不動産購入、不動産売却は「三井住友トラスト不動産」

 首都圏における新築マンション供給戸数は、2009年に38,059戸と過去10年間で最低水準まで減少しましたが、2010年には47,343戸まで増加。供給エリアは依然として立地優位性の高い都心やその周辺などに限られていますが、市況自体は最悪期を脱して復調の兆しが見え始めており、2011年は5万戸を上回る供給が予測されています。
 一方、中古マンション市場では築浅物件の増加に伴い流通事例数は3年連続で20万件を突破。マンション価格は2009年下半期以降上昇基調で推移していました。しかし、2010年の後半以降は新築マンションの供給増加に伴って、特に都心とその周辺エリアで価格調整局面に入っています。 　今回は、2010年の新築マンション動向を踏まえた上で中古マンション価格が直近ではどのように推移しているかについて、築年数別に見て行きましょう。

 新築マンションの平均価格は、2007年の4,691万円をピークに下落し続けています。一方、平均専有面積は一戸あたりの価格を抑えるために専有面積を狭くしたことによって2007年には70m² 台を下回り、2009年には62.52m² と直近10年で最小を記録。2010年には65.40m² とやや拡大したものの、未だに2006年以前の水準を5m² 程度下回っています。また、2010年の坪単価は平均価格の下落と専有面積の拡大によって220.7万円とピーク時よりやや下げましたが、2006年と比べると9.2％高くなっています。ミニバブル期よりは土地を安価に仕入れているため、価格が低下して専有面積がやや拡大する傾向が出てきています。

 次に中古マンションの価格推移を見てみましょう。以下の図は各都県における過去5年間の新築および中古マンションの坪単価推移を四半期毎に示したもので、図中の数値は節目の坪単価およびその間の変動率を表しています。また、表は新築マンション価格＝100とした場合の中古マンション価格水準（坪単価ベース）の推移で、新築マンション価格に対する中古マンション価格の割安感を表しています。
 各都県とも、中古マンション価格（坪単価）は2009年後半から上昇に転じており、築10年以内や築11年～20年の買い手がつきやすい物件ほど価格上昇率が高くなっています。一方で、埼玉県や千葉県における築21～30年の坪単価推移を見ると上昇に転じ切れておらず、これらエリアの築古物件へのニーズはやはり限定的です。上昇基調で推移してきた中古マンション価格ですが、エリアや築年数によってはミニバブル期の水準近くまで高騰したため、直近では横ばいから反転下落など価格調整局面に入る動きも見られています。
 中古マンションの価格水準は、当然築年数が浅いほど高い値を示します。築10年以内に限って見ると、東京都では90前後、周辺3県では80前後で推移しているようです。また、各築年数の価格水準を比べると、いずれの都県でも築10年以内と築11年～20年・築21年～30年の間に比較的大きな開差が見受けられ、特に東京都や神奈川県では顕著となっています。これは、これらエリアにおける築10年以内の築浅物件への高いニーズによるものと思われます。

 新築供給戸数の激減と価格の高止まりに伴い、マンション購入者のニーズは流通事例数が豊富で新築に比べて割安感が強まった中古マンションにシフトし、結果的に中古マンション価格は築浅物件を中心に上昇してきました。しかし、2010年に入ってからは新築マンション市況の復調で供給戸数が増加に転じ、また一戸平均価格もピーク時に比べて値頃感が出始めたことで、マンション市場における価格主導権は再び新築マンション市場にシフトしつつあります。したがって、これから中古マンションの売却・購入いずれかを検討する方にとっては中古マンション市場のみならず新築マンション市場の動向にも目を配る必要がありそうです。