不動産、特に土地は、目の前に示されている価格がなぜその価格になるのかがわかりにくいと思います。そのような、わかりにくい不動産の価格について、少しでも理解を深めていただけるように解説しています。
不動産の価格はどのように決まる?一般的要因に左右されるとは?
地価公示価格は、過去1年間の土地価格の動向を示していますので、近い将来の地価動向に対しては、一定の傾向として参考にすることができます。
国内の金融・財政政策、税制や法律の変更はもちろんのこと、諸外国の政策や景気動向等も日本の不動産価格に影響を与えています。2008年には、アメリカに端を発したリーマンショックが日本の不動産価格に大きな影響(下落)を与えましたが、インバウンドの急増、東京オリンピックの開催決定などが大きな影響(上昇)を及ぼしました。
2019年末に世界中で起こった新型コロナウィルス感染症の感染拡大は、それ自体が日本だけでなく諸外国の政策や景気に影響を与え、日本においてはそれ以前まで急増していたインバウンドの需要に支えられていた商業地の地価が下落に転じることになりました。一方住宅地は、当初取引が停滞する期間がありましたが、地価には大きな影響はありませんでした。
また、地域レベルでは特定の地域内に新たに道路や鉄道が開通することにともなって、インターチェンジや駅が新設されるなどの交通施設の整備の動向や、大規模な未利用地の再開発に向けた行政による規制の変更、再開発の進捗などは、地域の不動産の価格に影響を与えます。国レベルから地域レベルまで程度の差はありますが、その時代時代に起こる出来事が土地価格に影響を与えるため、同じ傾向が長期間続くとは限りません。
訪日外国人観光客は、買い物を目的としていることも多く、円安が続いていることも相まって物品販売が好調なため、物品販売店舗は、多少家賃が高くなっても今の立地よりもお客様の足が向きやすい場所に店舗を進出させようとしたり、他の販売店舗にその場所を奪われないようにするために、家主に対して高い家賃を払おうとします。その結果、その不動産から得られる収益は大きくなるので、不動産全体を買いたいと思う買主も、より高い金額でその不動産を買おうとします。一方、立地の良いエリアの範囲には絶対的に限界があるので、そのような好条件の不動産の供給は限られています。こうして需要が供給を上回るようになり、地価が上昇することになります。また、リピーターとして来日する外国人観光客は体験型の観光をすることも増えています。円安から日本の不動産が割安になり、体験のリピートを目的に日本の不動産を購入する外国人も増えています。例えば、北海道のスキー場周辺の地価が上昇しているのはこの影響です。
収益物件を購入するにあたり、手元にある自己資金ですべてをまかなった場合には、不動産から得られる収益を不動産価格で割った率が自己資本利回りとなります。購入するための資金の一部を自己資本ではなく融資でまかなう場合には、融資の金利が投資利回りよりも低ければ、金利と投資利回りの差は収益になるため、自己資本を抑えて融資を受けた他人資本で投資することが可能になります。金利が投資利回りよりも高くなると、他人資本の部分は逆ざやになってしまうため、その物件が売買される際には、投資利回りが他人資本による金利を下回らないような調整が働き、収益に変化が無い場合には、その物件の価格は以前よりも低下することになります。
一般の住宅の場合には、住宅ローン金利が低いことは、個人の住宅への購入意欲に影響を与えますので、住宅地の地価を下支えする要因の一つとなります。
また、金利が低い場合には、企業も設備投資を行いやすくなるため、収益物件の取引だけではなく、事業用に使用する不動産も取引が増加する契機になると言えます。
もともと原油輸入価格の高騰から、建築材料の値段が上がったことに加え、東日本大震災の復興事業やオリンピック関連事業などをきっかけに建築関連の作業員数が慢性的に不足し、人件費が上昇していました。しかし、木材については輸入材から国産材への切り替えが進んだことで、供給価格は安定する傾向にあります。他方で、原油価格高騰からの電気代の高騰、円安、2022年からのウクライナ情勢による対ロシアへの輸出入規制に加え、2024年からの働き方改革を反映して施行される改正労働基準法により、建設業や流通関連の人手不足が懸念されており、人件費の上昇が見込まれることから、建築代金の見積額が2年前よりも高くなってしまっていると考えられます。