供給と価格の動きから読み取る2016年マンション市場の見通し
首都圏では新築の平均価格がミニバブル超え 供給は都心部などに集中して戸数が減少
原油安や株安など、2016年の日本経済は年明けから荒れ模様ですが、マンション市場はどうなるでしょうか。東京カンテイのデータから、まずは2015年を振り返ってみましょう。
2015年の首都圏での新築マンション供給戸数は4万8610戸と、前年比マイナス7.3%に減少しました。マンション供給はリーマンショックによる落ち込みを経て、2013年にかけて順調に戸数が伸びていましたが、2014年に再び大きく減少し、2015年はさらに減ってリーマンショック後の2009年とほぼ同水準に落ち込んだ形です。
供給が減ったのは価格の高騰が大きな要因といわれています。2015年の首都圏の新築マンション平均価格は5183万円と、いわゆるミニバブル期のピークだった2007年(4691万円)の水準を大幅に超えて5000万円台に達しました。坪単価は前年比で13.7%上昇して276.8万円です。都市部での地価の上昇に加え、資材や人件費の高騰で建築コストが高まっていることが、マンション価格に影響しているようです。
「首都圏の中でも特に供給が減っているのは東京都を除く3県です。東京都は2014年に坪単価が300万円を超え、2015年はさらに上昇して315.0万円になりましたが、供給は2014年からほぼ横ばいです。東京都の中でも都心部や湾岸部では活発な供給が続いているため、それらのエリアの物件のシェアが高まり、平均価格を押し上げています。また、神奈川県でも横浜市や川崎市など比較的単価の高いエリアに供給が集中しており、坪単価がアップしました。それらのエリア以外では価格の高い物件が売りにくいため、デベロッパーが供給を抑えている状況です」(東京カンテイ市場調査部主任研究員・高橋雅之さん)
新築マンションの価格上昇は、中古マンション価格にも影響しています。といっても価格が大きく上昇しているのは東京都だけで、2015年の坪単価は214.0万円と200万円台を突破しました。流通事例数は2012年をピークに減少していましたが、東京都では2015年に前年比増加に転じています。
「新築物件の価格が上昇したことから、割安な中古マンションのニーズが増え、特に都心部や湾岸部で価格が上昇しています。相場上昇にともなって築年数の浅い物件が売りに出るケースが増えてきました。ただ、相場を大きく上回る価格で売り出す物件も目立ち、2015年の下半期以降は値引きする物件も増えています」(高橋さん)
大阪市中心部でタワー物件の供給が活発 新築・中古とも局地的に坪単価が上昇
近畿圏の新築マンション供給戸数は直近では2012年をピークに減少していましたが、2015年は3年ぶりに増加に転じました。とはいえ2府1県の合計で1万8932戸と、過去10年では3番目に少ない戸数です。新築マンションの坪単価は近畿圏全体ではほぼ横ばいですが、府県別では大阪府が上昇し、京都府が下がっています。
「建築コストの上昇などから、全体的に高価格帯の物件を売りやすい中心部での供給が増えています。特に大阪市の中心部ではタワーマンションの供給が活発なため、坪単価が押し上げられました。神戸市も同様の動きです。京都市でも中心部などで新築物件がコンスタントに供給されています」(高橋さん)
新築物件の価格上昇に連動する形で、中古マンションの坪単価も上昇気味です。特に大阪府や京都府では流通する物件数が不足気味となっており、相場上昇につながっています。
名古屋市中心部に新築の供給が集中 福岡市ではインバウンド需要も活発に
愛知県では新築マンションの供給が減少傾向となっており、2015年は4000戸を割り込み直近10年間で最も少なくなりました。坪単価は逆に上昇を続けており、2015年は直近10年間で最も高い180万円台にアップしています。
「このところ名古屋市に供給が集中しており、豊田市や安城市など周辺エリアの供給が減っています。名古屋市のなかでも人気の高い地下鉄名城線の沿線や内側のエリアで供給が活発なため、平均の坪単価が上昇しています。名古屋市の郊外や周辺エリアではマンション価格が上昇すると一戸建てと競合するため、供給されにくくなるようです」(高橋さん)
中古物件もこのところ流通物件数が減ってきており、坪単価は上昇気味になっています。
一方、福岡県では新築マンションの供給が前年比でほぼ横ばいでした。坪単価は愛知県と同様に上昇しており、2015年は直近10年間で最高の154.3万円となっています。中古マンションも同様で、坪単価は70万円台にアップしました。
「福岡県のなかでも福岡市は九州エリアの中心として若年層が流入しており、新築マンションの供給が比較的活発です。また中国本土や台湾などからの距離が近く、観光客が多く訪れており、それらの国の富裕層によるインバウンド需要で物件が売れている面もあるようです」(高橋さん)
2016年も価格上昇の動きが続く見通し 金利低下で資金面では買いやすい状況に
2016年は地価が引き続き上昇傾向が続いており、建築コストも高止まり状態となっているため、マンション価格も上昇が続くとの見方が多くなっています。価格上昇にともない、専有面積を縮小して価格を抑える物件が目立っており、今後も面積縮小の動きが続きそうです。
「供給エリアは中心部に集中する傾向が見られますが、首都圏などではターミナル駅から1~2駅離れた場所で分譲される物件も増えてきています。そうした購入しやすい物件が増えれば、全体として平均価格が下がるケースも考えられますが、定点的には価格は横ばい~強含みで推移していくでしょう。また、2017年4月に予定されている消費税率の引き上げにともなって駆け込み需要が発生した場合には、価格水準が一段と押し上がることも予測されます」(高橋さん)
2016年は年明けから株価の下落が続いており、富裕層による高額物件へのニーズが鈍化するとの予測もあります。ただ、日銀によるマイナス金利政策の影響もあって住宅ローン金利は引き続き低下傾向となっており、資金面ではマンションが買いやすい状況が続きそうです。
<グラフ注意点>
新築マンション供給戸数に関して、2013年までは主にファミリータイプの住戸を対象にすべく専有面積30平米未満の住戸を除いて集計してきましたが、2014年からはより実態に即した集計を行うために、分譲した事実を確認した物件の分譲戸数を合計する方法に改めた「マンションデータ白書」の値を適用しました。
(データ提供:東京カンテイ)