、近年小人数世帯が増加していてニーズが高いこと、立地が中心部よりでディンクスに人気が高いことなどが挙げられます。また近畿圏とは正反対に90m² 超の住戸のリセールバリューが良好な水準を維持しています。マンションの広さは地域特性を表わす鏡のような属性なのだということがこのデータからよくわかります。
③マンションの大きさ=戸数規模別リセールバリュー
最後に戸数規模別のデータを検証します。これも地域特性がよく表れていて、これまで“100戸を超えると大型マンション”と言われていた中部圏では、150戸以上と300戸以上にはデータがありません。近年ようやく大規模化が進んできましたから、今後中部圏の大規模マンションの資産性も徐々に変化していくものと考えられます。中部圏では100戸以上の戸数規模の物件のリセールバリューが87.2%と一番高く、規模が小さくなるに連れて数値が低下しますが、この傾向は近畿圏でも同じです。近畿圏では総戸数200戸を超える規模のマンションのリセールバリューが高く、200戸未満では概ね70%台後半に留まっています。首都圏の傾向と似ていて大きい物件になればなるほど人気が高く、それに応じてリセールバリューも高く保たれるという結果が示されています。住戸タイプのバリエーションが豊富で共用施設も充実している物件が多く、管理費などもスケールメリットが活かされて相対的に割安になる傾向がありますから、何かと便利で生活コストも低く抑えられる可能性が高い大規模マンションは、当面の間、一定のニーズを維持するものと考えられます。
近畿圏と中部圏の築10年中古マンションを対象として、代表的な属性ごとにリセールバリューを検証すると、地域特性が浮き彫りになる属性と圏域に関わらず共通の傾向を示す属性があることがわかります。つまり汎地域性の高い属性、今回は「最寄駅からの所要時間別」がこれに該当しますが、このような属性はマンションの資産価値を検証する上で特に重視してもらいたいものです。駅に近くて通勤・通学、日常の買い物などに便利であるという属性はまさしく立地条件そのものですから、立地条件の良し悪しが資産性にも大きな影響があるということを理解して、物件選びの参考にして欲しいと思います。安心・安全も震災後には重要な要素ですが、日常の利便性も疎かにできない要素なのです。
※データ提供:東京カンテイ