相続の税務や贈与について、遺産を分割する場合に注意すべきこと、法人税など他の税法との関連、税務署の調査官の考え方などにも言及した実務アドバイスです。
外貨建保険と外貨預金と円安
上記は、ここ3年の米ドルと円の為替レートの変動の状況です。
今回は、外貨資産を円に転換した方には是非ご一読いただきたいコラムになっています。
Aさん、Bさんとも同じ時期に、ご主人を亡くされてしまい、どちらも同じように外貨建ての死亡生命保険金を米ドルで100万ドルの給付を受けることになりました。
2020年12月に相続が開始、2021年1月に保険金を受け取りました。
当時の為替レートは1ドル⇒104円前後
1,000,000ドル×104円=104,000,000円…生命保険の受取額
もちろん、Aさん、Bさんとも相続税の申告には、この1億400万円を計上しました。
まったく、同じようですが、ただ一つ違ったのは、受け取り方です。
Aさんは、即時に日本円104,000,000円で受け取りました。
Bさんは、そのまま米ドル100万ドルで受け取り、自分の外貨預金にしていました。
そうこうしているうちに、2022年9月のある日、世界情勢のあおりを受けてあれよあれよの急激な円安。
なんと、104円が145円になっています。
1,000,000ドル×145円=145,000,000円
Bさんはこの時とばかり、円に転換しました。
2年もたたずに、41,000,000円の利益が舞い込んできたのです。
まさに「ブラボー!ブラボー!bravo!!」。
では、税金の問題はどうなるのでしょうか。
この例のような利益を「為替差益」といいます。
基本的に取得時のレート(外貨を保有したときのレート)と決済時のレート(外貨を日本円にしたときのレート)の差額をいいます。
(利益の場合は、「為替差益」、損失の場合は「為替差損」です。)
事業に関連したものは事業所得、この例のような場合は雑所得となります。
(事業所得の場合は取り扱いが異なる部分があります。)
Aさん、Bさんに戻りましょう。まずは相続税から
これはAさんもBさんも相続時点の円換算した金額で申告します。
ここまでは、同じです。でもここからが違います。
【Aさんの場合】
円で受け取った保険金について、保険金を支払った日の円に換算された計算書類が作成されます。相続開始時と保険金受取時の、為替相場はほぼ同じと思われますので為替差益を心配する必要はありません。相続税だけで完了となります。
【Bさんの場合】
相続税の部分までは、もちろんAさんと同様です。
米ドルで受け取り(2021年1月)その後しばらくして円に換えた(2022年9月)ことによって為替差益が発生していることになります。これが41,000,000円ですから、雑所得として、所得税の確定申告が必要です。
生命保険など関係ないと思わないでください。外貨を円に転換したすべての方が当てはまるのです。
外貨の資産運用については、運用中も為替レートが日々変動するため計算上は為替差益(損)が発生していることになりますが、未実現の評価益になりますので確定申告の対象ではありません。
外貨での運用を終了して、日本円に換算した場合に、契約時(取得時)と終了時(円決済時)の差額が為替差益となります。
この為替差益は、日本円として確定しているので所得として確定申告の対象となるのです。
なお、為替差益が20万円以下の場合は確定申告が不要なケースもありますが、医療費控除のために申告する場合などは20万円以下であっても所得として計上する必要があるなど、様々なパターンがありますので、税理士にご相談ください。