足元の中古マンション価格は上がり始めているのか
~都市圏中心部の中古マンション価格、築年別の調査結果~
前回のコラムは、同じ中古マンションでも地域によって価格水準が異なり、価格推移にも比較的大きな違いがあることをご紹介しましたが、今回は東京23区など、三大都市圏の中心部の中古マンション価格を築年ごとに分けて推移を見ていきたいと思います。アベノミクスへの期待で価格も今後上昇するのではないかと言われていますが、中古マンションの価格が、築後経過年数に違いがあっても同じように上昇トレンドを示しているのかについて“エリア”から“築年数”に視点を変えて調べてみました。
東京23区
東京23区の中古マンションの価格推移を見ると、各築年ともほぼ並行して推移していて、「築20年以上」と「築30年以上」では価格水準にほとんど違いがないこともわかります。これは東京23区では築20年以上のマンションであれば築年数に応じて大きく価格が下がることなく中古市場で流通していることを意味しています。つまり、築年数が古いマンションであってもニーズがあるということです。
また中古マンション価格はいずれの築年でも2011年~2012年までは緩やかに下落していますが、2012年末には底打ちして、2013年には上昇していることがわかります。東京23区の2013年の中古マンション価格は、全ての築年で価格が上昇していますが、これは、東京23区というマンション居住ニーズが最も高いエリアで地価が底入れし、上昇し始めたことの表れと言えるでしょう。
また、2010年頃に記録したリーマン・ショック後の最高価格と2013年12月時点の価格を比較してみると、「築10年未満」では5,316万円/5,211万円、「築10年以上」では4,215万円/4,097万円、「築20年以上」では3,385万円/3,120万円、「築30年以上」では3,404万円/3,154万円となっており、全ての築年で最高価格を下回ってはいますが、その価格にわずか100万円~200万円の水準まで迫ってきています。
大阪市
大阪市の中古マンション価格も東京23区と同じく、各築年ともほとんど並行して推移していて、東京23区ではほぼ同じ価格水準だった「築20年以上」と「築30年以上」の価格差も確認できます。ただし、その差は、例えば「築10年未満」と「築10年以上」での差に比べるとかなり小さくなっていますから、大阪市でも築年数が古いマンションの価格が大きく下落しにくい傾向を示しています。東京23区でも大阪市でも、築年の進んだマンションの市場性が失われていないことが明らかです。
2012年までの推移を見ると、「築10年未満」や「築10年以上」では2011年に僅かな価格上昇が確認できますが、それ以外では目立った価格の上昇や下落もなく、全ての築年で概ね安定した動きとなっています。また「築10年未満」では東京23区よりも少し早い2012年秋以降に上昇し始めており、2013年3月には3,028万円と2011年半ばに記録したリーマン・ショック後の最高価格(3,000万円)を上回り、2013年12月時点では3,125万円と価格の上昇が明らかです。
その他の築年の中古マンション価格も2013年秋頃から上昇しつつあり、それぞれリーマン・ショック後のピーク価格に迫るか、僅かに上回る水準まで上昇してきています。
名古屋市
名古屋市の中古マンション価格の動きも、築年ごとに並行して推移している点や、「築30年以上」の古いマンションと「築20年以上」の価格差が小さいことが確認できます。
2012年までの推移を見ると、いずれの築年でも2011年以降は緩やかに下落しています。2012年末時点での価格水準は、2010年~2011年頃に比べてそれぞれ100万円程度下がっています。2013年に入ると「築10年未満」や「築10年以上」の中古マンション価格が上昇し始めており、それぞれ直近5年間の最高価格を更新しています。
また、「築20年以上」の中古マンション価格も2013年秋を境にやや上昇し始めていますが、2011年4月に記録したリーマン・ショック後の最高価格(1,421万円)はまだ下回っており、「築30年以上」は1,000万円前後での横ばい推移から変わっていません。
東京23区、大阪市、名古屋市では、2013年に中古マンション価格が上昇し始めましたが、築年ごとに分けて推移を見ると、全ての築年で価格上昇しているのは東京23区のみであり、大阪市や名古屋市では、築年の浅いマンションの価格上昇が確認できました。
「築10年未満」や「築10年以上」などの築浅中古マンション価格は、いずれの都市でも上昇しており、建築コストの上昇によって価格上昇圧力が増している新築マンションに替わって購入者の受け皿になっていることが窺えます。ただし、直近では築浅中古マンション価格もリーマン・ショック後の最高価格に近い水準まで上昇してきており、上昇基調にシフトし始めた1年前に比べて値ごろ感が薄らいできています。
中古マンションの価格動向を大まかに把握したい場合には、都市圏や都市ごと、エリアごとの平均価格を見るのが便利です。一方で、築年数や最寄駅からの所要時間などから違いを見ると、今回のように平均値とは違った動きを示します。単純に平均価格がいくらなのかを見るだけでなく、ご自身が欲しいと思っている物件の条件に合わせて価格動向をチェックすると、より正確な価格相場観を知ることができます。
※データ提供:東京カンテイ