不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報不動産マーケット情報中古マンションの売出・取引価格の乖離率と売却期間の推移 2003年~2012年 (2013年5月)

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2013年5月号

不動産市況や業界動向などの旬な情報を記載したコラムです。

中古マンションの売出・取引価格の乖離率と売却期間の推移 2003年~2012年

~首都圏や近畿圏の乖離率は例年通りの水準に、中部圏ではやや拡大傾向~

首都圏 価格乖離率は平均的な水準に収斂するも売却期間は再び3ヵ月を上回る

 上のグラフは首都圏における中古マンションの売出・取引価格の差(=乖離率)と平均的な売却期間の推移を表したものです。乖離率がゼロに近いほど売出価格と取引価格の差が小さく、反対に乖離が大きいほど売出価格から値引きした価格で成約していることを示しています。

 2006年~2008年のミニバブル期に新築マンション価格が上昇したことで、相対的に中古マンションの割安感が強まって中古マンション市場は買い手市場から売り手市場へとシフトしましたが、その様子はグラフからも読み取れます。中古マンションの価格乖離率は2006年に前年から1.5ポイント縮小して-6.3%、2007年もさらに縮小して-5.6%と、直近10年間で売出価格と取引価格の差が最も縮まっていました。2008年に入ってもしばらくは堅調な推移が続いていましたが、同年9月のリーマン・ショックを境に日本国内のマンション市場も急激に冷え込んだことで、成約するための大幅な値引きや売却期間の長期化を余儀なくされました。それらは数字にも表れており、価格乖離率は前年から大幅拡大して-10.2%、売却期間も平均で3.3ヵ月を要していたことがわかります。

 2009年以降は、新築マンション価格の高止まりや供給戸数とエリアの絞り込みにより、中古マンションがマンション購入者のニーズの受け皿となったことで乖離率と売却期間はここ10年の平均的な水準まで戻してきていましたが、直近では新築マンションの供給が復調し始めたことで、2012年には中古マンションの平均売却期間が再び3ヵ月を超えています。

 次に、売却期間ごとの乖離率を見てみましょう。一般に、売出価格が周辺相場に見合っていれば買い手からの反響も良く、当初の売出価格からさほど値下げせずに早期に成約に至るケースが多いと言われますが、データでもその傾向がはっきりと出ています。売却期間が1ヵ月以内の事例の乖離率は平均で-3.6%に留まっており、下のシェアグラフを見る限りでは、売出価格のまま成約に至っているケースも28.6%に達します。

一方、売却期間が長引くほど乖離率は拡大し、売却期間が4ヵ月以上になると乖離率は10%を超えて大半のケースで当初の売出価格から1割~2割程度の値引きを余儀なくされていることがわかります。

近畿圏 価格乖離率は-8.0%前後で推移、売却期間は08年以降3ヵ月超が常態化

中部圏 08年以降の価格乖離率は拡大傾向、売却期間も緩やかに長期化へ

結論:売出価格の設定が売却期間を左右する

 一般に、周辺相場や地域のニーズに沿った価格設定をしている場合には、あまり値下げすることなく早期に成約に至る可能性が高いことはよく知られていますが、今回確認したデータでも改めてその事実を確認することができました。一方で、周辺相場やニーズをあまり考慮せずに高めの売出価格を設定してしまうと、結果的に当初の売出価格から1割以上の値下げを余儀なくされ、売却期間も長期化する傾向にあることもわかりました。売出価格から値下げしても、最終的な取引価格が周辺相場と大差なかったのであれば問題ありませんが、最初に売り出されてから期間が経っていて価格改定も何度かされている物件などは、買い手からさらなる値下げ交渉を求められる可能性が高くなりますし、また売却までの期日が迫っている場合でも同じく買い手から足元を見られて、取引価格が周辺相場よりも安くなる可能性が高まると言えるでしょう。

 中古マンションの売出価格は、同じマンション内や周辺にあるマンションの事例などを参考に相場価格を算出し、住戸の個別要因や市場動向などを加味して設定するケースが多く、売主としては想定され得る“売れる価格のレンジ”の範囲内で、できるだけ高値で売りたいと考えるのは当然のことでしょう。しかし、あまりにも売出価格を高値にしてしまうと、大幅な値下げや売却期間の長期化につながるリスクが生じてしまいます。最初に売出価格を設定する際には、売主として売却までのスケジュールも考慮して値付けすることが重要ですし、売り出した後も反響の有無に応じて弾力的に価格改定を行うことが必要になるでしょう。売主の希望と買主の希望価格には総じて差があるものですから、早く売りたいのか、高く売るために買主が見つかるまで粘り強く待つのか、仲介会社のサポートを受けながら“作戦”を練ることも重要です。

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