不動産、特に土地は、目の前に示されている価格がなぜその価格になるのかがわかりにくいと思います。そのような、わかりにくい不動産の価格について、少しでも理解を深めていただけるように解説しています。
収益物件の価格はどのように決まる?
不動産鑑定評価基準では、貸ビルのことを「貸家及びその敷地」といい、第三者へ賃貸され、借主が現に入居している状態のビルをいいます。この「貸家及びその敷地」の価格は「収益価格」を中心に決定されます。その理由は、「貸家及びその敷地」を売買する場合の取引の相手方(買主)は、現在の借主(賃貸借契約)を引き継ぐため、現行の収益性を重視して取引価格を決定することが通常だからです。「貸家及びその敷地」は所有者と借主との間で契約に基づき家賃等賃貸借の条件が決まっており、通常、契約期間が終了しても所有者側に借地借家法でいう「正当事由」が無ければ借主は賃貸借契約を更新することが可能(定期借家契約は除く)であり、この賃貸借条件が長期的に継続します。したがって、「貸家及びその敷地」の評価は、現行の家賃収入を基礎として求められる純収益(=家賃-空室分家賃等-経費)が中心となり、この純収益を利回りで割った収益価格を重視して、その価格が決まります。
投資目的であるなら、購入して売却するまでの期間は、賃貸に供する事が前提だと思いますので、周辺の賃料相場を確認する必要があります。特にロ-ンを組む場合は、月々の返済額、固定資産税額、修繕費の合算額以上の賃料が見込まれる物件を探す必要があります。
賃料は、物件が古くなるにしたがって下落する傾向にあり、また給排水などの水回り等の修繕費が想定以上にかかる場合もあります。
毎年の純収入(賃料収入-税金等の費用)と、最後に売却する時の価格の合計が、投資した資金(頭金+保有期間の金利等)以上になる物件を見つけるには、それなりの相場観が必要です。東京圏では中心部か、大阪圏では都心でも少なくとも最寄り駅からは徒歩5分圏内に位置するものが安心でしょう。
よく耳にするのが、粗利回り(グロス利回り)と純利回り(ネット利回り)だと思います。通常、粗利回りは総収益÷価格、純利回りは純収益(総収益-総費用)÷価格で算出されます。このほかにも、満室時想定利回り(空室部分がないものと想定して算出)等もあります。
なお、粗利回りは現実の空室の割合や現実に支出するであろう費用の額を考慮していないことに注意する必要があります。
一つには粗利回りを比較することです。これはその賃貸不動産から得られる年間の賃料合計(総収益)を売り出されている不動産価額で割ったものであり、グロス利回りとも言います。価格のピ-ク時には、粗利回りと国債等の金融商品の利回りとの開差が接近し、価格の下落時には乖離する事になります。不動産の位置、築年等によってその開差の状態は様々ですが、例えば5年物国債利回りが3%の時代に不動産の利回りが5%であれば、開差はかなり接近しているため、ほぼピ-クと判断され、買い時ではありません。不動産は国債等に比較して換価リスク等があるため国債よりも利回りは高くなるのが一般的です。不動産の利回りが10%程度であれば、5%の時より不動産価格は低いことになり、また、国債の利回りとの開差も大きいため、買い時と判断されます。ただし、これはあくまで一つの目安に過ぎませんので、債券市場も含め、周辺の取引及び賃貸市場の趨勢等、多方面からの検討が必要です。
不動産鑑定評価では、費用性(今建てたらいくらか)、市場性(今どれくらいで取引されているか)、収益性(どれくらい儲かるか)などの観点から検討します。貸している場合、借り主との契約内容が定期借家契約なのか、普通借家契約なのかによって、この建物と土地を購入しようとする買主は異なる可能性もあります。定期借家契約で、まもなく契約期間が終了するような場合には、自己使用を目的とする買主も想定できることから、市場性と収益性の両方を考慮する必要があります。普通借家の場合には、主として収益性に着目されますので、収益性を考慮した売却価格を重視して査定することになります。
賃料も他のモノと同様に需要と供給によって決定されます。近隣で同様の建物が賃貸されている場合には、その建物の賃料水準が参考になります。ただし、築年数や、仕様、設備の状態、管理の状態等が異なると、賃料水準も変わってきます。適性な賃料水準の把握には専門家である不動産鑑定士等による鑑定評価をお勧めします。
賃料水準がやや高くて入居者が集まりにくい場合、賃料そのものを下げるのではなく(下げてしまうと周りの入居者からも下げて欲しいと言われる可能性がある)、一定期間フリーレントを行うことによって入居者を募集する場合があります。収益物件の購入者が関心を持つ要素の一つに、空室がどの程度あるのか、あるいはどの程度の稼働率なのかがありますので、フリーレント期間を長期にすることによってとりあえず満室にしているケースもあります。
評価は、周辺で同等の建物があればそこで成約される賃料水準を把握し、賃料水準と空室率(あるいは稼働率)の相関関係を分析します。その上でこの収益物件でのフリーレントの有無を含めた個別の賃借人毎の賃貸借契約内容を確認します。この物件の現行賃料から得られている実際の額が将来増えるのか減るのか、退去のリスクはどの程度なのか等を検討します。その上で毎年平準化して得られる収益や、各年に得られるであろう収益を把握し、価格を検討します。
あります。まず、相続がいつ発生するか分からない点です。例えば相続が発生しないまま10年が経過したとします。最近の賃貸共同住宅建設の大部分が相続税の節税を目的としていますが、周辺の人口構成等を考えずに闇雲に建設してしまうと、結局賃借人が入らないことになる可能性があります。また、初期投資を抑えようとして出来るだけ建築費がかからない低品等の共同住宅を建てた場合には、人気の点で周辺の同様の物件よりも落ちることになる可能性もあります。また、賃貸住宅は10年程度経過すると、改装が必要となってきます。相続が発生せず、当初の目的である節税にも使えずさらには不稼働資産になってしまうリスクがあります。当初、不動産会社に借り上げ保証が行われたとしても数年毎に借り上げる賃料の見直しが行われる可能性があり、最悪の場合には、借り上げ契約そのものが終了する事もあります。したがって、賃貸住宅を建てて所有しようとする場合には、節税対策のみの観点ではなく、収益物件として充分リタ-ンが得られる場所や品等なのかを充分にリサ-チをした上で実行するべきです。
なお、過度な相続税の節税が認められなかった最高裁判所の判決が出ていますので、注意が必要です。