2011年 新築マンションと中古マンションの市場動向総括【近畿圏・中部圏編】
前回の首都圏に続き、今回も東京カンテイのデータを基に近畿圏と中部圏の2011 年新築・中古マンション市況について見ていきましょう。
2011年の新築坪単価 近畿圏は160万円超で直近の最高値を更新、中部圏は依然高止まり
2011年近畿圏の新築マンション供給戸数は14,794戸(前年比-30.3%)で、主要エリア別で見ると大阪府で8,051戸(同-39.8%)、兵庫県で4,528戸(同-10.4%)、京都府で1,558戸(同-22.8%)といずれも前年を大きく下回っており、特に大阪府での供給減少が目立っています。主な要因としては、湾岸エリアにおける大規模物件の供給が一巡したことや二次産業の比率が高いために円高不況の影響を大きく受けたことなどが考えられます。
新築マンションの平均価格は前年比+4.7%の3,396万円と上昇した一方で、前年に大きく縮小した平均専有面積は+1.7%の68.54m²
と小幅な拡大に留まったため、坪単価は+2.9%の163.8万円と160万円を突破し、前年に記録した直近10年間での最高値を更新しています。これは新規分譲を利便性の高いエリアに絞り込んで行った結果です。近畿圏では近年、都市部や駅近など利便性の高いエリアでコンパクトタイプのマンション供給が増加傾向にあることから、当面は平均専有面積の縮小傾向や坪単価の高水準での推移が続いていくものと予想されます。
中部圏の新築マンション供給戸数は5,853戸(前年比+29.1%)、愛知県では4,535戸(同+24.2%)とともに2~3割程度増加しており、減少した首都圏や近畿圏とは対照的な状況です。一般的に、マンション市況のトレンドは首都圏から近畿圏、中部圏へと時間差で波及すると言われていますが、中部圏では他の都市圏からやや遅れて2009年以降に大規模物件の供給が進んでおり、このことが供給戸数の増加につながっているとみられます。ただし絶対数としては2009年の5,505戸を僅かに上回った程度で、決して市場が拡大しているとは言えません。新築マンションの平均価格は前年比+0.6%の3,233万円、縮小傾向が続いていた平均専有面積は+2.5%の78.43m² と拡大に転じたことで、坪単価は-1.8%の136.3万円と前年からやや低下していますが、2008年に直近の最高値(139.6万円)を記録して以降は高止まり推移が続いています。
中古マンション価格 大阪・兵庫では依然ニーズの受け皿で堅調、愛知では震災後弱含みへ
次に中古マンションの価格推移を見てみましょう。以下のグラフは各府県における過去5年間の新築および中古マンションの坪単価推移を四半期毎に示したもので、グラフ中の数値は節目の坪単価およびその間の変動率を表しています。また、表は新築マンション価格=100とした場合の中古マンション価格水準(坪単価)の推移で、新築マンション価格に対する中古マンション価格の割安感を表しています。
2011年の大阪府と兵庫県の中古マンション価格は概ね上昇基調で推移しています。大阪府では新築マンション価格が若干弱含んでいますが、供給戸数も減少しているため、中古マンションはマンション購入ニーズの受け皿となっており、そのことが中古マンション価格の緩やかな上昇につながっているものと考えられます。築年別で見ると、特に新築マンションと仕様面や設備面で大きな違いがない築10年以内の中古マンション価格の上昇が目立ちます。築年数が浅いほど購入者ニーズを集めているようで、大阪中心部ではより一層その傾向が強く出ているのが確認できます。
一方、兵庫県では新築マンションの価格が上昇し続けていることで、中古マンションの割安感が強まり、結果的に中古マンション価格はいずれの築年数でも上昇しています。また、リーマン・ショック後の下落基調から脱した2009年の第2四半期と2011年末時点での価格を比較してみると、各築年数での価格水準の差は広がる傾向にあり、大阪府と同様の要因に加えて耐震基準の違いが中古マンション価格の推移に影響を与えている可能性が高そうです。
愛知県のマンション価格は新築・中古ともに2009年下半期から2010年末にかけて概ね上昇基調で推移してきました。2011年に入ると地価が高い名古屋市中心部に大規模物件が供給されたことで新築マンション価格は上昇を続けていましたが、中古マンション価格は概ね横ばいから弱含みで推移しています。これは中部圏における主要産業である自動車産業が東日本大震災やタイの洪水、歴史的な円高で大打撃を受け、景況感が悪化したことが大きく影響していると考えられます。また、中古マンションは築年数が浅いほど価格水準も高いので下落傾向が強くなっており、名古屋市中心部では下落幅が一層大きくなっていまです。
2011年における近畿圏の新築供給戸数は前年から大幅な減少となりましたが、2012年には一昨年の水準に戻って2万戸強の供給が見込まれています。現在、新築マンションの供給不足によりマンション市場における価格主導権は中古マンションが握っている状態と言えます。しかし、供給戸数が回復に向かい新築マンションの価格調整が一段と進めば、首都圏と同じように価格主導権は新築マンションに移行し、堅調な推移を示していた中古マンション価格も調整局面へ入ることが予想されます。 また、中部圏においては2012年も都市中心部に大規模な新築マンションが計画されていることから、供給戸数と価格は安定推移するものと考えられます。一方、中古マンション価格については自動車産業を主軸にした地域経済の状況に左右されるところが大きいため、震災で被害を被ったサプライチェーンなどの復旧の進捗や為替の状況、自動車の販売先である国内外の経済状況などによっても変動する可能性があります。
※データ提供:東京カンテイ