2011年上半期の首都圏中古マンション流通事例で見る築年別の管理費と修繕積立金
2011年も6ヵ月が過ぎ、早くも一年の折り返しを迎えました。景況感の改善のないまま東日本大震災が発生し、マーケットは一時期動きを失ったもののここに来てようやく回復の兆しが出てきたように感じられます。激動の2011年上半期でしたが、今後は震災からの復興が一刻も早く為されることを祈念してやみません。
今回は首都圏の2011年上半期の中古マンション流通事例から、管理費および修繕積立金という代表的なランニング・コストが築年によってどの程度の水準を維持しているのかを調べました。データは不動産データベースの東京カンテイの協力を得ています。
※2011年1~6月の中古マンション流通事例1戸あたりの管理費・修繕積立金を築年別に集計。
首都圏:東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県。金額は全て円/月額。
首都圏の中古マンションは築25年より古いマンションは管理費・修繕積立金ともに平均12,000円程度の水準に落ち着く
首都圏の築年別の平均管理費と平均修繕積立金の分布を示したのが下のグラフです。全専有面積帯の平均値で見ると、管理費は当初14,000円前後で設定されているのに対して、築年が古くなるに連れて低額になっていく傾向が明らかです。築30年を超える物件では概ね12,000円以下となっています。 これに対して修繕積立金は当初は6,000円程度に設定されていて、その後築年が進むほど高くなっていく状況です。
しかし、築22年の物件の平均修繕積立金が12,000円を超えているのを境に、築23年より古いマンションの平均修繕積立金は、12,000円を若干下回る水準でほとんど変化しないことがわかります。築年が25年よりも古いマンションでは管理費も修繕積立金もともに12,000円程度となっていることがわかります。
これを専有面積帯別に切り分けてみてみると、マンションの広さによって築年と管理費と修繕積立金の分布が異なることがわかります。
首都圏で最も数多く流通する70m²
台の築年別の管理費・修繕積立金は、管理費は築年が古いほど低額となる傾向があるのに対し、修繕積立金は反対に高額となっていく傾向となっています。しかも、首都圏全専有面積の平均グラフ(上記)で見られたような、修繕積立金が12,000円前後の水準で頭打ちになる状況は示されていません。修繕積立金は築38年には15,000円を超える水準にまで達しています。また、築25年あたりで管理費と修繕積立金の額が逆転しているのがわかります。
一方、高級物件などが多い専有面積100m² 以上では管理費・修繕積立金ともに、築年が古いほど高額になっていく傾向が表れています。管理費も高額化しているのは首都圏のこの専有面積帯だけです。高額な物件ほど管理に高いコストをかけ、マンションの維持管理に注意を払っていることが窺えます。
管理費と修繕積立金を負担するのはマンションの所有者ですが、これらの額は安い方が良いというわけではありません。コストを低く抑えているマンションもありますが、低いコストで良好な管理やメンテナンスが出来ているのか一抹の不安が残ります。特に、修繕積立金は将来の大規模修繕に備えるためのマンション所有者全員の資金=管理組合の貯蓄ですので、設定額が低いと将来の大規模修繕の時に資金が足りず、「一時金」を徴収される可能性が否定できません。したがって、修繕積立金については月々の設定額が将来の大規模修繕の費用に対して適切と考えられるのかを調べるのと同時に、現時点で管理組合にどの程度貯蓄されているのかを確認することが重要です。中古マンションを購入する際には必ずチェックしたいものです。
※データ提供:東京カンテイ