面積単価で比較する 東京23区、大阪市、名古屋市の新築vs中古マンション価格
~2005年以降、ミニバブルを経てマンション価格は高止まり!?・・・
2014年4月から消費税率が8%に引き上げられ、高額消費の筆頭である住宅・マンション購入にも“腰折れ懸念”が広がって、市況に悪い影響を及ぼすと言われています。参考までに消費者物価指数(消費者物価指数の品目には家賃は入っていますが、住宅価格は対象外です)の2014年4月分を見ると、総合で+3.4%となっており、少なくとも小売される日用生活品の類は消費増税分値上がりして、表面上は消費税の影響がわからなくなっています。影響があったかなかったかを判断するには、しばらく時間が掛かりそうです。
そこで、今回は、新築マンションの供給と中古マンションの流通が集中している三大都市圏の中心部に的を絞って、価格がこれまでどのように推移してきたのかを検証してみました。
2007年~2008年にはミニバブル、翌2009年にはリーマン・ショックによる市況の急変を経験し、2013年以降はアベノミクスの影響で追い風を受けていると言われるマンション市場ですが、消費増税という大きな経済イベントの前後で実際に市場価格が変化しているのか、東京カンテイの月次データを基に確認します。比較するのは毎月新たにに分譲される新築マンションの価格(以下、新築価格)と、同じ月に流通する築10年を経た中古マンションの価格(以下、中古価格)です。なお、新築マンションの価格は毎月の価格変動が比較的大きいので、見やすくするために3ヵ月の移動平均を用いています。
東京23区:新築マンションは2007年のミニバブル期よりも高値水準に
東京23区の新築マンションと築10年中古マンションの価格推移を比較すると、4つの特徴的な動きがあることがわかります。
(1)新築価格と中古価格は概ね連動していること、
(2)新築価格は中古価格よりも変化(動き出し)が早いこと、
(3)中古価格は推移が緩やかであること、
(4)新築価格と中古価格が極端に近接する時期があること、です。
(1)は景況感を含めて外的な経済環境に依るところが大きいため、当然のことと言えますが、ポイントは(2)です。つまりマンション市況の動きを知るには、新築価格の変化に気付くことが重要だということです。
ミニバブルの端緒となった海外投資マネーの流入時期とゼロ金利の解除が2006年秋だったことは記憶に新しいですが、新築価格はいち早く反応し、2007年以降は“新価格”“新・新価格”と言われる急激な価格上昇を示しています。それに対して中古価格の本格的な上昇は2007年春以降でした。また新築価格のほうが動き出しが早い分、収束も早くなっています。2008年9月15日のリーマン・ショック直後に新築価格は急落しているのに対し、中古価格が下がり始めたのは2008年10月以降です。したがって(4)のような新築価格と中古価格の急接近が発生するのです。
価格の近接はもう1箇所、2011年3月の東日本大震災発生時にも記録されています。こちらは大きな自然災害の発生によって新築マンション市場が事実上ストップし“価格が見えない”状態になったのに対して、裾野の広い中古マンション市場では相応の流通があったため、新築市場の受け皿として機能したことが価格接近の要因です。実際に賃貸物件にお住まいの方が地盤の固い内陸部で中古マンションを購入するという消費行動が発生しています。
また(3)については、市場に出回る流通件数が新築マンションよりも多いことによるものですが、2013年9月に消費税5%で新築マンションが購入可能な「経過措置」が終了し、中古マンションにニーズがシフトして価格が上昇するという独特の動きも確認できます。
大阪市:2005年以降は新築も中古も緩やかに価格上昇
大阪市の新築価格および中古価格も、東京23区の推移と大きく変わるところはありませんが、新築マンションの価格レンジが概ね坪150~200万円の間、中古は坪100~140万円の間で推移しており、東京23区と比べて価格の振幅が小さいことがわかります。また、ミニバブル期の価格上昇も、新築・中古ともに緩やかかつ短期間で収束しています。
またミニバブル以降は(1)新築価格と中古価格の連動が示されていますが、「経過措置」終了後も新築価格が上昇基調にあるのに対して、中古価格は一旦上昇したものの2014年に入ってからは頭打ちで推移しているのが、東京23区と異なっています。
(2)の動き出しも新築価格の動きが大きくないので、必ずしも明確ではありません。大阪市の新築価格と中古価格の推移は、価格レンジが小さいため、結果的に経済環境などに大きく左右されず、エリアの相場観が概ね維持される傾向にあること、および価格が安定していながら直近の価格相場が2005年以降で最も高い水準にあること、が明らかです。
名古屋市:新築主導で価格相場が底上げ 中古価格が追随
名古屋市の新築価格と中古価格の推移は、大阪市の動きと極めてよく似ています。強いて相違点を挙げると新築価格の振幅が大阪市よりもやや大きいですが、これは市場規模の違いで、その時々に分譲される新築マンションの価格水準の違いがそのまま市況に反映されるためです。それでも2005年以降は、大阪市同様に振幅を繰り返しながら徐々に上昇しており、直近では坪180万円前後での推移です。
大手マンションデベロッパーが名古屋市の新築市場に本格参入した2007年以降は、駅に近く、仕様も設備も良好な大規模マンションが相次いで分譲され、価格相場も押し上げられていきました。(1)の価格連動も発生しており、新築価格の緩やかな上昇に伴って、中古価格も横ばいから緩やかな上昇傾向を示し始めていることがわかります。
また、ミニバブル期の価格上昇は新築マンションのみ確認することができます。中古価格はほぼミニバブルの影響を受けていないことも名古屋市の中古マンションの特徴と言えます。これは、ミニバブルが短期間で収束し、価格波及が発生する前に沈静化したこと、名古屋市では専ら商業地での価格上昇が顕著で、住宅地の動きは当初から鈍かったこと、などが要因として挙げられます。
さらに(3)の特徴は名古屋市の中古価格が最もはっきりしており、2005年以降の価格推移は坪77.7万円から116.3万円へと坪40万円弱の上昇を示していますが、2007年から2012年の6年間は坪100万円前後で完全に横ばい推移しています。価格推移が極めて安定している点が、名古屋市のマンション市場の最大の特徴と言えるでしょう。
新築価格と中古価格を比較すると、価格相場だけでなく、エリアごとに特有な動きも浮き彫りになります。特に消費増税後の新築価格と中古価格は、エリアごとに大きな違いがあり、価格の動きは不安定さを増しています。
予定通りに進めば2015年10月に消費税は10%になりますから、今後の価格推移を注意深く見守り、マンション売買のタイミングを考慮する必要がありそうです。
※データ提供:東京カンテイ