「不動産価格・査定・鑑定評価等」について、不動産評価の仕組みを解説した不動産鑑定士のアドバイスです。
土地の価格(後篇)
前回(2016年1月号 土地の価格(前篇))は、時価・公示価格・相続税路線価・固定資産税評価額について別々のものではなく、相互に関連しあっていることをお伝えしました。
今月は、土地価格のまとめと留意すべき事項についてお伝えします。
①と②④は、角地や、二方向で道路に面するなどの要因があれば、その要因を含んだその土地そのものの価格です。③は一定の地域内で標準的な土地(一方でのみ道路に面し、間口と奥行や規模が特殊ではない正方形または長方形の土地)の価格です。④の固定資産税評価額ではなく固定資産税路線価の場合には、③と同じく標準的な土地の価格です。
①の時価はA~Dの土地のいずれの価格も指しているといえる一方で、標準的な土地やEの価格を指すこともあります。また、早く売って資金を作りたかった、隣の土地が以前から欲しかったところに売りに出たので慌ててかったなどの事情がある場合には、取引された価格といっても必ずしも時価とは言えないことに注意してください。
②の公示価格は標準的な土地やEの土地が選ばれて価格が示されていることが殆どですが、BやCのようなものもあります。公示価格が記載されている官報、地価調査価格が記載されている公報には、角地かどうかや、間口奥行の比率などの情報も載っていますので、確認することができます。
③の相続税路線価は標準的な土地やEの価格が示されています。ですので、A~Dのような土地の場合には、標準的な土地の価格とはその違いによる価格差が生じることに留意してください。
④の固定資産税評価額は、①と同じく、A~Eのいずれも、そのものの価格として示されたものです。ただし、固定資産税路線価は③と同じく、標準的な土地やEの価格が示されています。
また、これらの価格と実際に検討しようとしている土地とが、似たような地域にあるのかどうかによって、比較しても意味が無い場合があります。
今まで住んでいた土地を売りたいと思って、周りの公示価格を調べてみると、同じ町内に公示価格があります。しかし、その地価公示は人通りが多い大通り沿いで、店舗が建ち並んでいる商店街内の土地の価格です。そのような場合、売りたい土地よりも公示価格の方が高い価格になっている可能性がありますので、その価格をアテにして計画を立てると、思った額で売れないということがあります。町名が同じでも、「似たような地域」とは言えない場合にはその場所との価格を比較しても意味がありません。町名が違っても、似たような住宅地の価格がどうなっているかを調べてみるようにしましょう。
「土地の価格は一物四価」は、「一物一価」と同じ視点から言われていることではなく、逆にやはり土地も一物一価だということがおわかりいただけたでしょうか。
これらの公的土地評価の多くは1月1日の価格を求めることになりますので、その作業のために、不動産鑑定士はお正月をゆっくり迎えることができないのです・・・。
次回は、似たような地域とはどのような視点から判断するのかについてお話しする予定です。ありがとうございました。