相続の税務や贈与について、遺産を分割する場合に注意すべきこと、法人税など他の税法との関連、税務署の調査官の考え方などにも言及した実務アドバイスです。
『収受日付印』(受付印)がもらえなくなる日は近い?!
年も押し迫ってまいりました。皆様お変わりございませんか。
ついこの間までは、日本は「夏の国」になってしまったのかと思うほどでしたが、一足飛びに冬がきたようです。
- 一年が経つのは、早いものね。
今年こそ、確定申告で、バタバタしないでいいように、少しずつ整理しておこうかしら。
早めに申告すると、還付税額も早く振り込まれるみたいだし。
- e-Taxで申告してらっしゃるの?
- そうよ。私は、スマホで申告しているわ。
でも、父は、昔から申告書を手書き作成しているの。
最近は、「年取ってつらいから、税務署の受付に提出にいってきてくれ」
「これが終わらないと、安心できないからね」ですって。
収受日付印が絶対に必要らしいわ。
なんでも、昔、書類の提出のことで税務署とトラブルになったことがあったらしいの。
税務署まで行くのは、結局は、私の役目になってしまうわけ。これもギリギリになったら、提出だけでも結構並んで待つのよ。
- だったら、ご存じかしら?
来年の令和7年1月から申告書には「収受日付印」を押してもらえないんですって。
- えぇっ! 大変!! じゃあ、郵送でなきゃダメってこと?
- 違うのよ。控えには収受日付印を押してもらえないらしいの。
だから、郵送でもだめだってこと。
- えぇっ! どうして?
国税庁は、令和6年1月4日付けで、はやばやと発表しています。
『令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて』によると
令和7年1月から、申告書等の控えに収受日付印の押なつを行いません。
書面等における申告書等の提出(送付)の際は、申告書等の正本(提出用)のみを提出(送付)していただきますようお願いいたします。
必要に応じて、ご自身で控えの作成及び保有、提出年月日の記録・管理をお願いいたします。
と、バッサリ切り捨てられています。
また、理由としては、
税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を進めているところです。
とされています。
- じゃあ、父の安心はどうなっちゃうの…。
私と一緒に並んでいた皆さんはどうなるの?
- e-Tax利用率は利用拡大しているとはいえ、令和4年度所得税申告では65.7%の利用率らしいの。言い換えれば、34.3%、いまだ3人に1人はあなたのお父様のように紙媒体で提出しているということなのよ。
- そんなにたくさんのかたが書面の申告なのね。受付に提出する時ももちろんだけど。郵送だとちゃんと届いているかどうか、もっと不安だわ。どうやって、確かめればいいっていうの。
- 書面提出している場合は、「申告書等情報取得サービス」という無料サービスがあるらしいけれど。その請求は、オンラインでの電子申請しかできないそうなの。
- それができるのなら、最初から電子申告してるわ、わかってもらえないのかしら。
パソコンやスマホが、できない人はどうすればいいの。
税務署まで行けないお年寄りの方々も、まるで切り捨てているとしか思えない!!
ひどいわ!!
確かに、これをきっかけに、電子申告を始める納税者は出てくると思います。私たち税理士の立場としても、今後の方向性という点では、電子申告に反対するわけでもありません。
利便性を感じる方もおられるでしょうし、時代の流れでもあります。
けれども、「電子申告が不得手」というより「不可能」な「IT弱者」への対応が十分になされているようには思えないのが実情です。
また、国税庁は「申告書等の控えへの収受日付印の押なつの見直しに関するQ&A」を発表しているのですが、その中にこっそりと以下のように記載されています。
令和7年1月以降、当分の間の対応として、窓口で交付する「リーフレット」(今般の見直しの内容と申告書等の提出事実等の確認方法をご案内するもの)に申告書等を収受した「日付」や「税務署名」を記載したものを希望者にお渡しいたします。
郵送の場合も、「返信用封筒」と「申告書等の控え」を同封して送付した場合は、窓口収受と同様に「当分の間」は、日付・税務署名入りのリーフレットが返送されるようです。
当分の間がいつまでなのかは、全く示されていないところが曲者ですが、希望して受け取っておいたほうが良いと思います。
(そもそも、受付印の類は、提出していないと税務当局側から指摘された時の「万が一」に備えているわけですから)
何より、「収受日付印の代わりになるものはe-Taxの送信記録だけ」という人質にするようなやり方は、あまりにもフェアではないと思うのです。
確かなことは、税務署の仕事が楽になることだけです。
そのうえ、どうしても電子申告になじまない書類や、書面でしか提出できない申告もあります。
うがった見方かもしれませんが、納税者(代理をする私たち税理士も含め)の選択肢を奪い、リスクを押し付けられているのではないかと。
今後、国税庁には、丁寧な広報や十分な対策をもって、ソフトランディングの手立てを是非講じていただきたいものです。