「不動産価格・査定・鑑定評価等」について、不動産評価の仕組みを解説した不動産鑑定士のアドバイスです。
不動産の価格は道路に左右される~その3
土地が建築基準法上の道路に面していない場合はどうなる?
都市計画区域内の土地に建物を建築するためには、建築基準法上で定める道路に面しなければなりません。そして、土地が建築基準法上の道路に面しているかどうかを調べた結果、「建築基準法上の道路に面しない場合」、もう建物は建てることができないと諦めなければならないのでしょうか。必ずしもそうとは限りません。
建築基準法上の道路に面しないとは?
まずおさらいです。建築基準法上の道路は同法の第42条第1項に列挙されています。そして、一定の条件を満たすものは、同法第42条の第2項で厳密には同法での道路ではないけれど、道路とみなされるという道が規定されています(2020年11月のコラムと同年12月のコラム)。市区町村役場で道路の調査を行った結果、「同法第42条の規定にある道路に該当しない」と言われることもあるのです。
同法上の道路かどうかは、担当窓口にある「指定道路図」で確認します。この図面は同法上の道路かどうかを示すものですので、第42条の第1項各号別、同条第2項が色別に記載されています。道路状の土地が現実にあるのに指定道路図に線が引かれていない場合には、原則として「建築基準法上の道路に面しない」ことになります。では、その土地が指定道路図に線が引かれていない場合にはもう建物は建たないのでしょうか。
指定道路図に線が引かれていない道に面する土地
幅5mのアスファルト舗装された道路に沿って戸建住宅が実際に建ち並んでいる地域のうちの戸建でも、指定道路図を調査してみたら色がついていないということがあります。しかし、「あれ?実際に建物は建っているから、これって違法建築なの??」と決めつけるのはまだ早いです。役所の図でも記載漏れの場合もまれにあります。何も色がついてない場合には、窓口の職員に確認してみます。窓口の職員に確認してもなお、「建築基準法上の道路に面しません」と言われた場合には、次の2パターンの可能性が出てきます。
① 道路の調査をしてみたら建築基準法上の道路に該当することになるかもしれない場合。
② 道路の調査は既に終わっていて、建築基準法上の道路ではないと明確になっている場合。
①の場合は、手続きを踏んで建築基準法に該当するか否かを判定してもらうことになります。
②の場合は、またさらに2つのパターンがあります。
a.その道が建築基準法第43条第2項に規定する「道」や「空地」と認められる場合。
b.aのように「空地」とは認められず、建物の建築ができない場合。
bの場合は、今建物が建っていてもその建物が取り壊されると、再びその土地上で建物を建てることができません。不動産の広告で「再建築不可」の記載を見たことがあると思います。再建築不可の物件は、この②bに該当します。現実に建物があるわけですが、その建物が建築された時に建築確認などの手続きを踏まずに建てられている可能性が高く、構造上も不安が残る物件と言えます。
しかし②aの場合は、建築基準法第43条第2項に規定されている条件に該当することになり建物の建築が可能です。2018年の建築基準法改正前は第43条第1項に記載があり、「ただし~」で始まっていたので「43条ただし書きの適用」や、人によっては「43ただし」、「43条ただし書き道路」と言っていることもありました。現在は、ただし書きの内容は整理されて第2項に記載されています。その建物の敷地について建築確認を行う主体(特定行政庁)が、公共が所有する「道」や、私有地の「空地」が「交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないもの」と認めて許可した場合は、建物を建築することが可能であるという規定です。
その道路状の土地の所有者が私人の場合には、同法第43条第2項第2号の規定に基づいて建築審査会の同意を得て特定行政庁が建物の建築を許可するかしないかを判断します。
空地の幅や建物がいつから建ち並んでいたか、空地部分の所有者の同意の要否などの建築審査会が同意すべき基準が公表されていることが多く、あらかじめ建築可能かどうかを推測することができます。
法第43条第2項の「道」や「空地」に面する不動産の価格
建物の建築ができない土地(②b)の戸建住宅の場合には、今の建物が使える間は買い手がつくことがあるかもしれませんが、金融機関の融資がつかないことも多いですし、建物の構造にも不安が残りますので、周辺の建築基準法上の道路に面する土地の戸建住宅と比較して大きく安くなることが多いです。場合によっては価格がいくらであっても売れないということもあります。
一方、建築基準法上の道路には面しないけれども、特定行政庁が定める建築審査会が同意する基準をクリアできる場合(②a)には再建築が可能です。合法的に建てられている場合には、建築確認の履歴とその概要を確認することができます。
しかし、現在の建物が合法的に許可を経て建築されていて建築審査委員会の同意の基準も明確な場合であっても、再度建物の建築が可能なのかどうかは建築審査会を経てみないことには確定しませんので、その点でどうしても不安が残ることは否めません。したがって、この場合でも周辺の建築基準法上の道路に面する土地の戸建住宅と比較して安くなってしまうのが通常です。
今月はここまでです。
ありがとうございました。