不動産、特に土地は、目の前に示されている価格がなぜその価格になるのかがわかりにくいと思います。そのような、わかりにくい不動産の価格について、少しでも理解を深めていただけるように解説しています。
不動産の価格はどのように決まる?個別的要因に左右されるとは?
◆道路の条件
◆環境
◆行政の規制
◆建物(住宅)
◆農地
◆山林
◆道路の条件
都市計画区域内で建物を建築する時は、原則として幅員4m以上の「道路」に対して2m以上の間口がなければなりません(建築基準法第42条、第43条第1項)。ここでいう「道路」は、建築基準法という法律で定義される「道路」で、私道であっても条件を満たしていれば「建築基準法上の道路」として扱うことが可能です。
しかし、アスファルト舗装されて道路状になっていても、私人が所有している土地で「建築基準法の道路ではない」場合には、その道路状の土地のみに面している土地を敷地として建物を建築することができない場合があるのです。そのような物件は、今の建物がある間は住むことができたとしても、将来建て替えや大規模な改修すらできないかもしれません。また将来売ろうとした際にも、次の買い手が見つからない可能性があります。したがって、このような物件は金融機関から担保不適格と判断され、融資が受けにくいということもあり、安くなっているのです。
都市計画区域内で建物を建築するためには、原則として建築基準法上の道路に2m以上接している必要があります。ただし、建築基準法上の道路に面していなくても、その敷地が、国や都道府県、市町村等が所有する幅4m以上の道路状の土地に面している場合や、その敷地の周辺に「広い空地」がある場合等の要件を満たしている場合には、特定行政庁(都道府県や一部の市)の認定や許可を得た上で建物が建築できる場合があります(建築基準法第43条第2項第1号及び第2号)。
許可を得るための「広い空地」とは、道路状に舗装された土地等を指しますが、原則として、許可を申請して初めて建築出来るか否かが判断されますので、許可申請の前においては建築基準法上の道路に面する土地と比較して価格は安くなり、売却も困難となる場合があります。
なお、認定及び許可権者である特定行政庁によっては、一定期間建物が建ち並んでいた場合には認定や許可が可能な場合があるとして、認定や許可の基準や要件を整理して公表していることがあります。ただし、特定行政庁によって基準や要件が異なるため、個別に確認を行う必要があります。また、許可を得て再建築が可能である場合でも、建築予定の建物の用途、構造や、空地の所有者の同意が必要である等の制約があることが多いため、建築基準法上の道路に面する土地と比較すれば安価になっていることが多いです。
無道路地は、民法第210条(いわゆる囲繞地通行権)によって周辺の他の土地を通行する権利は守られていますが、単独で建物の敷地として利用することはできません。その土地と公道までの距離等によって価格は変わります。公道に面する土地と比較して半額以下となることもあります。
建築基準法では道幅が4m以上の道路に面する必要がありますが、4m未満であっても特定行政庁が4mの建築基準法上の道路とみなしていて、その道路に面する土地には建物を建築することができる場合があります。「2項道路」、「みなし道路」と呼ばれる建築基準法第42条第2項に定める道路に面している場合などです。この場合、法律により道路の中心線から2m迄は敷地としての利用ができず、道路として提供しなければなりません。道路の中心線から2mまで敷地を後退することを「セットバック」と呼んでいます。セットバックすべき範囲に塀や門などが設置されていることがありますが、建物を建て替える時には、セットバックすべき範囲内に建物はもちろん、塀や門扉なども設置することはできません。したがって、セットバックすべき部分にはほとんど価値はないとして取引されます。
このため「セットバックが必要」となっている場合には、実際に建物の敷地として使える範囲の面積に対して土地の価格がいくらなのかを確認する必要があります。
私道負担があるとなっている土地の場合には、その土地に私道が含まれているため、実際に建物の敷地として使える面積がどのくらいあるのかを確認する必要があります。
