中古マンション価格はこの3年間でどのくらい上昇したのか?【地方中枢都市編】 2016年9月
~札幌市・仙台市・広島市・福岡市の中古マンション価格を築年別に調査~
毎年公表されている公示地価や基準地価を見る限りでは、既に上昇に転じた三大都市圏とは対照的に地方圏では依然として下落に歯止めが掛かっておらず、“二極化”の動きが一段と顕在化してきています。
ただし、地方圏の中でも札幌市や福岡市など各地の経済的な中心都市では昨今の金融緩和によってターミナル駅周辺や中心部での大規模再開発、オフィスビルの建設が盛んに行われ、また実需・投資の両面でマンションニーズが集まりやすくなっていることを受けてマンション用地も高騰してきており、都市圏と同じく新築・中古マンション価格は強含みで推移しています。
今回は前回の三大都市編に続き、4つの地方中枢都市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)について2013年からこの3年間で価格がどのくらい高まったのか、また直近ではどのような値動きとなっているのかを中心に見ていきましょう。
(1)札幌市
地方中枢都市では東京23区や大阪市などに比べて中古マンションの流通事例数が少ない影響から、各築年帯での価格推移(特に築浅物件)はややガタついていますが、札幌市においても2013年を境に本格的な上昇局面に入っている様子が見て取れます。
2016年1月時点の価格を2013年1月当時と比べてみると、「築5年以内」で+36.7%(+750万円)、「築10年以内」で+23.6%(+440万円)、「築20年以内」で+39.3%(+503万円)、「築30年以内」で+43.5%(+372万円)、「築30年超」で+46.4%(+279万円)と、この3年間で総じて2割~4割程度上昇しています。
前回取り上げた三大都市と同じく築年数が浅い物件ほど上昇幅が大きくなる傾向にあり、「築5年以内」と「築30年超」の価格差は1,444万円→1,915万円まで拡がっています。
2016年に入ってからは築年数が古い物件を中心に上昇度合いが鈍化しつつあるようですが、全般的に堅調な推移が続いているものと見ていいでしょう。
(2)仙台市
三大都市や他の地方中枢都市では2013年頃を境に上昇局面へとシフトしていますが、仙台市では2011年3月の東日本大震災以降に県内外からの流入人口が増加したこともあって居住ニーズは慢性的に逼迫しており、中古マンション価格はこの5年間を通じて一貫して上昇トレンドで推移しています。
2016年1月時点の価格を震災前の2011年1月当時と比較すると、「築5年以内」で+53.3%(+1,258万円)、「築10年以内」で+78.4%(+1,416万円)、「築20年以内」で+75.8%(+899万円)、「築30年以内」で+90.8%(+783万円)、「築30年超」で+133.1%(+837万円)と、いずれも大幅な価格上昇を示しています。
特に築浅中古物件は価格高騰している新築マンションに比べて割安感がある上に設備などの仕様も大差ないケースも多いことから購入ニーズの受け皿を担っており、連れ高となった結果価格水準が1,000万円以上も押し上がっています。
そのため、仙台市在住の一般勤労者にとっては購入ハードルが非常に高まっている状況となっています。
2016年以降では一部の築年帯で上昇鈍化や頭打ちの兆しも見られ始めてはいますが、潜在的なマンション購入ニーズは依然として高いことから、今後しばらくの間は高水準での価格推移が続いていくものとみられます。
(3)広島市
中国・四国地方の中枢都市である広島市においても2013年前後に各築年帯で価格水準が高まっている様子が見受けられます。
この3年間での価格上昇率は、「築5年以内」で+18.8%(+484万円)、「築10年以内」で+20.2%(+432万円)、「築20年以内」で+32.9%(+513万円)、「築30年以内」で+21.1%(+254万円)、「築30年超」で+20.3%(+212万円)と、概ね2割~3割と他の主要都市に比べて小さく、また価格水準自体も比較的低めであることから、上昇幅も最も大きい「築20年以内」で+513万円に留まっています。
各築年帯での価格推移を見ると、2014年の第4四半期を境に“築20年以内”と“築20年超”で価格差が一段と広がる傾向を示しています。
2000年代以降に竣工した分譲マンションは都心回帰の流れから立地や交通利便性が良好な物件も多く、また高い防災性を有するマンションへのニーズも手伝って、広島市における中古マンション市場では比較的築年数が浅い物件に人気が集まっていると言えるでしょう。
(4)福岡市
福岡市は地方中枢都市の中で最もマンションストック数が多く、三大都市の一つである名古屋市をも凌ぐ規模を有しています。
中古マンションの価格推移はやはり2013年頃から上昇し始めており、最近では九州地方の他県からの人口流入が増えていることを背景に、築浅物件を中心に価格上昇が顕著となっているようです。
2016年1月時点の価格を2013年1月当時と比べてみると、「築5年以内」で+47.1%(+1,169万円)、「築10年以内」で+21.3%(+498万円)、「築20年以内」で+24.7%(+440万円)、「築30年以内」で+27.1%(+328万円)、「築30年超」で+35.3%(+370万円)と、「築5年以内」が上昇率・上昇幅ともに突出していますし、他の築年帯でも3割程度価格水準が高まっています。
また、この3年間では直近にかけてその度合いを強めており、東京23区や大阪市と同じような特徴が見られます。
2016年に入ってからは価格ピークを打つ築年帯も散見されていますが、依然として上昇トレンドで推移しており、その度合いも基本的には陰ることなく堅調さを維持しています。
これまで2回に渡って主要都市における築年別の中古マンション価格推移を見てきましたが、いずれの都市においてもこの3年間で3割程度価格上昇していたことが確認できました。
2016年の上半期には一部の都市や築年帯で価格上昇が鈍化したり頭打ちでの推移を示すなど“調整局面入り”を窺わせる動きも見られ始めていますが、まだ本格的な下落トレンドへ移行する段階には至ってはおらず、価格水準だけ見れば相変わらず購入ハードルが高い状況であると言わざるを得ません。
しかし、年初にマイナス金利を導入して以降、過住宅ローン金利は過去最低水準を更新し続けており、金利負担の軽減という面ではむしろ追い風が強まっています。
また、住宅取得支援制度(贈与税非課税やすまい給付金など)の変更も消費税増税と同様に2年半延長となることが決定したことに加え、新たに「若者」への住宅取得支援や「フラット35リノベ」の開始など、ストック重視の政策の下に中古住宅を取得しやすい環境が一段と強化されていますので、価格の高さだけに囚われずに秋の商戦を前にしてこれら制度の適用の可否を踏まえて改めてマンション購入を検討しても良い時期を迎えていると言えるでしょう。
※データ提供:東京カンテイ