2011年上半期 近畿圏・中部圏中古マンション流通事例で見る築年別の管理費と修繕積立金
2011年の中古マンション市場は東日本大震災による停滞感から抜け出し、6月以降は流通事例数が増加するなど、徐々に震災前のマーケットに戻りつつあります。
今回は先月お伝えした首都圏の状況に続き、近畿圏と中部圏のデータを紹介します。データは不動産データベースの東京カンテイの協力を得ています。
※2011年1~6月の中古マンション流通事例1戸あたりの管理費・修繕積立金を築年別に集計
近畿圏:大阪府、兵庫県、京都府、滋賀県、奈良県
中部圏:愛知県、岐阜県、三重県
金額は全て円/月額
近畿圏の中古マンション修繕積立金は築18年目に平均10,000円まで上昇
近畿圏の築年別の平均管理費と平均修繕積立金の分布を示したのが下のグラフです。全専有面積帯の平均値で見ると、管理費は当初14,000円前後で設定されているのに対して、築後数年で低額になり、築5年目には約10,000円の水準となります。築16年から22年の物件では管理費が他の築年と比べて高額になっていますが、これはバブル期に分譲された物件の多くが、初期の管理費を高額に設定していたことによります。近畿圏では築30年を超える物件でも、築年が経過するに連れて管理費が低下していく傾向があることがわかります。これに対して修繕積立金は当初は5,000円程度に設定されていて、その後築年が進むほど高くなっています。ただし築18年の物件の平均修繕積立金が約10,000円に達した以降は築25年までほとんど変化せず、築30年以降も概ね9,000円程度の水準で大きな違いはありません。修繕すべき箇所の増加に伴って築年が進むにつれて修繕積立金も上昇しますが、築18年頃から頭打ちになるという傾向がはっきり見て取れます。
近畿圏の中古マンションのうち最も流通の多い70m² 台のマンションの築年別の管理費・修繕積立金は、管理費は築年が古いほど低額となる傾向があるのに対し、修繕積立金は反対に上昇していきます。しかも、近畿圏全専有面積の平均グラフ(上記)で見られたような、修繕積立金が10,000円前後の水準でほぼ横ばいとなる状況は示されていません。修繕積立金は築38年には12,000円を超える水準にまで達しています。また、築22年あたりで管理費と修繕積立金の額が逆転しているのがわかります。
中部圏の中古マンション修繕積立金は築25年目まで上昇傾向
中部圏でも同様に、築年別の平均管理費と平均修繕積立金の分布を示したのが下のグラフです。全ての専有面積帯の平均値で見ると、管理費は当初16,000円前後とやや高額に設定されているのに対して、築後2~3年で12,000円を下回る水準に低下し、築5年目には約10,000円になります。近畿圏と同じで80年台後半から91年までのバブル期の物件では管理費が他の築年と比べて高額になっていますが、築20年以降のマンションでは築年を経るごとに低下することがわかります。
一方、修繕積立金は当初は4,500円程度に設定されていて、その後築年が進むほど高くなります。この傾向は首都圏も近畿圏も同様です。ただし中部圏では築25年までは修繕積立金は徐々に高額となっていき、12,000円弱の水準まで上昇していくのが特徴です。他の圏域のように頭打ちとならないのが大きな違いです。また、中部圏では築26年以降の修繕積立金は徐々に低下する傾向が見られ、築37年目には8,000円を下回る水準となっています。
中部圏の中古マンションのうち最も流通量の多い80~100m² 未満のマンションの築年別の管理費・修繕積立金は、管理費は築年が10年目までは低下する傾向が見られますが、築11年目以降は概ね10,000円の水準で安定しているのに対し、修繕積立金は反対に築年数の経過とともに高額になる傾向があります。しかし、築26年以降は低額化し、築30年を超えると概ね12,000円の水準で安定します。築21年目あたりで管理費と修繕積立金の額が逆転しています。
このように、同じ管理費と修繕積立金でも、もともとの設定額や以降の推移には圏域がよって大きな差があるようです。前回も指摘した通り、管理費も修繕積立金も額は安い方が良いというわけではありません。修繕積立金は将来の大規模修繕に備えるための管理組合の貯蓄です。また日々のメンテナンスのためのコストとして管理費を低く抑えることは、良好な資産の維持管理に影響が出てくるおそれがあるのです。管理費や修繕積立金については月々の設定額がメンテナンスや将来の大規模修繕の費用に対して適切と考えられるのかを調べるのと同時に、購入を検討する時点で管理組合にどの程度修繕積立金がプールされているか確認することをお薦めします。
※データ提供:東京カンテイ