敷地面積に対し、建築可能な建物の建築面積、床面積の割合(建ぺい率や容積率)は、国及び地方公共団体が定める都市計画によって決められています。私道が全部自分の所有地であっても、建築基準法上の道路となっている場合には、その私道部分を敷地面積に含めることができませんので、建物の建築面積、床面積を思ったほど広くとれないことがあります。また、建築基準法上の道路が含まれている場合、固定資産税を非課税とすることができますが、非課税とされずに全体が宅地として固定資産税が課税されていることがあります。
全体が宅地として課税されていても、私道部分が建築基準法上の道路の場合は、私道部分にはほとんど価値がないことがありますので、物件の価格を検討する際には注意が必要です。
「公道」というのは「私道」に対する用語として一般的に用いられている言葉ですが、正確な定義はないようです。不動産の価値を左右するのは「建築基準法上の道路」か否か、です。市町村が所有する道路であっても、「建築基準法上の道路」ではない場合があります。「建築基準法上の道路」か否かは、市役所、町村役場で調査ができます。
私道であっても、建築基準法上の道路であれば、市町村道に面している場合と土地の価格差はほとんどない場合もあります。ただし、その土地のための上下水道やガスなどの供給・排水管がその私道に埋設されている場合、埋設管の修理などで私道を掘削しなければならず、私道の所有者から掘削の同意や承諾を得ることが必要な場合があります。私道の所有者の承諾や同意が得られるか否か不明のことがほとんどですので、買い手がつきにくくなり、価値は低くなります。
法務局にはいわゆる「公図」という、一定のエリアの土地の配置が記載された図面※5 が備え付けてあります(正式な用語としては単に「地図」ですが、普通の地図と区別するために「公図」と呼ばれています)。水路がこの公図に記載の水路(「水」と書かれています)である場合、法定外公共物として市町村が所有しているのが一般的です。所有地と道路とをつなぐための進入路として水路に橋など設置する必要が生じた場合、なぜ橋を設置する必要があるのかなど目的に応じた利用のための最小限の範囲内で、水路を占用使用する許可を市町村から得る必要があります。
橋等の設置に関しては幅が制約される場合があり、市町村によっては使用料が賦課される場合もあります。したがって、水路が介在していない直接道路に面している土地と比較して価格は安くなるのが一般的です。
◆環境
一般的に墓地は、嫌悪施設として周辺の不動産価格に悪影響を与えます。
特に住宅地で、墓地が直接見える場合は大きなマイナス要因となります。
中には気にしないという方もおられますが、例え墓石が直接見えなくても、隣やすぐ近くに墓地があるということに心理的嫌悪感を抱くことが一般的ですので、墓地が周りにない土地の価格と比較すると若干低くなりますが、その程度は墓地が直接見える場合と比較して緩和される傾向はあるでしょう。
ただし、公営墓地の青山霊園に隣接する高級住宅地のように霊園に隣接すること自体を広告に謳っている場合もあります。
高圧線(7,000V以上)が土地上空にある場合は通常、土地の登記の権利部(乙区)に地役権の設定(承役地)登記がされており、地役権の面積も記載されています。また、土地の一部に高圧線のための地役権の登記が設定されている場合には、その範囲を示した図面(地役権図面)が法務局に備え付けられています。
高圧線下にある土地(線下地)には建物が全く建築できないものや、建物の構造等(主に高さ)が制約を受けるものがあります。したがって、線下地の位置や土地利用が制約される程度に応じて価格は安くなります。
一方、土地の上空にはないものの、至近に高圧線や鉄塔がある場合には、建物の建築の制約等はありませんが、圧迫感や心理的な嫌悪感を抱くことが一般的ですので、何もない土地と比較すると価格は安くなります。
結論から言いますと、土壌汚染が発見された場合にどのくらい価値が下がるかについては、対策費用次第です。有害物質の種類や汚染の程度(広さ及び深さ、地下水汚染の有無)と、その土地に汚染がなかったなら使われるであろう使用方法によって対策の方法が異なりますので、費用も異なります。
