「不動産価格・査定・鑑定評価等」について、不動産評価の仕組みを解説した不動産鑑定士のアドバイスです。
一戸建て住宅の評価、購入の際の注意点について~その2
前回は、「一般的な一戸建て住宅」の評価、購入の際の注意点をお伝えしました。
今回も一戸建て住宅に関することの第2弾として、①土地・建物の新しいスタイルである「定期借地権付住宅」、②「持ち家」と「賃貸」のメリット・デメリットについてお伝えします。
① 定期借地権付住宅とは
一戸建て住宅は欲しいけれど、高い買い物に一歩踏み出せないという方は多いでしょう。住宅を建てるには土地が必要です。しかし、土地の購入費用はかなりの負担となります。
そこで、平成4年8月に施行された「新借地借家法」における「定期借地権」という制度を利用して誕生したのが、「定期借地権付住宅」です。
この「定期借地権付住宅」とは、文字通り借地上の住宅のことで、地主から土地を借りて、その土地に自分の家を建てて住むという形態です。借地ですので、土地を購入することに比べて、安価に土地を利用できることが最大の魅力であり、その分、広い土地を借りたり、建物にお金をかけることもできます。但し、借地とは言っても永遠に土地を借りられるのではなく、あくまでも「定期」というところに特徴があります。
「定期借地権付住宅」のメリット・デメリットとしては、以下のものが考えられます。
■メリット(定期借地権付住宅)
(1)一般的な一戸建て住宅を購入する場合に比べて、かなり初期コストを抑えることができます。
(2)初期コストを抑えることができる分、購入する場合に比べて、広い土地を利用することができます。
(3)初期コストを抑えることができる分、よりグレ-ドの高い建物を建てることができます。
(4)土地の所有者は地主ですので、土地の固定資産税や都市計画税は不要です。
(5)合法的であれば、自由にリフォ-ムや増改築を行うことができます。
(6)土地購入のロ-ンがないので、金銭的・精神的にゆとりができます。
(7)契約内容にもよりますが、借地契約期間中は基本的に建物の相続は可能です。譲渡も行うことができます。
■デメリット(定期借地権付住宅)
(1)通常、借地期間は50年程度であり、契約期間満了時には更地に戻して返還しなければなりません。また、その際、建物の取り壊し費用は借地人(建物の持主)の負担です。借地契約が終了すれば、建物を相続し続けることはできません。
(2)契約の更新や延長は基本的にできません。但し、契約期間満了後に地主と合意の上で、改めて契約できる可能性はあります。
(3)契約期間中は毎月地代を支払い続けなければなりません。また、保証金や権利金などの一時金を支払わなければならない場合もあります。
(4)土地は借地であるため、ご自分の建物であっても自由に譲渡することはできず、地主の承諾を得ることが必要になります。
定期借地権付住宅には上記のような特徴があります。マイホ-ムが欲しい方はこれらメリットやデメリットをじっくり考えて、定期借地権付住宅も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
② 持ち家か賃貸か
次に一戸建て住宅やマンションなど、住まいに関し、誰もが直面する話題として、果たして「持ち家」と「賃貸」はどちらが良いのでしょうか?
それぞれのメリット・デメリットとしては、以下のものが考えられます。
■メリット(持ち家)
(1)ロ-ン完済後は持ち家が財産として残り、子孫への相続財産とすることができます。
(2)ロ-ン完済後は生活費の負担が軽くなり、金銭的に余裕ができます。
(3)所有者として住む場所が確保されているため、精神的に余裕ができます。
(4)自分の家なので、合法的であれば、自由にリフォ-ムや増改築を行うことができます。
(5)毎月の返済額が賃貸よりも安い場合があります。
(6)不動産市況によっては、資産価値が上がる場合があります。
(7)持ち家であることにより、信用度が上がる場合があります。
■デメリット(持ち家)
(1)借金を抱えることの重圧があるかもしれません。
(2)一定以上の収入がなければ、融資を受けられない場合があります。
(3)ロ-ンの返済額の他、固定資産税や都市計画税の納税が必要になります。
(4)ロ-ンの返済中に収入が減ると大きなダメ-ジを受けます。
(5)建物の老朽化にともなって、補修や修繕の費用が生じます。又、自然災害などによる損傷に対する莫大な費用がかかる場合があります。
(6)収入や家族の増減に応じて、また、転勤・転職や気分次第で気軽に引越することはできないかもしれません。
(7)不動産市況によっては、資産価値が大きく下がる場合があります。
■メリット(賃貸)
(1)高い初期費用や借金の負担がありません。また、借金を抱えない点での安心感があります。
(2)補修や修繕などが必要な場合であっても家賃以外の費用はあまりかかりません。
(3)収入や家族の増減に応じて、また、転勤・転職や気分次第で気軽に引越することができます。
■デメリット(賃貸)
(1)契約期間中、賃料を支払い続けなければなりません。
(2)いくら賃料を支払い続けても財産として残りません。
(3)自由にリフォ-ムや増改築を行うことができません。
(4)賃貸であることにより、持ち家であるよりも金融上の与信において信用度が低くなる場合があります。
以上のように持ち家、賃貸ともそれぞれメリット・デメリットがあり、どちらが損か得かという答えはありません。
持ち家の場合、ロ-ンを完済した定年後の生活は安心ですが、借入金が多額であれば、ロ-ン支払中の生活が困窮したり、返済が滞れば差し押さえられてしまう場合もあります。
一方、賃貸の場合、就労中の生活は一定の余裕があっても、生涯、賃料を支払い続ける必要があるため、精神的に不安な場合もあるかもしれません。
また、居住物件の条件が同等とした場合、「購入における金利を含めた支払総額」と、「金利負担なしで一生涯賃貸の支払総額」はさほど大きく変わらないとう場合もあります。
このように、「持ち家」と「賃貸」はどちらが良いとか悪いとかいうものではなく、各人がどのような生活をしたいかというライフプランやライフスタイルに合わせて、持ち家又は賃貸を選択すれば良いのです。
まとめ
今回は、前回に続いて、一戸建て住宅を中心に、住まい確保の選択肢としての「定期借地権付住宅」、多くの方が直面する「持ち家」と「賃貸」についてお伝えしました。
人生最大の買い物と言われる「マイホ-ム」。それだけに、購入をお考えの場合は、不動産業者や現地へこまめに足を運び、できるだけ多くの情報を収集することが重要です。
ただ、「持ち家」と「賃貸」には、それぞれ一長一短がありますので、皆さんのライフプランやライフスタイルに合わせて、じっくり考えましょう。