新築マンションのお買い時感は強まっているの?
アベノミクスによって景気浮揚感が高まったことやデフレ脱却への期待から金利先高感が強まったこと、さらに消費税や相続税の増税を控えていたことなどもあって、実需・投資の両面でマンション購入のニーズが喚起された結果、2013年の新築マンション市場では販売価格・供給戸数ともに前年比プラスで推移していました。2014年4月以降は消費増税前の駆け込み需要による反動減が供給戸数で見られていますが、売れ行き自体は好調を維持しているようです。建設コストの高騰によって今後の新築マンション価格はさらに上昇する可能性が高いと見込まれていますし、住宅ローン金利も依然として超低水準で推移している今は、まさに“お買い時”であると捉えることができます。一方で、東京カンテイ が毎年公表している「マンションの買いやすさ」を表す指標の『マンション価格の年収倍率』を見ると、ミニバブル以降も新築マンション価格が高止まりで推移しているために、年収見合いではやや買いにくくなってきていると判断することもできそうです。そこで今回は、過去の「マンションの買いやすさ」がどうなっていたのかを振り返って、中長期での平均的な水準に比べてマンション価格が給与所得に対して高騰しすぎているのか、あるいは妥当な範囲内であるのかについて見ていきましょう。
(1)首都圏 主要エリア 新築マンション価格の年収倍率推移
首都圏 主要エリア 新築マンション価格の年収倍率
首都圏で新築マンション価格の年収倍率がピークを迎えていたのは1989年~1990年で、東京都では新築価格(70m² 換算)が1億円超という高額であったことから、年収倍率は18.12倍という極めて高い値を記録していました。神奈川県をはじめ周辺3県でも10倍を超えていましたので、“90年代バブル期”の新築マンションが一次取得者である一般勤労者の所得水準から如何にかけ離れていたのかがわかります。2013年時点での年収倍率と直近20年間での平均年収倍率をそれぞれ比べてみると、いずれも2013年時点の方が1~2ポイント程度上回っており、さらに周辺3県ではミニバブル期よりも高い値となっています。
(2)近畿圏&中部圏 主要エリア 新築マンション価格の年収倍率推移
近畿圏&中部圏 主要エリア 新築マンション価格の年収倍率
近畿圏と中部圏でも推移を見てみると、年収倍率のピークは1990年となっていますし、その中でも京都府は18.36倍と突出しており、前述の東京都をも上回る値を記録していました。大阪府や兵庫県では概ね14倍で、首都圏と同じく近畿圏でもこの時期に新築マンション価格と一般勤労者の平均年収との間には大きな隔たりが生じていたと言えます。愛知県でも1990年に年収倍率のピークを迎えていましたが、その値は8.76倍と10倍に達しておらず、三大都市圏の主要エリアの中では比較的低い水準に留まっていました。
各主要エリアにおける2013年時点での年収倍率はそれぞれ“90年代バブル期”のピークを下回っていますが、直近20年間での平均年収倍率と比べると、京都府では2ポイント強、それ以外のエリアでは0.5~1.5ポイント程度上回っています。
巷間では「住宅価格の年収倍率は5倍前後が適正である」とも言われていますが、今回の中長期的な推移を見る限りでは、例えば東京都で8.41倍、大阪府で6.19倍など、標準的な年収倍率は一律ではなく各エリアによってそれぞれ固有の水準を有しているため、仮に東京都で5倍前後まで新築価格が下がることを待っていても一向に購入することは叶わないでしょう。直近の年収倍率はいずれの主要エリアでも平均年収倍率から上振れる傾向にあり、現時点では大きく逸脱しているとまでは言えませんが、新築マンション価格が年収見合いでかなり高騰していることは事実のようです。したがって、新築マンションの購入を検討する際には販売価格や住宅ローン金利の動向に注視することも重要ですが、さらに所得に対する負担について考慮する必要性も高まってきています。
※データ提供:東京カンテイ