調査方法については、費用はかかりますが、専門の業者に依頼することをお勧めします。なぜなら、個人では調査に限界がある上、汚染状況を正確に把握せず、浄化等の対策もせずに売却した後に、買主が深刻な土壌汚染を発見した場合、売主に契約不適合責任が問われ、多大な損害賠償を請求される可能性があるからです。なお、調査費用は、調査の程度(段階)と精度によって変わります。
第1段階(フェーズ1)の調査費用は安いのですが、個人でもできる簡単な調査で、精度は低いものです。この段階では、登記を遡って取得したり、過去の住宅地図や航空写真等を確認することにより、過去の土地の利用の状態を推測する程度です。さらに、当該土地上での土壌汚染対策法による、水質汚濁防止法等の有害物質使用特定施設の届出の有無や、土地が存する区域が要措置区域等に入っていないかどうか等の確認が含まれます。
第2段階(フェーズ2)の調査は、上記フェーズ1で入手した資料上で、土壌汚染の可能性があるとなった場合の次の段階の調査で、表層部の土壌の調査と土壌ガスの採取を行います。フェーズ2以降の調査は費用がかなり高くなりますが、正式には法令上も土壌汚染調査会社が実施することとなっているため、土壌汚染調査会社に調査を依頼することになります。
第2段階の調査で、有害物質が検出された場合には、第3段階(フェーズ3)の調査を実施することになります。これは、有害物質が検出された部分についてボーリングを実施して土壌を採取し検査を行います。
土壌汚染があると判定された場合、調査結果が都道府県知事に報告され、土壌汚染のおそれがあると認められると、その土地は、①健康被害が生じるおそれがないので当面同じ利用方法を続ける場合には直ちに汚染土壌の除去等の措置を行う必要はないが、用途を変更するときには届出が必要となる「形質変更時要届出区域」か、②土壌汚染により人の健康被害が生ずるおそれがあり、除去や封じ込め対策等が必要な「要措置区域」に指定されます。
汚染土壌の処理の方法としては、土壌除去、土壌入替、封じ込め、立入制限、盛土、舗装などがありますが、汚染土壌を搬出するには、都道県知事の許可を受けた土壌汚染処理業者に依頼しなければなりません。シアン化合物など、「検出されないこと」とされている有害物質が検出された場合には、処理費用が割高になるなど、どのような汚染物質が検出されるかによって処理費用も異なります。
◆行政の規制
都市計画道路に指定されている範囲内は、都市計画法第53条及び第54条の規定により、建築可能な建物の高さや構造に制約があります。その物件の価格がどのような影響を受けるかは、都市計画事業の次のような進捗段階によって変わります。
- ① 行政が都市計画で道路の計画線を定めただけの段階(計画決定段階)
- ② 都市計画事業として正式に認可された段階(事業認可段階)
1 土地の価格
①の場合、法律では原則として2階建以下の鉄骨造や木造などの建物は建築が許可されることになっていますが、計画決定段階のまま長年推移してきた経緯から、自治体によっては、3階建でも容易に移転や除去ができる場合には許可されることもあります。
ⅰ 低層の建物の敷地の場合
3階建までの木造や鉄骨造などの建物を建てるのが通常だろうと思われる土地の場合には、計画決定段階の都市計画道路の範囲に入っていても、範囲に入っていない土地との価格差はないこともあります。
ⅱ 中層の建物の敷地の場合
4階建以上の建物の敷地として利用できそうな土地の場合には、都市計画道路の範囲には4階建以上の建物の建築は原則として許可されませんので、都市計画道路の範囲が土地の全般に渡ったり、一部であっても建物の配置に制約が生じたりする場合には、範囲に入っていない土地と比較して価格は低くなります。
②の場合、いずれ事業者(都市計画事業を行っている主体)により、都市計画道路の範囲に入っている部分が買収されることになりますが、公共用地となるための買収(これを「補償」といいます)なので、その買収価格は都市計画道路による影響はないものとして算定されます。したがって、ⅱの場合であっても、都市計画道路に入っていない土地との価格差はなくなると言えます。ただし、事業認可段階になってから事業者以外と売買する場合には、売買価格を含めた一定の事項を事業者に届出る必要があります。事業者は、届け出た価格で買い取ることができるとされていますが、あまりにも売買価格が高い等で買い取らないとされた場合には、将来の買収時には、売買価格よりも低い価格での補償しかされない場合があります。
