中古マンションのリセールバリューって何で決まるの?【首都圏】
もし仮に、ご自分が現在居住しているマンションを何らかの事情で売却することになった時、「いくらで売れるのか」が最大の関心事になるであろうことは疑いようのない事実です。転勤や人事異動などで現在の住まいを売って新しい勤務先のそばに買い替えるとか、ご両親と同居することになったとか、手狭になったとか、理由は人それぞれですが、マンションは建て替えしにくいものですから、売却して転居するというのが一般的です。不動産は買うより売るほうが難しいと言われるものですから、購入する前から“いつかは売却する”ことをイメージしておけば、いざ本当に売却することになった時、必ず役に立つはずです。
もちろん今お住まいのマンションを買った当初は、将来いくらで売れるかについては考えもしなかったと思いますが、マンションがいくらで売れるのか、本当に買い手が現れるのかが予めイメージできていれば、売却額が低過ぎて住宅ローンの残債が精算できず、手元資金から売却額との差額(これを業界用語で“追い金”と言います)を出さなくても済むかも知れませんし、少なくとも対策は立てられるでしょう。何時どこに、どんな物件を購入したかで売却額は千差万別ですが、実は、立地条件や戸数規模、分譲時の価格帯や、住戸の専有面積など、マンションが持つ固有の「属性」の違いによって、ある程度の傾向を把握することができます。これは実際に売却されたマンションの価格とそのマンションが新築分譲された際の価格とを比較することによって得られる一種の“法則”と言って良いもので、マンションのリセールバリュー(=売却時の資産価値)と言います。リセールバリューが高いか低いかは、マンションを売却することになった時の重要な目安になります。なお、今回掲載したリセールバリューは新築時の価格を100として割合(価格維持率)を算出しています。
東京カンテイ の協力を得て、築10年経ったマンションが分譲当時の価格からどの程度変化しているのかを属性ごとに見ていきましょう。リセールバリューは地域性も大きな要因ですから、今回は首都圏(1都3県)のデータを基にその違いを分析します。以下のデータは、2000年11月から2001年10月の1年間に新規分譲されたマンションの2010年11月から2011年10月に市場流通した中古価格を基に算出しています。
①マンションの狭域立地条件=最寄駅からの所要時間別リセールバリュー
最初は、マンションが最寄とする駅からどのくらい離れているかを所要時間で区分して、分譲当時の価格からのリセールバリューを検証しました。データの通り、その違いは歴然としています。新築分譲時でも駅前や駅から徒歩数分の場所に建つマンションは、駅から15分以上離れたマンションよりも大抵の場合高額で販売されていますが、これが中古市場で流通する際にも大きな影響を与えていることがよくわかります。つまり「駅に近くて便利なマンションは価格が下がりにくい」のです。当然のことながら、新築分譲当時も駅に近い物件のほうが遠い物件よりも価格は高いはずですが、中古になって流通する時にも駅に近いのは資産価値が高いことが明らかですから、購入時の価格が高いか安いかだけでマンション購入を決めるのではなく、こういった資産価値に関するデータも参考にしたいものです。
②マンションの広さ=専有面積帯別リセールバリュー
次は住戸の広さによる違いを見てみましょう。グラフの通り、標準的なファミリータイプと言われている専有面積70m² 台の物件は、それより狭い物件や広い物件よりも資産価値が低いことがわかります。これは70m² 台のマンションが日本で一番多いため、他にも似たような広さの物件と比較されやすいことが要因と考えられます。ライバルが多いと条件も相応に厳しくなるということです。それに引き換え、やや狭い50m² くらいの物件や、マンションとしては広いと言える100m² 以上の物件になると、絶対数が少ないことと立地条件や家族構成などから広い住戸が必要な購入者に支持されて、リセールバリューが高く保たれています。また、ほとんどが投資用に購入される30m² 未満のマンションは、面積帯のなかでは最もリセールバリューが悪く、資産価値が低下しやすいことも明らかです。事業集積地に近く、賃料相場が高くてもリセールバリューが悪ければ投資価値が下がってしまいますから注意が必要です。
③マンションの大きさ=戸数規模別リセールバリュー
ここ10年ほどの間に、駅前の再開発や郊外での面開発などが盛んに行われ、広々とした公園やスーパーマーケット、託児所、医療機関、金融機関などの生活利便施設が誘致された大規模物件が次々に分譲されましたが、マンションの戸数規模ごとにリセールバリューを確認しても、大きい物件になればなるほど人気が高く、それに応じてリセールバリューも高く保たれるという結果が出ています。特に総戸数200戸以上のマンションは、いまから10年前に分譲された物件では新築時の価格を上回るほどの水準で流通していることがわかります。やはり生活利便性を考慮すると、何でも揃っている大規模マンション(都心や近郊ではタワーマンションでもあります)は資産価値も高く維持されるようです。近年の大規模マンションは地震などの災害対策も進んでいますから、非常時の安全・安心を考慮しても、大規模マンション=マンションが大きいことは今後も選択されるケースが減少するとは考えにくい要素です。
このように、マンションの代表的な属性を抽出して比較するだけで購入後の価格推移や売却時の資産価値に大きな違いがあることがわかります。「いまいくらで売っているか」はローンを組んだり購入資金の手当をするために必要なだけでなく、固定資産税の根拠となるなど物件購入の際の基準となるものですが、「将来の資産価値」は価格と同じか、それ以上に重要な要素です。現在販売されている「価格」が同じであっても、将来想定される「価値」は同じとは限らない、ということを理解して不動産購入を検討するようにしたいものです。
※データ提供:東京カンテイ