

相続の税務や贈与について、遺産を分割する場合に注意すべきこと、法人税など他の税法との関連、税務署の調査官の考え方などにも言及した実務アドバイスです。
AIの波 ついに「相続税」税務調査に
―ねえ、今年から税務署で受付の日付印を押してもらえなくなったわけだけど、ほかに何か変わるところあるのかしら?
―そう、あれは、私たちにe-Taxで申告させようっていうためだったでしょ。
それだけじゃなくて、税務署自体の仕事の仕方も変わるらしいのよ。
7月からは、相続税調査もAIを使ってすることになるらしいわ。
―えぇっ、チャット調査とか?それともロボットが来ちゃうの?
―まさか、そんなことはないでしょうけど。
まだ、ロボットが訪ねてきたりはしませんが、AI(人工知能)が本格導入されるのは本当です。
令和7事務年度(令和7年7月~令和8年6月)の相続税調査対象となる令和5年以降の相続開始の案件からになります。
AIがどのように使われるかというと、
①相続税の申告書データを国税庁に集める。
②ここでAI登場!!
各種資料等の内容や過去の調査事績等を学習したAIが、①の各々の相続税申告書データに、想定される税務リスク(申告漏れ等の可能性)について、0から1までの(0.01刻みで)点数(スコア)をつける。
③各国税局・税務署においてフィードバックされた②の優先度に基づいて、税務調査等の処理の要否を判定する。
というイメージです。
以前から、大量かつ継続的に提出される所得税や法人税の申告では既にコンピューターによる資料分析を利用していた部分も多かったのですが、相続税は特殊性・個別性から、ほとんどの部分を職員の手作業によって調査事案の選定をおこなっていた状態でした。
そうか、遂に相続税まで来たのか…という感じがしています。
実際のAIのスコアの精度がどの程度なのかは、現時点では不明であるものの、AIは無尽蔵に資料を学習することが可能ですので、今後はどんどん進化していくと思われます。
今年で団塊の世代全員が後期高齢者となり、相続税の申告数も増加傾向になっているようです。また、令和5年分の死亡者数に対する相続税の申告のあった被相続人は、9.9%と10人に一人の割合となっています。
これまで少額案件で、気が付かなかったような誤りも、AIは見逃さないかもしれません。調査件数や接触が増加して、今まで以上に調査を受ける可能性が高くなることも念頭においておくことが必要でしょう。従来からも選定項目ではありましたが、現金出金が多い場合などは、より調査される可能性が上がるのではないかとも言われています。
そうはいっても、相続税の場合は個別性が高く、すべてがAIの予想通りというわけではないはずですから、相続人ができることとして、調査に備えて、例えば、多額の資金が必要だった事情を説明するためのエビデンスやメモなどを準備しておく必要もあるでしょう。
人間は一足飛びに進化などできないのに、そう遠くない未来には、本当にロボットが担当調査官になる日が来るのかもしれません。
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