2 建物の価格
①の場合、建物の価格は都市計画道路の範囲に入っていても特にマイナスにはなりません。既に4階建以上の建物が建っていて、後から都市計画道路の範囲に入ることになった場合には、その建物は取り壊す迄はそのまま使用できるため、マイナスにはなりません。
②の場合も建物の価格は特にマイナスにはなりません。建物の敷地となっていた土地が買収されてしまうと、今まで使用していた建物も同じ状態では存在できなくなってしまうため、事業主体から補償金を支払われることになります。この補償金の額は、まだ使用できる状態の建物の場合には買収前の建物での生活等の維持を保障するために支払われるので、買収前の建物と同等の建物を再建築する前提で算出されます。古い建物の場合でも、新築価格とまではいかないまでも、一般に売りに出す価格よりも高い金額が補償金として支払われることもあります。
◆建物(住宅)
建築費も高額、内装や設備も豪華、それにご自宅には長年住んで愛着もある場合、高く売れることを望まれるでしょう。しかし、たまたま買主が従前の持ち主と同じ趣味趣向であった場合を除き、一般住宅地域であれば、内外装や設備が豪華であっても、そのような内装設備の費用を回収できる程度に高額な買い希望価格を提示する買主は少ないといえます。一定のエリア毎に取引が成立する土地建物の総額の価格帯(相場感)があり、それを超える価格になると買主は少なくなります。一方、品等の高い高級住宅地域に存在している場合には、そのような地域で建物を所有しようとする買主は、自らの趣向を凝らした建物を建築する、または改築・改装を行うことが多いといえます。したがって、前の持ち主の趣向が反映された豪華な建物は、建築後年数が経過していないものでも買い手にはその価値を認めてもらいにくく、安くなってしまうこともあります。
リフォームすれば居住環境は従前と比べて通常は良くなりますので、リフォーム前と比較して売り易くなるのが一般的ですが、リフォーム前の建物価格にリフォーム費用を加算した額を上回る価格で売却できるとは限りません。リフォームされた部分は建物と一体となり、結局は周辺の同じ築年数の中古住宅の価格相場等と、その住宅を買おうとする買主の属性(年齢、家族構成、所得水準など)で価格が決まることになります。
個人がリフォームする場合の費用は、不動産会社が自社でリフォームする場合や、提携しているリフォーム会社に支払う費用と比較して、どうしても割高になりがちということにも考慮が必要です。
買い手がおそらくリフォームするであろうと思われる場合は、リフォームの自由度を残しておいた方がいいこともあります。
古家の状態によりますが、空き家のまま保有すれば、放火や犯罪の温床になるというリスクがあります。一方で、解体すれば固定資産税の住宅用地の特例措置(土地(小規模住宅用地:住宅1戸につき200㎡までの部分)に住宅が建っていれば課税標準額は本来の課税標準額の1/6に軽減、つまり固定資産税が1/6になる)が適用されなくなり、固定資産税の負担が大きくなります。そこで放置される空家が年々増えてしまうことに対応し、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。この法律では、きちんと管理されている空家は対象になりませんが、一定の条件を満たす荒廃した空家がある敷地は、固定資産税の小規模住宅用地の特例措置が適用されなくなる税制改正が行われました。法律の制定当初は単なる空家ではなく、周囲に著しい悪影響を与えるような管理状態の悪い空家(例えば、通学路にある外壁や軒裏が落ちてくる恐れが高い家屋等)を「特定空家」としてこれらに対応する内容でしたが、2023年の改正において、将来的に特定空家になり得るような空家に対しても市町村が予防的に対応し得るようになりました。空家を所有している方は留意しておく必要があります。また、京都市では2026年から市街化区域内にある居住実体のない住宅(別荘、セカンドハウスを含む)に対して固定資産税とは別に非居住住宅活用促進税を導入するという条例が、2023年5月に公布されました。空家の流通促進が目的とされています。全国的な拡がりは未定ですが、同様の条例が制定される可能性はありますので、注意が必要です。
