消費増税を見据えた中古マンションの価格推移と今後の動向
消費税政局と政権交代で大きく動いた感のある2012年も終わり、2013年は年初から税制改正大綱の公表によって消費税の改定を前提とした住宅ローンの拡充や、所得税および相続税の最高税率の引き上げなどが相次いで決定しています。政府が決定したこれらの制度変更は、一定の周知期間を経て実施されますが、不動産の売却・購入に伴う税制の変更は細かい規定が多く、全体をしっかり把握して対応することが求められます。つまり、保有している不動産を売却したり、資産の付け替えのために収益不動産を購入したりという“不動産戦略”はなるべく早く検討を始めておく必要があるのです。
近年、新築のマンションや分譲戸建は、専ら売主の意向によって交通利便性と生活利便性の高いエリアに集中する傾向が顕著で、安全性に対する関心の高まりや資材価格の上昇傾向などもあって、立地条件や品質向上を前提に分譲価格が強含みに推移する可能性が高くなっています。中古マンションについても、昨年後半は消費税率の引き上げを巡って政局になったことから模様眺めの気配が広がり、市場流通価格が全般的に弱含みましたが、消費税の引き上げが今年の秋に正式決定すれば、需要の拡大に伴って価格が上昇することが考えられます。以下、東京カンテイの中古マンション価格データを基に状況を検証します。
首都圏の動向
首都圏では2007年から2008年にかけて発生した“ミニバブル”の影響により、東京都および神奈川県の中古マンション価格が急上昇しましたが、埼玉県と千葉県の価格上昇はごく僅かでした。その後リーマン・ショックで下落した価格はやや持ち直し、直近では景況感の減退による価格の緩やかな弱含みが続いています。東京都では2012年の年間平均流通価格が3,151万円と2011年から4.5%下落しました。周辺3県も概ね同様の傾向を示しています。
ただし、東京都を例に1~6月の上半期と7~12月の下半期の価格動向を比較すると、上半期が3,198万円なのに対して下半期は3,107万円で、下落率は年間推移の半分の2.8%に留まっています。つまり、市場は消費増税を見据えて動き始めているという見方が可能です。実際に2012年末に急騰した株価によって利益を得た個人投資家が、インフレヘッジのために不動産に利益を付け替える動きも出ており、市場は今後の変化に備えて現状を注視している状況と言えるでしょう。特に相続税率の引き上げは土地持ち富裕者層にとっては大きな制度変更ですから、評価額が相場価格の25%程度に抑えられている収益物件の動きには注意が必要です。このような制度変更を考慮すると、中古マンション価格は現状の価格下落局面をいつ脱するのかがポイントになります。直近では東京都心部の中古マンション価格が上昇に転じており、2013年の比較的早い時期に潮目の変化が訪れる可能性が出てきています。
( https://www.kantei.ne.jp/release/PDFs/c201212.pdf)
近畿圏・中部圏の動向
大阪や名古屋の中古マンション市況も、首都圏に示した状況と似通っています。しかし、近畿圏と中部圏では資産デフレ期の価格下落が首都圏よりも大きく、ミニバブル期の価格上昇も相対的に小さかったため、中古マンションの市場流通は圧倒的に2,000万円未満の物件によって占められています。したがって価格の下落余地が首都圏よりも相対的に小さいのですが、グラフの通り、価格は兵庫県を除いて弱含みに推移しています。近畿圏と中部圏では、地域経済が製造業に依存する割合が高いため、円高や株安が長期間継続する状況では景気回復は程遠く、内需である不動産市況が改善する可能性もほぼありません。また、築年の古い物件、駅から離れている物件など、安全性や利便性がやや劣ると考えられる物件の流通が減少しているにもかかわらず価格が下落するという、純粋な資産デフレ状況も示しています。ただし、首都圏同様に大阪府で上半期と下半期の価格動向を比較すると、上半期が1,786万円なのに対して下半期は1,761万円とほぼ横ばいで、下落率も僅か1.4%です。これは価格の底入れの兆しと捉えることができますから、消費増税を踏まえた市場の変化は今後明らかになると考えられます。
2013年は、住宅政策と税制が大きく変わる節目の年です。比較的短期間で市況感が変化し、それに伴って目まぐるしく不動産価格も変動する可能性がありますから、まずは制度の変更点を把握して、ご自分にとって最も良い不動産売買のタイミングを見極めることが大切です。
※データ提供:東京カンテイ