相続の税務や贈与について、遺産を分割する場合に注意すべきこと、法人税など他の税法との関連、税務署の調査官の考え方などにも言及した実務アドバイスです。
令和3年12月24日に政府税制改正大綱が閣議決定されました。
あれだけ騒がれた「贈与税と相続税の一体化」に向けた改正は、ありませんでした。令和2年11月の税制改正調査会の審議で、あれだけ一体化を目指すという議論がもりあがっていたのに、主導された中里会長も梯子を外されてかわいそうでした。
この「贈与税と相続税の一体化」という理解しにくい日本語の意味するところは、実は多義に渡ります。
1. 課税体系の見直し
現行の相続税の計算方法では、相続人の数が多ければ多いほど、相続人の負担は軽くなります。
顕著なのは、兄弟姉妹相続です。5人兄弟の末っ子が亡くなりました。年長の兄姉は既に亡く、その子どもたち(甥姪)が10人いました。亡くなった方が遺言を書いていて、唯一交流のあった姪っ子一人に1億円の遺産を残しました。さて、相続税はいくらでしょうか。
税理士法人日本税務総研が提供する「相続支援ナビOui」を使って計算しましょう。
法定相続人が10人もいるので(おまけに遺留分のない相続人です。)、基礎控除は9,000万円もあります。相続税は120万円です(相続支援ナビOuiは、配偶者以外の相続人一人当たりの税額12万円が表示されます。相続人は10人いるので相続税は120万円)。
どうも政府税制調査会は、一部の相続人が有利になりすぎると考えているようなのです。そこで課税体系を変更して、財産を取得した人、ひとりづつ所得税の累進課税のように計算する方法に変更しようとしているのです。ただ、この試みはなかなか実を結びません。地主が大反対するからです。
2.相続開始前3年以内の贈与加算期間拡張
もうひとつは、相続開始前3年以内の贈与加算の期間を5年とか7年、はたまた10年に延長する案です。今回、この改正がひょっとしたらあるかなと(それにしては令和3年中に開催された税制調査会で議論が継続された形跡がないのです。)言われていました。
これも見送られたのです。
3.教育資金贈与特例の期間延長の見送り
要は、あと2年で教育資金贈与特例を廃止しようという案です。令和4年税制改正大綱では、時限立法なので2年延長という改正ですが、実質的にあと2年で廃止するというようには見られません。これも、見送られた感じです。
4.超富裕層には財産債務調書の提出義務が拡大
ではなにも手を打たなかったというわけではありません。
財産債務調書の提出義務を資産10億円以上の財産を有する日本に住んでいる資産家に課することとしたのです。
え!どうやって10億円以上か未満か評価したり計算するの?
ですよね。微妙だとお考えの方は、ぜひ相続税の実務に精通した税理士事務所までご相談ください。
相続対策や相続税対策、会社の承継対策を始めるのに早すぎることはありません。