売却する場合には、古家の状態で改修する費用と解体する費用をそれぞれ検討し、古家付きで売却する場合の価格と更地としての価格から古家解体費を控除した価格とを比較して検討する必要があります。
管理費・修繕積立金はそのマンションの所有者全員から拠出されるもので、マンションの日々の管理や修繕、おおむね10年ごとの大規模修繕等に使われます。分譲時のマンションのグレードによって必要となる費用の額は異なりますが、分譲後の管理の状態の優劣、修繕の多寡によりマンションのグレードが維持されたりされなかったりするため、これらの費用の額は将来のマンション自体の市場価格を大きく左右することになります。
管理費・修繕積立金の額が周辺のマンションと比較して高額であっても、そのマンションのグレードや設備、総戸数等に照らし合わせて、将来に必要とされる費用の額として適正な額と考えられる場合には、そのマンションにとっては高いとは言えないことになります。逆に、これらの額が周辺の同じようなグレードと総戸数のマンションよりも低いような場合には、分譲当初に購入意欲を誘発するためのものである可能性が高く、将来大規模修繕を行う時期が来た時には、結局修繕積立金不足等により追加で多額の費用を一括で拠出することになったり、大規模修繕等を先延ばしにすることになって資産価値を下げることになることがあるので、要注意です。
ただし、当初適切に修繕計画を立てていたとしても、計画した時期から10年以上経過している場合、その後の建設材料や人件費の上昇により、積み立てた額では修繕費用が足りないということも起ってきています。購入後は毎月支払わなければならないものですので、購入前に将来の修繕計画も予め確認することが大切です。
なお、同じグレード、設備のマンションで比較した場合には、総戸数が多いマンションの方が総戸数が少ないマンションよりも各戸の管理費等の額は低くなります。
建築時期や立地条件が同じなら、次のようなものが挙げられます。
1 物理的なもの
①建物全体の仕様
構造では、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造等の違いがあります。建築費は鉄骨鉄筋コンクリート造が最も高くなる傾向がありますが、構造だけではなく、外装のグレード(大理石貼り、タイル貼り、吹付材仕上など)にも左右されます。
②耐震基準を満たしているか否か
昭和56年(1981年)6月以降に建築確認を受けている場合には、原則として耐震基準を満たしています。建設の時期を問わず現実に耐震基準を満たしていないものは、耐震補強工事が実施されたとしても、耐震基準を満たしているものと比較して安くなっていることが多いです。
③共用廊下の配置
近年のタワーマンションでは、共用廊下が壁に囲まれているものが増えています。雨風が吹き込まないため、外廊下のマンションよりも価値が高いとされています。
④共用設備の状態
駐車場が機械式か否か、駐車場台数は居住者の車両保有台数とバランスがとれているか、エレベーターが複数あるか否か、オートロック、集会所等の共用ルーム、宅配ボックス、BS共用アンテナ、インターネット設備、ケーブルテレビ設備等の有無で価格に差が生じます。
最近では、大浴場、ゲストルーム、マシンジムルーム、ラウンジなどを設置しているマンションもあります。その分管理費・修繕積立金の額が高くなる傾向があります。
⑤分譲主のネームバリュー
全国展開している大手と言われる不動産会社や、マンション開発業者が建設したマンションはブランド化し、小規模な地場の不動産会社やマンション開発業者が建設したマンションよりも人気が高い傾向にあります。
2 管理の状態、サービス
①管理組合の活動状態
分譲マンションは、通常マンションの所有者全員を組合員とする管理組合を組成しています。この管理組合が機能しているマンションと機能していないマンションでは、物理的なメンテナンスの状態が異なることがあり、結果的に価格に影響を与えます。
