マンション供給・価格動向と2023年の市場の見通し
首都圏では東京都と神奈川県で新築供給が減少
まず2022年のマンション市場について、東京カンテイのデータに基づいてエリア別に振り返ってみましょう。首都圏では新築マンション供給戸数が年間4万1732戸と、2年連続で4万戸を上回りましたが、前年比では7.7%の減少となりました。都県別では埼玉県が前年比33.9%の大幅増となり、千葉県もわずかに増加しましたが、東京都と神奈川県では1割以上減少しています。平均坪単価はいずれも上昇しましたが、上昇幅は埼玉県が同7.3%と最も高く、他の都県は1%前後と小幅でした。
一方、中古マンションの流通事例数は軒並み前年比で増加しており、特に東京都は前年比22.8%の大幅増となっています。平均坪単価も上昇基調となっており、東京都を除く3県は10%台の上昇でした。
首都圏マンション市場の動向について、東京カンテイ市場調査部主任研究員の髙橋雅之さんは次のように分析してくれました。
「新築マンションは都心部を中心に価格高騰に伴う供給調整が続いていますが、埼玉県や千葉県は価格にまだ割安感があるため、供給が増えている状況です。コロナ禍が拡大した当初は感染を避ける意味から住宅需要が郊外へシフトする動きが見られましたが、昨今は都心の価格高騰を敬遠して、郊外で予算に合う物件を求める動きが強まっているようです。また、中古市場でも価格が上昇しており、割安感のある3県での上昇が顕著になっています。東京都では価格高騰から在庫物件の増加傾向が強まっている状況です」
近畿圏は2府1県とも新築供給が減少。価格は上昇基調
近畿圏2府1県の新築マンション年間供給戸数はいずれも減少しており、合計では前年比マイナス20.1%の減少でした。特に兵庫県は同マイナス30.1%、京都府は同マイナス24.4%の大幅な減少となっています。平均坪単価は大阪府と京都府で上昇しており、京都府では同12.4%の上昇となりました。
また、中古マンションの流通事例数は2府1県とも増加し、合計では前年比12.6%増加し19万8207件でした。平均坪単価はいずれも5%前後の上昇と、引き続き上昇傾向となっています。
「2021年は各エリアで新築マンションの供給が増加しましたが、2022年は減少に転じ、復調に翳りが見えています。坪単価は兵庫県で前年比下落となりましたが、これは割安な物件が供給されたことによるもので、各地とも基本的には上昇基調です。特に大阪市中心部ではタワー物件、京都市中心部では高額物件の供給に特化する動きが見られ、価格が高騰しています。中古マンションも相場上昇が続いていますが、在庫が積み上がっていることから流通件数は増加に転じています」(髙橋さん)
愛知県・福岡県とも新築供給が減少。中古流通は増加し、価格は上昇
愛知県の新築マンション供給戸数は前年比マイナス2.3%の微減となりましたが、3年連続で6000戸台を維持しています。平均坪単価は同マイナス3.9%と下落しており、2017年以来の上昇傾向に歯止めがかかっています。中古マンション流通事例数は同12.9%増加し、平均坪単価は同6.8%上昇しました。
「新築マンションの供給は微減でしたが、名古屋市内を中心にタワー物件やコンパクトタイプのコンスタントな供給が続いています。中古マンションは東京や大阪と比べて割安なので投資ニーズが好調です。自動車産業など地域経済の底堅さを背景に住宅需要は堅調ですが、価格が上昇すると実需ニーズが戸建てにシフトするため、急激な上昇にはならないでしょう」(髙橋さん)
福岡県では新築マンションの供給が前年比マイナス4.4%に減少しましたが、5000戸台をキープしています。平均坪単価は同19.3%の大幅アップとなり、200万円台に達しました。中古マンションの流通事例数は同11.1%増加し、6万戸目前に。平均坪単価は同2.6%上昇して2年連続で100万円台となっています。
「新築マンションの供給がコロナ禍前を下回り、タワー物件や高額物件へのシフトが進んでいるため、坪単価が高騰している状況です。若いファミリー層は割安な物件を求めて中古マンションを選ぶケースが増えているようですが、中古も坪単価が上昇し、在庫物件が増加傾向となっています」(髙橋さん)
中古物件の在庫が積み上がり、価格調整が拡大する可能性も!?
2022年はコロナ禍が引き続き猛威を振るうなか、2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、インフレ抑制のため3月に米国が利上げに踏み切るなど、世界情勢に大きな変化が起こりました。一方で日本では日銀による金融緩和策が維持され、超低金利に支えられたマンション需要は引き続き堅調に推移しています。ただ、2023年はマーケットが転機を迎える可能性もあると、髙橋さんは指摘します。
「コロナ禍の影響が薄れて人の流れが戻ってきていることはプラス要因ですが、エネルギー価格をはじめとした物価上昇は今後も数年にわたり常態化する可能性があり、人々の住宅購入マインドに影響しそうです。日銀による金融緩和の修正で金利が上昇すれば駆け込み需要が発生することが考えられますが、すでに物件価格が高騰している状況ではそれも限定的でしょう。東京や大阪など中古マンションの在庫が増加しているエリアでは、2023年に入って売り出し価格を引き下げる動きが拡大しつつあります。好立地・高グレードで築年数の浅い物件は高値で安定すると思われますが、条件面で見劣りする中古物件は価格調整の局面に入る可能性がありそうです」
中古マンション市場の動きは新築物件への影響も考えられるため、今後の動向には注意が必要となりそうです。
※データ提供/東京カンテイ(2022年は速報値)