中古マンションの市場規模の動向 2016年12月
~中古マンションマーケットは今後も拡大が期待される~
12月の記事では全国の中古マンションの市場規模について過去10年間の推移からその変化を分析してみましょう。
集計期間は2007年1月~2016年11月までの10年間に中古流通した中古マンション戸数(売事例)と価格を掛け合わせて市場規模を圏域ごとに集計。中古マンション市場がどの程度の規模を持っているのか、今回も東京カンテイのデータを使って見てみましょう。
【集計の方法】
集計対象:中古マンション 市場規模は便宜的に〈売り希望価格×売り事例数〉で算出
集計期間:2007年1月~2016年11月の10年間(中古データはすべて売事例)
単位:売り事例数=件数 市場規模=兆円
1.全国の市場規模
全国の中古マンションの市場規模は2007年には9.42兆円でしたが、2016年1~11月の集計で既に倍程度の市場規模に拡大していることがわかります。ピークは東日本大震災の翌年2012年の19.89兆円ですが、2013年以降の中古マンション価格上昇の影響で流通事例数が減少したため、一度市場規模は縮小しました。しかし2015年以降は価格が高止まりを示している環境下でも市場規模は拡大しており2016年は11月までの事例数から換算すると概ね75万件と前年を上回ると見られます。市場規模は17.53兆円→18.71兆円と拡大しているのがわかります。中古マンション価格が上昇すると事例数が減少するので(2013年~2014年の例)市場規模はむしろ縮小するのですが、近年では新築マンションの価格も大きく上昇している上に、新規分譲戸数が大きく減少しているため、中古市場が新築市場の受け皿となっており流通事例数に大きな変化が出なくなっています。
2.首都圏の市場規模
全国の中で首都圏の占める位置の高さは市場規模の比較からも明らかです。2016年の全国の市場規模は前述の通り18.71兆円ですが、そのうち首都圏(1都3県)は1月~11月の集計ながら12.83兆円で、全国に占める割合は68.6%と約3分の2の規模となっています。規模自体も拡大傾向であり、年換算では14兆円に届く勢いで、2012年(13.84兆円)の直近のピークを超え、過去最高の市場規模となることはほぼ間違いありません。事例数が2012年の478,752件と比べると2016年の約40万件(年換算)は-16.4%と減少しているにもかかわらず、市場規模が拡大している理由は単に価格上昇だけでなく
①高額な物件の取引件数の増加
②大都市中心部など高額物件の集中するエリアの件数増加
③低額物件の事例減少
などの要因が挙げられます。立地条件が良く高額な物件は価格が上昇しても取引が活発に行われている一方で、極端に築年が古くなった物件や耐震性などの問題で低額となった物件、リゾートエリアで見られるほとんど流通しない物件は近年中古市場でも取り扱われなくなってきており、空き家問題に直結するなど社会問題化する可能性があると考えます。
3.近畿圏の市場規模
近畿圏(2府4県)の2016年の市場規模は2.94兆円で全国比で15.7%を占めています。近畿圏には全国のマンションストック数(2015年末時点)の21.4%が集まっていることを考えると、中古流通件数20.3%と少なく、決して流通が盛んであるとは言い難い状況です。ただ、市場規模は確実に拡大しており2016年は11月までの集計値2.94兆円と、既に2015年の規模2.84兆円を上回っています。年換算では3.21兆円程度となる見込みで、首都圏と同様に2012年の3.12兆円を超え過去最高の市場規模となるとみられます。
4.中部圏の市場規模
全国のマンションストックの7.0%が集中する中部圏(4県)では2016年には60,091件の流通事例が発生していますが、これは全国比では8.7%にあたり、近畿圏とは異なり中部圏は中古流通が盛んな圏域であることがわかります。マンションから一戸建てへの買い換えが多く、「終の棲家は一戸建て」という意識の高い中部圏の特徴が表れています。市場規模は他の圏域同様に拡大傾向であることは変わりがなく、2016年は11月までで0.98兆円となっており年間では1.07兆円程度に達すると見られます。事例数自体は減少しているので2012年の1.13兆円を超えるのは難しい状況ですが、市場規模自体は確実に拡大を続けていると見てよいでしょう。
全国の中古マンションの市場規模は2016年末には20.41兆円と20兆円をはじめて超えることが確実とみられます。このような大きな市場規模を持っている市場には、リフォーム技術の飛躍的な向上やリノベーションという新たな技術の登場などでさらに拡大していくことが期待されています。中古住宅ストックの有効活用が国の住宅政策の中心であることを考えますと、中古マンションの市場は将来的に見ても、より潤沢な物件が売り買いされるような“活性化”が期待できると考えます。
※データ提供:東京カンテイ