不動産売却・購入の三井住友トラスト不動産:TOPお役立ち情報不動産売却の法律アドバイス手付金により売買契約を解除する際の注意点(2019年9月号)

不動産売却の法律アドバイス

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長町 真一

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弁護士
弁護士法人 御宿・長町法律事務所
長町 真一

2019年9月号

不動産の売却を検討されている方向けに、不動産を巡る紛争を数多く取り扱ってきた弁護士から、売却時の様々な局面にスポットを当てて、気をつけるべきポイントをアドバイスいたします。

手付金により売買契約を解除する際の注意点

Q

2 売主が前項により本契約を解除するときは、売主は、買主に対し、手付金等受領済みの金員を無利息にて返還し、かつ手付金と同額の金員を支払わなければなりません。買主が前項により本契約を解除するときは、買主は、売主に対し、支払済みの手付金の返還請求を放棄します。

A

 契約成立の証拠として交付される手付です。すべての手付がこの性質を含みます。

 ② 違約手付

 契約上の債務に不履行があった場合に、相手方がそれにより被った損害の賠償に充てることを予定して交付される手付です。
 手付が違約手付の目的を有している場合、当事者間に別途損害賠償請求ができるとの合意がない限り、損害賠償額を手付の金額に限る(相手方はそれ以上の損害賠償を求められない)という意味を持ちます。

 ③ 解約手付

 契約を解除する権利を両当事者に与える意味を持たせて交付される手付です。
 売買契約にて、買主が手付により解除する場合は、交付した手付を放棄し(これを「手付流し」といいます。)、逆に売主が解除する場合は、受け取った手付金の倍額を返還すれば(これを「手付倍返し」といいます。)、一方的な意思で解除ができることを意味します。

 手付金の交付がなされた場合は、原則として解約手付の目的を有していると推定されるものと解されています。解約手付の額の相場は、通常、売買代金の10パーセント程度です。
 なお、宅地建物取引業者(宅建業者)が自ら売主となる場合は、法令上、20パーセントを超える手付金を受け取ることはできないとされており、一定の条件に該当する場合は、買主に手付金を返せなくなる事態が生じないよう、保証措置を講じなければならないとされています。
 ご相談の件でも、売買契約書の第15条(手付解除)に、「本契約を……解除することができます。」、「売主が前項により本契約を解除するときは、売主は、買主に対し、手付金等受領済みの金員を無利息にて返還し、かつ手付金と同額の金員を支払わなければなりません。」と、手付倍返しによる解除を認める定めがありますので、手付金には解約手付の目的が込められているといえます。

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長町 真一Shinichi Nagamachi弁護士

弁護士法人 御宿・長町法律事務所 http://www.mnlaw.jp/index.php

平成16年弁護士登録 不動産をはじめ、金融・IT関連等多種多様な業種の顧問会社からの相談、訴訟案件を多数受任。クライアントのニーズに対し、早期解決、利益最大化を目指し、税務・会計にも配慮した解決方法を提案。経営者目線での合理的なアドバイスも行う。