「不動産価格・査定・鑑定評価等」について、不動産評価の仕組みを解説した不動産鑑定士のアドバイスです。
不動産の価値が最も高くなる使用方法~最有効使用~(その2)
先月は土地の最有効使用について説明しました。建物がある場合はどうでしょうか。
土地の最有効使用と、建物を含めた対象不動産の現実の利用状況との関係
対象不動産に建物が存している場合であっても、その建物が土地の更地としての最有効使用と一致している場合には、その土地の効用は最大限発揮されていると言え、土地建物全体としての対象不動産は最有効使用であると言えます。
一方、下記例1の様に、繁華性が高い駅前で高層の商業店舗ビルや事務所ビルが建ち並んでいる地域内に、ぽつんと戸建住宅があるような場合があります。
この地域内の土地の更地としての最有効使用は高層の事務所・店舗ビルの敷地としての利用と判断できます。しかし戸建住宅として使われている土地と、戸建住宅である建物は、土地の最有効使用とは異なる利用方法ですので、対象不動産である戸建住宅とその敷地は、一体としては最有効使用とは言えない(土地の最有効使用と乖離している)のです。
また、下記例2の様に、法令で定められた容積率をオーバーした建物が建っているようなことがあります。
これが賃貸マンション等の賃貸物件の場合、法令を遵守している建物よりも多くの収益を生み出すことになりますので、最有効使用を超える使用方法に見えます。しかし、定められた容積率をオーバーしている場合には、建築確認を受けた建物と現実の建物の構造や仕様が異なり、それ故に工事完了検査を受けていないことが一般的ですので、構造や強度等に不安が残ります。このような遵法性に問題のある不動産については、最有効使用とは認められません。
最有効使用の価格と最有効使用ではない場合の価格
価格は最も効率的な使用方法を前提として成立していると述べました。したがって、土地建物一体で最有効使用が実現している場合や、更地など最有効使用が実現できる場合には、価格は最も高くなります。最有効使用の使用方法と比較して利用効率が低くなる場合には、利用効率が低くなる分、価格が低くなります。
土地が更地であった場合:100,000,000円
地域の状態:中層事務所ビルが建ち並ぶ商業地域
最有効使用:中層事務所ビル
最有効使用に見えるが、遵法性に問題がある場合
また、遵法性に問題がある不動産の場合、構造等への不安や、金融機関からの融資が困難である等から需要が少なくなりますので、遵法性に問題がない同規模の不動産同士で比較すると価格が低くなります。
遵法性問題なしの不動産の価格 > 遵法性問題ありの不動産の価格
今月はここまでです。
ありがとうございました。