相続の税務や贈与について、遺産を分割する場合に注意すべきこと、法人税など他の税法との関連、税務署の調査官の考え方などにも言及した実務アドバイスです。
相続と確定申告 part1
10月とはいえ、今年は気温が高めとの長期予報です。
まだまだ、年末のことなんて、ましてや来年のことなんてとおっしゃる方がおられるかもしれません。
あっという間に月日は、過ぎてしまいます。こんな方は、準備を念入りに。
ケース1
『父の財産は株式が多かったんです。遺言で兄と私に半分ずつと書いてくれていました。兄は自分でも株式投資をしているので、ほとんど株式の名義書き換えをしたようです。私は、株取引をやったこともないし、もちろん興味もない。続けていく自信なんてもっとないし、お金に変えてもらって相続することにしたんです。おまけに、相続税を支払うにも納税資金が必要ですから。』
よくありそうなお話ですよね。
遺産整理の場合、遺言執行の段階で執行者が株式を売却して、現金化した後、相続人の皆様に分配されることがあります。
上場株式で特定口座(源泉あり)の取引の場合、売却時には源泉徴収されていることが多いので、申告不要と安心している方がおられるかもしれません。
!!ここ注意ですよ!!
実は、遺言執行者が売却する場合は、特定口座(源泉あり)はつくれません。普通口座での売却となってしまうので、株式の譲渡損益の計算はしてくれないのです。(たとえ、生前、お父様が特定口座で運用していたとしてもです!)
相続したあなたが、換価された株式について1銘柄ずつ譲渡損益の計算をして、利益があれば確定申告しないといけないということなのです。
もちろん、取得価額は相続時ではなく、被相続人(このケースではお父様)の取得価額となります。
更に、今年は急激な円安のため、外貨建ての金銭信託や債券などの金融商品を換価すると為替差益も加わって思わぬ高額な利益が出る場合も。
そのうえ、相続税がかかった場合は一部取得費として加算することができるという特例(措置法39条)もからんできますから、計算は煩雑です。
明らかに赤字の場合はさておき、手に負えない場合は税理士にご相談されてはいかがでしょうか。
なお、お兄様は、株式売却をしていないので、今回の譲渡所得の発生はありません。後にお兄様ご自身で売却するときが譲渡となるからです。
(その場合も、取得価額は、お父様のものを引き継ぎますので、相続時にしっかりと確認しておくことはもちろんのことです。ただし、被相続人(お父様)の特定口座から、相続人(お兄様)の特定口座へ移管したときは、取得価額も引き継がれるのでその場合は心配しなくてもよさそうですよ。)
今月はここまで。次回part2で、お会いしましょう。