2013年 急落局面を脱した住宅地価動向の推移と今後の展望
~三大都市圏とも底堅い推移、近畿・中部では反転上昇しトレンドに変化~
年末の衆議院選挙を挟んでの幕開けとなった2013年ですが、今年はどのような一年になるのでしょうか。思い起こせば、2012年は東日本大震災の影響が色濃く残ってのスタートとなりましたが、ロンドン五輪では日本人選手が過去最多のメダルを獲得したり、5月には東京の新たなランドマークである「東京スカイツリー」が開業するなど、世間を明るくするニュースも聞かれるようになりました。不動産業界においても地価動向に回復の兆しが見え始めたようで、2012年の地価動向は地域によってばらつきはあるものの、都市圏では利便性の高いエリアを中心に需要が回復する傾向にあり、地価が横ばいや下落から若干の上昇に変わるエリアが増えてきています。昨年11月に国土交通省が発表した2012年第3四半期(7月1日~10月1日)の地価LOOKレポートでも全国的に下落地点が減少し、横ばい・上昇地点が増加しています。同じく2012年7月1日時点の基準地価も下落率は3年連続で縮小しており、公的な住宅地価の指標を見る限りでは下落局面の出口が見え始めつつあると言えそうです。このような地価動向を受けてスタートした2013年ですが、年末に総選挙が実施されたことで今後打ち出される政策が地価動向にも影響を与える可能性があります。今回は、今後の地価動向を占う上で重要となる直近までの実勢地価の推移を東京カンテイのデータを使って確認していきます。
首都圏 ミニバブル崩壊後の急落局面は脱するも緩やかな下落続く
対前年比 | 2003年 | 2004年 | 2005年 | 2006年 | 2007年 | 2008年 | 2009年 | 2010年 | 2011年 | 2012年 |
東京都 | -2.2% | 2.2% | 7.7% | 13.2% | 15.0% | -10.9% | -15.4% | -3.0% | -0.1% | -3.0% |
神奈川県 | -5.3% | -0.9% | -0.3% | 2.9% | 13.0% | -0.9% | -11.3% | 0.7% | 1.7% | -10.6% |
埼玉県 | -5.1% | -2.6% | 1.1% | 6.2% | 6.2% | -1.9% | -9.5% | -3.7% | -0.1% | -5.6% |
千葉県 | -8.3% | -2.5% | -1.1% | 1.7% | 12.0% | 0.5% | -12.4% | -4.1% | -0.6% | -10.0% |
図の通り、首都圏で2007年前後のミニバブル期に最も住宅地価が高騰したのは東京都です。2007年のピーク時には坪185.4万円とミニバブル前の底値だった2003年(129.3万円)と比較すると43.4%も上昇していました。ピーク後は2年連続で10%超の大幅下落を記録していますが、住宅地価の水準がミニバブル前まで低下したこともあって、2010年以降は依然として弱含む傾向にあるもののミニバブル崩壊による急落局面は脱したと言えるでしょう。周辺3県でも程度の差はありますが、同じような地価動向を示しています。しかし、直近の住宅地価の水準に着目するといずれも2004年~2005年に記録したミニバブル前の底値を割り込んでおり、2012年の下落率も東京都に比べてやや大きくなっています。
対前年比 | 2003年 | 2004年 | 2005年 | 2006年 | 2007年 | 2008年 | 2009年 | 2010年 | 2011年 | 2012年 |
東京23区 | 0.6% | 4.9% | 7.5% | 14.1% | 11.6% | -11.3% | -14.2% | -1.3% | -1.3% | -2.6% |
横浜市 | -3.7% | 0.9% | 2.2% | 4.1% | 11.9% | -2.6% | -12.4% | 1.1% | -0.9% | -2.7% |
川崎市 | -4.3% | 2.4% | 0.2% | 7.3% | 15.1% | -1.3% | -12.6% | 2.7% | 1.8% | -3.6% |
さいたま市 | -4.6% | -0.7% | 2.5% | 9.9% | 4.9% | -5.3% | -11.5% | -1.2% | 2.9% | -0.9% |
千葉市 | -5.9% | -4.5% | -3.0% | 0.4% | 14.8% | 1.5% | -12.8% | -5.5% | -3.6% | -3.8% |
同じように、首都圏における政令市の住宅地価動向を見てみましょう。 2009 年にかけての推移はあまり変わりありませんが、 2010 年から直近にかけては底堅い動きを示しています。 2012 年の変動率は東京 23 区では― 2.6 %と東京都の― 3.0 %を下回っており、他の政令市も県平均に比べて小幅な下落に留まっています。また、東京 23 区をはじめ川崎市やさいたま市などではミニバブル前の底値と同じかそれを上回る水準を維持しているのがわかります。首都圏の住宅地価は依然として弱含みに推移していますが、東京都や都心に近い主要都市など立地優位性の高いエリアではミニバブル前の大底圏の水準を意識した実需によって価格を下支える動きが出始めているようです。
