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不動産評価と土地価格アドバイス

専門家のアドバイス
善本 かほり

不動産評価と土地価格アドバイス

不動産評価と土地価格
アドバイス

不動産鑑定士
有限会社arec
善本 かほり

2015年12月号

「不動産価格・査定・鑑定評価等」について、不動産評価の仕組みを解説した不動産鑑定士のアドバイスです。

不動産とは・・・、不動産の価格とは・・・、不動産価格要因とは・・・

 この度「不動産の評価と、土地価格」に関するアドバイスを担当させていただくことになりました、バリュー・ジャパン・パートナーズ株式会社です。不動産の価格ってどうなっているの?不動産の価格はどのように決まっているの?ということを解りやすくお伝えできれば良いなと考えております。

 さて、皆さまの生活に欠くことができない不動産ですが、身近過ぎて特に何も意識せずに日々暮らしておられる方が大半だと思います。

 不動産の評価に関わる時、それは、実は「部屋を借りようかな」そんなことからも始まりまっています。

 部屋を借りようと思ったらまず、不動産屋さんに行ってみると思います。そこで、「予算は?」「広さの希望は?」「設備の希望は?」「何階が良いですか?」など色々と聞かれて、希望に見合った色々な部屋を紹介してもらうでしょう。そして、気に入った部屋があれば、見学に連れて行ってもらうことになります。そう、この、「気に入ったのがあれば」という時点で、ある意味もう皆さんはその不動産(この場合はお部屋)を評価しているのです。

 ご自身の希望(学校から近いとか、南向きで日当たりが良いとか、ワンルームではなく1LDKが良いとか)と、予算を考えて、ここまでなら出せるなあ、これ以上は無理だなあとか考えられると思います。でも、その人個人が持っている好みや嗜好だけで選ぶと、住んでから、実はここも考慮すべきだったな、という点が抜け落ちてしまうことがあります。


 それでは、どのように評価したら良いのか。評価の話に入る前に、まず「不動産とは」というお話をしなければなりません。


 不動産と聞けば、普通思い浮かべるのは「土地」や「建物」だと思います。

 そのうち「土地」は、他の「物」と同じように売買されますが、他の「物」と全く違う性質を持っています。それは「動かないこと」です。正確には、地震による地盤のズレ、地核の変動などが起こっているのですが、その様な特別なことを除き、基本的には動かない、動かせないものです。その他の物は何らかの形で、移動、運ぶこと(建物ですら、解体すれば運べます)ができます。しかし、土地へは私達が動いてその場所へ出向かねばなりません。


 経済活動の基本資源としてあげられる三原則も「土地」「資本」「労働」となっています。これは土地だけが他の資本と異なるからです。「労働」は人を指し、「資本」は土地と労働以外のもの全てを指し、建物や償却資産はここに含まれます。

 少し話がややこしくなりましたが、「不動産とは」となると、結局は「土地」と「その定着物」を言います。

 つまり、建物は土地に定着しているので「不動産」です。

 全ての建物は、宙に浮かせることはできないので、土地があって初めてこの世に存在することができます。


 「不動産の価格」と一口に言っても、土地の価格なのか、建物の価格なのかによって異なります。不動産屋さんで家の相場を訊いてみたところ「坪80万円ですね」という話が出たとしましょう。その坪80万円は、土地の単価でしょうか?それとも、建物がのっている状態で建物代を含めた総額を土地の面積で割った単価でしょうか?さらには、分譲マンションの平米当りの単価でしょうか?訊く対象が異なった場合、総額にすると全然違う価格になってしまいますね。

 また、家賃は、建物を使用しているので、建物だけの賃料だと思われがちですが、実は先に挙げたように、建物は土地があってはじめて存在できるものですので、家賃には土地の価格も何らかの形で配分されています。

 土地と建物を組み合せた価格の場合、「組み合せ」によって価格の成り立ちが変わってきます。「組み合せ」も色々な角度からの見方があります。

(1)種類の組み合せ

(2)権利の組み合せ

 単純に土地と建物の価格を夫々別々に出して足したら、その組み合せの価格になるというものではありません。


 例を挙げてみましょう。


(1)種類の組み合せによって価格が変わるということについては、感覚的に理解しやすいと思います。

 例えば、前記の例だと、①2階建の木造住宅と②鉄筋コンクリート造りの事務所ビルとは、そもそも建築費が違うでしょう。イメージとしては、②の方が①より高いと思いませんか?