②管理の方法
管理組合が直接自主的に管理しているのか、外部委託しているのかに分けることができます。自主管理であるからといって、必ずしも価格が安くなるとは限りませんが、自主管理のために管理費・修繕積立金の滞納額が発生しても回収できていない、修繕計画等が行われない、あるいは実施されていないなどがある場合は、メンテナンスの状態が悪くなり、価格は安くなります。
管理組合が外部のマンション管理会社に管理を委託している場合には、マンション管理会社が適切な管理計画を管理組合に提示し、管理計画通りに実践しているか否かによってマンション全体の価値は変わってきます。
現実には建築後日が浅いマンションについては、外観から管理の状態を判断するのは難しいのですが、管理会社の管理実績と、管理人の配置の状態は、マンション全体の価格に影響を与えています。管理人の配置の状態には、管理人が住み込み(常勤)なのか、毎日通ってきているのか(日勤)、隔日や短時間のみの清掃要員として配置(巡回)されているのかの違いがあります。常勤が最も管理費が高く、日勤、巡回の順に管理費は低くなる傾向があります。
③サービス
最近では、管理人とは別にホテルのようなコンシェルジュを配置し、マンション内の住民を対象として宅配便やクリーニングの受け渡しなどのサービスを行っているマンションもあります。
また、家庭から出るゴミを捨てることができる場所が24時間使える、各階にごみ置き場がある、ダストシューターがある、全戸生ゴミディスポーザー付下水処理などがあるマンションもあります。
これらのサービスは、不動産の価値というよりもそのマンションの管理費によって運営されるサービスの価値と言えますが、マンション価格に影響を与えています。
1 仕様のグレード
タワーマンションなどでは、特定のフロア毎に共用部分の内装に差をつけたり、特定のフロアのみが利用できるエレベーターを設置している場合があります。
2 階層
1階は、防犯性や外から部屋の中が見える可能性等があることから、それ以上の階と比較して価格は安くなりがちです。ただし、1階でも生け垣などで外から見られることはなく、専用庭があるような場合は2階よりもむしろ高くなる場合もあります。
高層階に行くにしたがって通常は眺望が良くなりますので、価格が徐々に高くなる傾向がありますが、周辺の建物が高く、日照等が変わらない場合はこの限りではありません。むしろ、地震が発生した時に避難しやすいという理由で、3階などの低層階を選ぶ高齢者も増えてきています。
なお、タワーマンションの最上階は分譲時の価格が他の階よりも高く設定されていますが、最上階はそのマンションで1階しかないというプレミアムが反映されていると考えられます。
逆に、旧公団のマンションのように5階建でエレベーターが設置されていない等の場合には、最上階は昇り降りに大変な労力を要することになるため、3階等の中低階層よりも価格が安くなる傾向があります。
3 位置
①エレベーター横
廊下が壁で囲まれていないマンションの場合には、廊下側に窓が設置されているのが通常です。エレベーターの真横の住戸などは、最も多くの人が通過する可能性があることやエレベーターの作動による不快音等から、他の住戸よりも人気がやや低くなる可能性があります。
②端住戸
一番端の住戸で廊下側以外の二方に窓やベランダがある場合は、通風が良くなるため、ベランダが一方向の住戸よりも価格は高くなる傾向にあります。
③ベランダの方角
最も人気が高く価格も高くなるのは、南東の角(南側と東側にベランダまたは窓のような開口部がある)住戸です。同じ角住戸でも、北東や北西の角住戸は、南東角の住戸よりも日照時間が短いため、価格が低くなることがあります。これらは日照の側面からの傾向ですが、眺望が北向きの方がいいというタワーマンションの場合は必ずしも北側が安くなるとは限りません。
また、北東側や北西側住戸で広いルーフバルコニーが利用できる場合はその付加価値が認められて、南東角住戸と同程度の価格となることもあります。
