2011年 新築マンションと中古マンションの市場動向総括【首都圏編】
今回は首都圏の2011年マンション市場についてです。首都圏の2011年新築マンション供給戸数は45,479戸と2010年の47,343戸を3.9%下回りましたが、東日本大震災の発生による影響を考慮すればまずまずの供給水準であったと言えるでしょう。ここ数年間の動きを見ると、2009年には38,059戸と過去10年間の最低水準まで減少しましたが、2010年には東京都を中心に供給戸数が増加に転じたことで47,343戸まで回復。2011年には5万戸を上回る供給が見込まれていたものの、震災の影響で45,479戸と前年をやや下回る水準に留まりました。2011年のマンション供給は秋以降復調し始めており、2012年の供給戸数は5万3千戸程度まで増加すると予測しています。
中古マンション市場においては流通事例数が40万件に迫る勢いで増加しています。2007年のミニバブル以降新築マンションの供給が減少し、中古マンションが居住ニーズの受け皿となっていることがその要因です。一方、中古マンション価格は新築マンションが直近のピーク時に比べて割安な価格で供給されていることで、特に都心とその周辺では中古マンションの価格調整が徐々に鮮明になってきているようです。
今回はこのような2011年の新築マンション動向を踏まえ、中古マンション価格がどのように推移しているかについて、東京カンテイのマンションデータを基にエリア別・築年数別に見て行きましょう。
2011年の新築坪単価は前年比-0.7%の219.1万円、都心部への供給集中で下落鈍化
まずは新築マンションの価格推移です。新築マンションの平均価格は前年比-2.1%の4,277万円、坪単価は-0.7%の219.1万円で、平均専有面積がやや縮小したことによって平均価格の方が坪単価よりも大幅に下げる結果となっています。新築マンションの供給立地は主に都心部やその周辺など利便性の高いエリアにほぼ集中しており、“地域偏在”が発生しています。
東京都の中古マンション価格は下落基調へ、周辺3県では堅調推移をキープ
次に中古マンションの価格推移を見てみましょう。以下のグラフは各都県における過去5年間の新築および中古マンションの坪単価推移を四半期毎に示したもので、グラフ中の数値は節目の坪単価およびその間の変動率を表しています。また、表は新築マンション価格=100とした場合の中古マンション価格水準(坪単価)の推移で、新築マンション価格に対する中古マンション価格の割安感を表しています。
中古マンション価格は2009年下半期から2010年末に掛けて程度の差こそあるものの全域的に上昇基調で推移してきました。しかし、2011年に入ると東京都ではピーク時よりも割安な価格で新築マンションが供給され始めたことで、それまでニーズの受け皿となっていた中古マンション価格は一転して下落トレンドへとシフトしており、特に都心6区においては下げ幅が大きくなっている様子を確認することができます。また、東京都と同様に新築マンション供給戸数が上向き始めている神奈川県では、設備・仕様と価格のバランスから築11~20年では堅調な推移を示していますが、それ以外の築年数ではやや弱含みとなっているようです。一方、2010年から供給戸数が減少していた埼玉県や千葉県では、価格訴求力が高い築21年以上で揃って上昇傾向を示しています。
築年別に各エリアの価格推移を見ても、いずれも新築マンションと価格面で競合しやすい築10年以内の中古マンション価格が弱含みで推移している様子が確認できます。また、旧耐震マンション(現在の耐震設計基準が施行された1981年6月以前に建築確認を受けたマンション)を含む築21年~30年では東京都や神奈川県でともに下落しています。これは、東日本大震災を体験し、今後発生する可能性が高いと言われる首都直下型地震へ備えるためにも、耐震性に優れたより安全な物件を求める購入者の意向が表れた結果であると思われます。
東日本大震災の影響により2011年の新築供給戸数は再び前年割れとなりましたが、2009年に記録した2000年以降の最低水準は上回っており、2012年にはさらに供給戸数が増加すると見込まれていますので、マンション市場における価格主導権は新築マンションが握ることになるでしょう。一方で、新築マンションの供給が限定的な郊外エリアでは引き続き中古マンションが市場を牽引すると考えられますから、どのエリアでマンション購入を検討するのかによって注目すべき対象物件が新築なのか中古なのかを見極める必要が出てくるので、今年は“新築も中古も両方見てしっかり選ぶ”という購入者の選択眼が問われそうです。
※【近畿圏・中部圏】は次回解説予定です。
※データ提供:東京カンテイ