 しかし、例えば、①は某有名住宅メーカーの注文住宅で新築ですが、②の事務所ビルは築後40年経過していていたるところにクラック(ヒビ)がある、となった場合、どちらが高いか、それは一概には言えません。また、①は東京都港区の一等地、②は地方の郊外の土地上にあるという場合も、①の方が高いかもしれません。


(2)の権利の組み合せによる価格の違いは分かりにくいかもしれません。

 ①土地を持っている人が建物を持っているというのが、最も多いパターンだと思います。そのほか、②以降のような組み合せもあります。

①Aさんが土地・建物を所有している

②BさんがAさんの土地を借りて、建物を所有している(普通借地・定期借地)

③Bさん、Cさん、DさんがAさんの土地を借りて、建物を所有している(マンション等の区分所有建物)

④A、B、Cさん共有の土地にA、B、Cさんの区分所有建物

⑤敷地権の土地にA、B、Cさんの区分所有建物
※敷地権は土地と建物が一緒に登記されていて、分離して処分することはできない

⑥Aさんの土地と建物をEさんが借りている(借家)

⑦BさんがAさんから借りている土地(借地)に建物を建て、Eさんに貸している(借家)


 価格が一律ではない一例を挙げてみましょう。


 「底地」と「借地権」です。

 借地人がいる土地(いわゆる「底地」)を持っている方は、借地権割合というものを聞いたことがあるでしょう。今は、国税庁から路線価図が発表されていて、そこに、借地権割合というものが載っています。底地を持っている方の相続税の申告を行う場合、「底地の価格」は次のような計算方法を用いることになっています。


 「底地の価格」=「更地価格」×(1-「借地権割合」)


 しかし、現実の不動産売買では、上記のような式で出てきた金額で売買金額が考えられているのではありません。底地の価格は、いくら地代をもらっているかに左右されます。地代の額が少ない底地と、地代の額が多い底地の場合、地代の額が多い底地の方が高い価額となります。


 また、「借地権の価格」も、必ずしも相続税路線価図に載っている借地権割合を基にした、下記のような式で得られるわけではありません。


 「借地権の価格」=「更地価格」×「借地権割合」


 借地権の価格は、実際に払っている地代の額が高ければ高いほど、安くなります。不思議な感じがしないでしょうか?借地人の立場になってみると、たくさん地代を払っているのに、借地権価格が安くなるなんて。しかし、買い手の立場に立って考えてみると解りやすいと思います。更地を買って代金を分割払いする場合は、その土地は自分のものになりますが、借地の場合は、地代をいくら払い続けても、その土地は自分のものにはなりません。つまり、借地権を買うということは、借地人になった後に地代を払い続けていくことになる訳ですから、払う地代は安い方が初期投資は高くても採算が合う、となるわけです。

 ただしそれは、地主以外の第三者が借地権を買う場合の話で、地主が借地権を買う場合には、必ずしもこの理屈で売買が成立するものではありません。


 国税庁の示す相続税財産評価基本通達では、「底地の価格」と「借地権の価格」を足すと更地の価格になるという前提となっていますが、現実の市場では、「底地の価格」と「借地権の価格」は足しても必ずしも更地の価格になるとは限りません。

 このように、権利の組み合せによって価格の成り立ちが違うということを理解していないと、現実の「底地の時価」や「借地権の時価」について争いになった際、単純に更地価格に相続税財産評価基本通達の借地権割合をかけて出てきた額を主張してしまって、主張を否認されてしまう、という例もありますので、気をつけましょう。


 このように、色々な分類ができるため、その不動産の価格が成り立っている要因も様々なものがあります。次回からも実例を挙げて解説していきたいと思います。それではまたよろしくお願いいたします。

善本 かほりKahori Yoshimoto不動産鑑定士

有限会社arec http://www.arec.co.jp/
有限会社arec 代表取締役 ノンバンクにて法人不動産担保融資営業及び担保額査定業務に携わる。その後、株式会社中央不動産鑑定所に入社。平成8年不動産鑑定士登録。得意分野は、売買、賃料、相続、金融、会計等に関する不動産鑑定評価。