近畿圏&中部圏 兵庫県を除いて反転上昇 大阪エリアは底値更新に歯止め
対前年比 | 2003年 | 2004年 | 2005年 | 2006年 | 2007年 | 2008年 | 2009年 | 2010年 | 2011年 | 2012年 |
大阪府 | -3.7% | -8.7% | -8.4% | 2.7% | 7.6% | 4.6% | -7.4% | -8.5% | -5.3% | 3.0% |
兵庫県 | -10.5% | -5.6% | -9.4% | 0.8% | 8.8% | 9.8% | -0.2% | -2.4% | -1.8% | -2.2% |
京都府 | -4.4% | -14.6% | -3.9% | 11.3% | 6.1% | 9.8% | -2.1% | -7.5% | -2.9% | 1.4% |
愛知県 | -4.7% | -1.0% | -8.4% | 1.4% | 6.1% | 7.6% | -3.8% | -5.9% | -9.8% | 0.3% |
ミニバブル後、首都圏は下落傾向が鈍化していますが、近畿圏や中部圏は 2011 年まで一貫して下落傾向を示していました。ところが 2012 年の住宅地価は兵庫県を除いて上向いており、近畿圏や中部圏でもトレンドに変化が表れ始めています。図を見ると、大阪府や愛知県など主要なエリアではミニバブル期のピークはいずれも 2008 年で、首都圏から約 1 年遅れて推移しています。ミニバブル後の急落局面から脱した時期を見ると、首都圏ではピーク時から 3 年後の 2010 年ですが、近畿圏や中部圏の主要エリアではピーク時から 4 年後の 2012 年と首都圏に比べてやや時間を要しています。また、大阪府と京都府の住宅地価を見ると 2005 年までは大阪府がやや上回る水準で推移していましたが、 2006 年に逆転し、直近にかけてはその差が広がる傾向となっています。
対前年比 | 2003年 | 2004年 | 2005年 | 2006年 | 2007年 | 2008年 | 2009年 | 2010年 | 2011年 | 2012年 |
大阪市 | 1.7% | -20.2% | -19.6% | 10.9% | 5.0% | 2.6% | -11.0% | -11.3% | -5.6% | 2.8% |
神戸市 | -14.1% | -0.3% | -0.8% | 3.0% | 6.4% | 9.8% | 0.6% | -1.0% | -8.0% | 0.3% |
京都市 | -5.3% | -15.8% | 0.9% | 15.8% | 9.5% | 4.3% | -3.1% | -7.0% | -6.6% | -0.3% |
堺市 | -6.5% | -0.9% | -7.0% | 4.4% | 12.7% | 3.5% | -8.2% | -4.6% | -2.8% | 0.4% |
名古屋市 | -3.3% | -1.7% | -8.9% | 10.6% | 14.9% | 6.1% | -7.1% | -7.6% | -11.4% | 1.4% |
近畿圏と中部圏の政令市での地価動向も概ね同じ傾向を示しており、やはりミニバブル前の大底圏の水準では住宅地価が底堅く推移しているようです。大阪市では、大阪府と京都府の住宅地価が逆転した2006年以降も京都市を上回る水準で推移していましたが、ミニバブル崩壊の影響で2009年には―11.0%と大幅下落して住宅地価は京都市と逆転、翌2010年も10%超の下落を記録したことでミニバブル前の底値を下回っていました。2012年の対前年比を見ると、住宅地価が直近10年間の大底圏を一時的に割り込んだことで需要が喚起され、大阪市は2.8%の上昇と他の政令市に比べて上昇率が大きくなっていますが、住宅地価は50.2万円と近畿圏や中部圏の政令市の中で唯一ミニバブル前の底値を下回っている状況が続いています。
消費増税と住宅取得政策が最大のカギ
2013年の住宅地価動向を占う上で、最も注目すべき点として消費増税と住宅取得政策が挙げられます。新築の住宅を購入する場合、土地部分は消費税の対象ではありませんが、建物部分や新たに購入する電化製品や家具、引越し費用などは全て課税対象になります。増税による負担を軽減するべく駆け込み需要が発生した場合には、当然住宅地価の押し上げ要因になり得ると言えるでしょう。また、2013年末に期限切れとなる住宅ローン減税ですが、上述の消費増税による住宅の需要減を抑制させるために期間延長や拡充の要望が昨年9月に国土交通省から出されており、それら要望が平成25年度税制改正大綱に盛り込まれる可能性が高いと言われています。現時点では具体的な内容は流動的ですが、仮に見込み以上の支援政策が決定・実施されれば消費増税後の住宅地価を下支えする要因になりますので、住宅購入を前向きに考えていらっしゃる方々にとっては、今年はチャンスの年となる可能性が高いと言えましょう。
※データ提供:東京カンテイ