2010年 中古マンション価格は上がったのか?下がったのか?
~2010年の中古マンション市場総括
昨年は不景気の影響で不動産の取引を控えた方も多かったのではないでしょうか。今回は、2010年の中古マンション市場価格がどのように動いたのか、過去10年の動きを含めてエリア別に見てみました。価格データは不動産データベースの東京カンテイの協力を得ています。
※2000年以降に流通した中古マンションを集計、2010年は12月まで。
首都圏は価格上昇、近畿圏は横ばい、中部圏は下落
三大都市圏の動きを見ると、2010年は圏域ごとに動きに大きな違いがあったことがわかります。首都圏では2009年は平均流通価格で10.0%、平均坪単価で10.5%と大きく下落しましたが、2010年には反転上昇しています。2010年の平均流通価格は2,766万円で2009年の2,654万円から112万円(10.0%)上昇しました。平均坪単価も同様に、2010年は145.7万円と2009年から5.8万円(10.5%)上昇しました。
近畿圏では、2010年の平均流通価格は1,798万円と2009年の1,797万円とほとんど同額で大きな変動はありませんでした。平均坪単価は84.3万円で2009年の85.9万円から1.6万円(1.9%)下落しましたが、これも大きな下落とは言えません。2009年は大きく下落していましたから、近畿圏の中古相場価格は概ね安定していたと言えるでしょう。
一方、中部圏では、2010年の平均流通価格が1,499万円と2009年の1,520万円から21万円(1.4%)、平均坪単価は66.1万円で2009年の70.3万円から4.2万円(5.9%)下落しています。中部圏は2009年には流通価格も坪単価も概ね横ばいに推移していましたが、2010年はこの動きが一転し、三大都市圏では唯一下落基調へと変化しています。
中古マンション 平均坪単価の推移(単位:万円)
2000年 |
2001年 |
2002年 |
2003年 |
2004年 |
2005年 |
2006年 |
2007年 |
2008年 |
2009年 |
2010年 |
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首都圏 | 124.2 | 119.3 | 120.3 | 122.3 | 123.1 | 122.0 | 123.1 | 145.1 | 156.4 | 139.9 | 145.7 |
近畿圏 | 94.2 | 86.3 | 81.4 | 78.2 | 76.5 | 76.6 | 79.4 | 86.5 | 89.2 | 85.9 | 84.3 |
中部圏 | 77.2 | 73.2 | 70.7 | 67.5 | 66.7 | 64.9 | 65.9 | 69.5 | 71.1 | 70.3 | 66.1 |
首都圏では、どこで価格が上がっているのか?
三大都市圏の中で唯一上昇している首都圏をさらにエリア別に見てみましょう。過去価格が反転上昇した時期にはまず都心部(ここでは概ねJR山手線内側地域)からその動きが表れるという特徴がありました。都心部は投資物件や高額物件も動く不動産取引の中心地ですから当然なのですが、2010年の動きを見る限り、今回はそのような結果になっていないことがわかります。
都心部では、2010年の平均流通価格が4,465万円で2009年の4,426万円から0.9%上昇するに留まりました。これは首都圏平均の上昇率4.2%よりも低く、都心部では確かに2010年に価格の反転上昇が認められるものの、首都圏平均を押し上げるだけの影響力はなかったと見るべきでしょう。しかし、都心部を含めた「東京都」というエリア全体で平均流通価格を見ると、2010年には3,423万円で2009年の3,275万円から4.5%上昇しています。平均坪単価でも197.1万円で2009年から5.3%上昇しています。東京都が首都圏全体の価格上昇に大きく寄与したのは明らかです。
都心部・東京都・首都圏 中古マンション平均坪単価比較(単位:万円)
2000年 |
2001年 |
2002年 |
2003年 |
2004年 |
2005年 |
2006年 |
2007年 |
2008年 |
2009年 |
2010年 |
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都心部 | 199.9 | 204.8 | 210.4 | 214.3 | 208.1 | 211.4 | 222.8 | 294.7 | 291.9 | 269.7 | 272.1 |
東京都 | 150.1 | 146.9 | 150.2 | 151.8 | 150.9 | 151.5 | 156.7 | 198.7 | 206.5 | 187.1 | 197.1 |
首都圏 | 124.2 | 119.3 | 120.3 | 122.3 | 123.1 | 122.0 | 123.1 | 145.1 | 156.4 | 139.9 | 145.7 |
では、東京都のどのエリアで価格が上昇したのか?
上記の通り、東京都では2009年から2010年にかけて平均流通価格では4.5%、平均坪単価では5.3%上昇したにもかかわらず、本来市場価格を牽引するはずの都心部では僅かな上昇に留まりました。ではどのエリアが価格を牽引したのでしょうか。東京都をエリア別に見ると、2010年には準都心南西部(城東・城南エリア)で平均流通価格が2009年と比べ4.8%と大きく上昇していることがわかります。平均坪単価では5.1%上昇しています。また、準都心北東(城北・城東エリア)では平均流通価格で4.6%、平均坪単価で6.6%上昇していることがわかります。同様に都下においても平均流通価格で4.2%、平均坪単価で6.0%上昇しています。
平均坪単価(単位:万円)
2000年 |
2001年 |
2002年 |
2003年 |
2004年 |
2005年 |
2006年 |
2007年 |
2008年 |
2009年 |
2010年 |
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都心 | 199.9 | 204.8 | 210.4 | 214.3 | 208.1 | 211.4 | 222.8 | 294.7 | 291.9 | 268.4 | 272.1 |
準都心南西 | 176.9 | 174.8 | 176.3 | 173.8 | 173.0 | 171.7 | 179.8 | 212.1 | 211.6 | 199.1 | 209.3 |
準都心北東 | 127.6 | 122.1 | 122.7 | 121.6 | 121.9 | 120.1 | 124.3 | 145.6 | 152.6 | 142.5 | 151.9 |
都下 | 123.1 | 116.0 | 113.8 | 113.9 | 109.9 | 110.0 | 09.9 | 120.3 | 123.2 | 115.9 | 122.8 |
この結果を見る限り、準都心南西エリアでは平均流通価格の上昇が大きく、準都心北東エリアの平均坪単価上昇が東京都平均を超えて大きくなっています。2010年は都心ではなく、その周辺で中古マンション価格の上昇が起こったのです。
都心部は2008年に急激な価格上昇をした後、続く2009年も4,391万円と高い水準を維持しました。この結果、2010年は価格上昇の伸び代が少なく、強気の値付けがしにくい(=上値が重い)状況にあったと言えます。それに対してその周辺部では、2008年の価格上昇も都心部と比べれば急激ではなかった分2009年の価格下落によって割安感が生じたのです。これらの地域は都心部に隣接する交通および生活利便性が良いエリアで現在も人口が流入していますから、住宅ニーズは高く、物件価格に割安感が出れば市場が活性化して需給バランスが短期間で改善したため、価格が上昇に転じたのです。
このようにエリアの違いによって2010年は価格が上昇したところとほぼ横ばいだったところ、下落が続いたところに大きく分かれました。今後も、しばらくの間はエリアによって価格推移が異なる状況が続くと見られます。今年は不動産の買い時と売り時を見極めて不動産売買にチャレンジしようとお考えの方は、是非エリア別の価格動向もウォッチするように心がけて下さい。
※データ提供:東京カンテイ