そのバルコニーに、占用使用料の負担があり、相応の使用料を管理組合に支払っている場合には、その使用料の額が高いか安いかもマンション自体の価格に反映されることがあります。すなわち、バルコニーの広さとその使用料の双方が価格に反映されるため、バルコニーが広いというだけで価格にプラスとなるとは限らない場合がありますので、注意が必要です。
隣の家の騒音は買主、不動産のプロである不動産仲介業者にとっても知りにくい情報です。後日トラブルにならないように、事前に説明して売却することをお勧めします。なお、騒音問題は受け取り方の個人差が大きくその程度によって価格への影響の程度は異なります。
◆農地
その農地がある場所が、都市計画区域の①市街化区域であるか②市街化調整区域であるかによって売却手続き、価格が大きく変わります。
市街化区域か市街化調整区域かは、その農地がある市町村役場で調べることができます。近年ではWEBでも調べることができる市町村が増えています(ただし、変更があった場合にその変更が即時WEBに反映されていないこともありますので注意が必要です)。
①市街化区域内の農地
売却の手続きとしては、まず始めに農地法の許可が必要です(農地の場所と買主の住所が同じか否かで許可権者が変わります)。
農地を農地のまま売買するのみなら第3条の許可が、宅地にする(転用)ために売買するのであれば第5条の届出が必要です。
一般的には下記の市街化調整区域内農地と比較して、これらの許可は容易ですので、例えば建築基準法上の道路に面する農地などは、宅地並の価格になる場合があります。
②市街化調整区域内の農地
売却の手続きとしては、上記の市街化区域内の場合と同じく農地法の許可の取得が必要となりますが、原則として買主が農業従事者等である必要があります。
転用することも厳しく制限されるため、上記の市街化区域内農地と比較すると、価格はかなり低くなり、宅地価格の数分の1程度になる場合もあります。
地価公示標準地等の公的な価格は公表されておらず、かつ、買い手が制約されていることや、実際の売買の結果も公になるものが少ないことから、取引相場の把握は難しくなっています。売買価格はその土地の固定資産評価額が一つの目安となっているのが現状です。
◆山林
宅地開発が可能な山林以外の場合に価値を有するのは、檜、杉等の用材林が植林されている林地(用材林地)です。用材林地は土地そのものの価値というより、その土地にある檜や杉などの立木の価値ではかられるため、その立木の樹種、林齢、品等、直径などによって市場価値の良否が決められ、取引価格が決定されています。
なお、法令上も物理的にも宅地開発が可能な山林の場合には、宅地開発を行って採算が合うと判断した不動産会社が買い手となることがあり、その場合の価格は、造成前宅地の価格となります。造成前宅地の価格とは、樹木の伐採や整地、道路整備など、宅地に造成する費用や造成期間を考慮する分、整地されて即建物の敷地にできるような土地の価格よりも安くはなりますが、上記用材林地の価格よりは通常高くなります。
山林と言っても、登記上の地目が「山林」となっているだけで、一定程度整地されて周辺に住宅が建ち並んでいるような場合には、通常の宅地の価格で取引されますので、周辺の住宅地の価格が参考になります。
法務局にその土地や周辺の土地の地積測量図が備え付けてあり、一見区画が整っているように思えても、ウェブサイト等の航空写真でその所在地付近を確認してもどこにも建物の影が無いような場合、その土地はバブル期に行われた、いわゆる「原野商法」で販売された土地の可能性があります。行政上の規制などにより、そもそも建物を建てることができないものも多く、その場所に未だ電気や水道が整備されていない場合があります。調査の結果そのような土地の場合には、残念ながら別荘地としての価値はなく、売却も困難です。
保安林は通常の山林と異なり土砂崩れを防ぐ等の役割があるとして指定されているため、宅地等他の用途への変更ができません。したがって、市場価値はほぼ無いに等しく、売却も困難です。
保安林の目的は「水源かん養」のためや、「土砂流出防備」のためなどがありますが、後者のみの場合は保安林が解除される可能性も若干ありますが、「水源かん養」を目的とする指定はかなり厳しい規制になりますので、公益性が認められる事業以外は解除の可能性はほとんどありません。